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復讐! 宝探し



◆復讐! 宝探し



 丸山にもうカードはないようだ。


「気を取り直して、丸山、復讐を始めるよ」


 ニロが魔物を食べている咀嚼音を聞きながら、僕は剣を丸山の首元に。


「やめて…………殺さないで……!」


 丸山はドラゴンに蹴られたあたりを押さえながら懇願する。


「さっきの魔物はどうして君の言うことを聞いてたの?」


「アレは、妙蓮寺新之助のスキル【隷属】のおかげです! アイツが従順にしたのを買い取ったんです」


 スキル【隷属】か。厄介そうだな。


「あの……本当にすいませんでした。こここっ、これで許してください」


 丸山はアイテムポーチからガラスでできた箱を取り出した。中には、大きさも色もさまざまな卵が入っていた。マナ詰まりを起こして、中に魔物のミニチュアが閉じ込められたマナ玉だ。


「へぇ。これはいくらぐらいの価値?」


「200万ジェニーは下らないと思います……」


「つまり君の価値は200万以下ってことか」


「いえ……価値なんてありません……ゴミですアタシは」


「ゴミ人間が宝探しをしてたわけか。もう一度きくけど、僕のことは覚えてないんだよね?」


「はい……すいません、許してください……!」


「人の命はプライスレス」僕は刀を丸山の首から離した。「ゲームしよう。丸山」


「ゲームですか……?」


「そう! 宝探しゲーム。あ、一つ忠告するね? 君のその「許してください」って台詞やめてくれるかな? 1ミリも許す気はないんだから。じゃあルール説明をするね」


 僕は当たりを見回した。ちょうど良さげなぬかるみを見つける。確かめると深さもいい具合だった。


「ニロ、ちょっとこれ持ってて」僕はガラス箱からマナ玉を出してニロに渡した。そして箱は棒で砕いて、破片をぬかるみに。


「今から君には僕と一緒にここで宝探しをしてもらう。宝はね、君の手の指だ」


 丸山の顔から一気に血の気が引いた。真っ青になり、跪く。


「やめてください! おねがいします! なんでもしますからァ! 許してください————」


 丸山の左手の指が5本全て落ちた。


「は、あ……は」

 丸山は驚愕の顔。悲鳴すら出せないようだった。


「だから言うなって言っただろ?」


 僕は丸山に『許してくださいと言ったら左手の指が切れ落ちる呪い』をかけていた。


「フェニ、かき混ぜてくれるかな」僕はフェニに棒を渡した。丸山の指が、ガラス片と一緒にかき混ぜられてぬかるみに沈んでいく。


 僕は装備を外してぬかるみに踏み入り、丸山にもそうするように促した。彼女は素直に入った。深さは膝ほどだった。


「はわわッ、アァァ、痛いィィイ! 指、ユビぃ……」


「フェニ。君のカウントで30秒数えてