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VS藻木優



■VS藻木優



「危ないニロ!」

 藻木が拳銃をニロに向けた。

 この世界に銃は基本的に出回っていない。だからニロは藻木の手に握られた拳銃がいったい何かを知る由もなかったはずだ。それなのに見た目から拳銃が刃物でもなく、鈍器でもなく、魔法の杖でもないと判断した。となれば遠距離武器だろうという2度目の直感。

 ニロは体を反らして拳銃から放たれた弾丸をかわすと、すぐさま藻木の手をフォークで突き刺す。藻木が怯んだ隙にスプーンで横っ面を殴打。

「ぐおっ!」

 転がった藻木は太った体に似合わず受け身をとった。クラフト御用達のポーチに手を入れている。

「蜂の巣にしてやろう!」

「させない! たちこめろ、【ホワイトダークネス】!」

 サティが魔法を使った。

 あたりに濃い霧が充満する。飛び道具への対策だ。

 私たち3人は濃霧に紛れてそれぞれ姿を隠した。

「ロロル君、非常事態です。すいませんがしばらく通信を切ります」

 もしもし貝殻に言った。

 この霧の中では音で相手を探り合うことになる。藻木が拳銃以外の武器を持ってる可能性も捨てきれない。地雷や手榴弾がクラフトたちに出回っている危険がある話はみんなに共有してあった。どういう兵器かも説明した。あの2人が焦って突撃しないことを祈る。

 銃で撃たれたら、普通は死ぬだろうから。

「ハンデとして言わせてもらおうか!」藻木の声だった。「こんな霧で隠れたって無駄なあがきであーる! ボクチンには貴様らの居場所が手に取るように分かるのだ。この千里眼で見えているのだからな! そう、こんなふうに!」

 近くの茂みに何かが投げ入れられた。咄嗟に反対方向に動く。背後で爆発が起こった。

「うぬ? 外したか。素晴らしい能力があっても、ボクチンの肉体が対応できないということか……。認めざるを得ないな! 運動不足を!」

 体は痛んだがどうやら五体満足に動くことができた。安心も束の間、銃声がけたたましく鳴り響く。私を狙っていたようだけど当たりはしなかった。

「むぅ……固定カメラ視点のプレイは苦手でござる。時代はFPSだというのに。嗚呼、ゲームがしたい。アニメが観たい!」

 また発砲。

「リローーーード!」

 やかましい人だ。

 スキルの千里眼とやらで私たちの大方の位置を掴んでいるのか……。

 強力な武器を持っているからとかなり油断はしているようではある。

「彼はスキルでこの辺一帯を監視しているようです! でもたまたま見えてない部分があります! その死角にサティたちはいます!」

 見えているなら黙っている必要もない。

「そのようね! あいつのスキルは不完全よ!」

「あれ当たったら痛そぉ〜!」

「痛いじゃ済みませんよ!」

 銃撃に加え、手榴弾を惜しげもなく投げてくる。これでは攻撃ができない。

「諸君らには残念だが、ここはボクチンの檜舞台である! 隠密行動は失敗したが、生憎全ての準備は整っているのだよ! 諸君らは観賞魚、その命運は我に有り!」

 準備…………前々から私たちを狙っていた?

「ニロォ君! ボクチンはキミを見たその時に恋に落ちた! 雷にうたれた! まさに晴天の霹靂! しかしキミが拒絶するなら致し方ナシ! さぁニロォ君、命がけのかくれんぼだ!」

 藻木の声が霧の中から聞こえる。少しずつ動いている。

「思い出したぁ!」ニロの声だ。「こいつぅ〜、ギルドカードを作るときにわたしをバストアップさせた人だぁ!」

「そこかァ!」藻木が発砲する。「むぅ、手応えナシか。この霧ではいくら千里眼の力があっても狙いが定まらん」

 ギルドカードを撮影した?

 ニロは1人だけ後に撮影した。その時に一度ニロは彼に会ったんだ。

 エリュアールさんが、カメラはクラフトが作ったと言っていた。

 彼はカメラを作り出せるクラフトなんだ。

「2人とも! あたりの木々や草むらを見てください。あの機械、カメラがあるはずです!」

「どういうことフェニ!?」

 千里眼なんて嘘だ。

 饒舌な彼のセリフから推測されるスキルの詳細は————。

「彼はあの機械を通して周囲の状況を探っているんです! カメラは彼の目、あらかじめ設置したカメラを通して私たちを見ているんです!」

 カメラを壊せば彼の視線は減っていく。

 こちらがどこにいるのか見当もつけられなくなる。

「もしかしてそれって、アタシたちはずっと見られてたってこと?」

「そうだ!」潔い藻木の声。「見守ること、それ即ち愛! わぁ! カメラを壊すな! よせ! 目が! 目がぁ!」

 サティたちが隠しカメラを壊しているらしい。私も茂みの中にあった一台を破壊した。

「うぬぅ! 千里眼は潰されたが、相手の位置が分からないのは貴様らも同じこと! 平等というやつだ!」

 藻木が悔しそうに吠えた。

 彼の言う通り、やっと状況がイーブンになっただけだ。

 銃弾や爆弾を受けて結果的に平気でいられるのは私だけ。他の2人を傷つけたくない。決死の心得で私が行くしかないだろうか。

「平等? ホントにそうかしら?」サティが涼しげに言った。「お待たせ。ようやくアンタの場所が特定できたわ」

「強がりはよしたまえ! むっ?! なんだこの光る糸は?!」

「喋り過ぎ。それから不用意に動き回り過ぎたわね」

「ちょ、待っ————」

 稲妻を思わせる鋭い炸裂音が、藻木のセリフをかき消した。

 霧が晴れる。青空が見えた。

「晴天の霹靂、まさにね」

「さっすがサティ〜!」

「素晴らしい一撃でした」

 私は隠れた場所から広場へ出た。

 ニロが立ち尽くした藻木に、猛烈な打撃をお見舞いしていた。妙蓮寺に操られた時にしていた何かしらの拳法の動きだ。あくまで模倣だから多少の荒っぽさは否めないが、見とれるような流麗な連打。猛攻の末に藻木は地面にのびた。

「よく彼の場所が分かりましたね」

「逃げながら糸を張っといたのよ。アイツが動き回って知らぬ間に絡まってくれたから、正確な居場所がわかったの。あとは魔法をドカン」

「そしてわたしがフルコンボぉ〜!」

 やっぱりサティはすごい。それにニロもちゃんと訓練の甲斐があったんだ。魔法は、使ってなかったようだけど。

「でもねニロ、クラフトだからってなんでいきなり攻撃すんのよ?! さすがにそれは酷いんじゃない?」

 サティがたしなめる。

「いやぁ〜やっぱりそうかなぁ……。あれぇ? これなにぃ? これもカメラぁ?」

 ニロは落ちていた黒い物を指さした。

「ポラロイドカメラですね」

 一眼レフとはだいぶ形の異なる、クラシックなフォルムをしていた。

「ぽらら……亀ぇ?」

「私の前の世界にあるアイテムです。ギルドカードを発行に使った機械の仲間です。これがあれば風景の一瞬を切り取って、すぐ紙に転写できるんです。…………こんなふうに」

 私は実演した。クラフトのカメラだからどんな仕掛けがあるか分からない。念のため倒れている藻木を写した。

 駆動音がして、カメラから写真が出てくる。

「わっ、なにこれすごいじゃないの! 中でどうマナが流れてるのかしら」

「この人の絵なんていらな〜い」

「アタシもよ。ってかフェニ! アンタ自分が傷ついても良いような動き方しないでよね?!

「しましたか?」

「そこはかとなくそういう雰囲気を感じるの。一流のアタシにもっと頼りなさい! アっ、アンタがケガしたら、良い気持ちしないし……。監督の責任問題ってか? どうせアタシが回復魔法やるんだし? 疲れるし————」

 ニロがサティに抱きついた。

「えっとねぇ、大好きなフェニが傷ついたら悲しいんだってぇ」

「ニロ! 離れなさい!」

「みんなでサティに抱きついちゃお〜う! あ〜〜あとねぇ、わたしのことも大好きだってぇ! それにロ————」

「離れてーーーー!」

 傷つかないで、か。

「……ごめんなさい」

 私は謝った。

 でも、悪いけどそれはきけない頼みだ————。

 みんなが苦しむなら私が苦しむ。

「ロロル君、お待たせしました。こっちの邪魔者は排除しました」

 私はもしもし貝殻に話した。返事はすぐ来た。

『気をつけて! 赤原がそっちに行くよ!』

「ううッ!!」

 ニロがむせた。そしてすぐにお腹が大きく裂けて、先程の女のクラフトが出てきた。

「出られたァァアアアアアア!」

 赤原クレア!

 こっちは一体どんなスキルを持って————、

「仕留めたにゃーーーーーー!!」

 続け様にアニスが飛び出してきた。その勢いのまま鍛治の時につけていたグローブで赤原の後頭部を殴打。鉄を鍛えるほど硬く重い代物だ。頭なんて殴られたらひとたまりもないだろう。

「で、ででっ、出られたのに……」

 藻木と重なるように倒れる赤原。

「K.O.だにゃ。……あれ? この殿方は誰にゃ?」

 キョトン顔のアニス。可愛いから癒される。

 かっこよくて優しくて大大大好きなロロル君は、中でどうなっているんだろうか。

 私はアニスが困らない程度に質問攻めした。



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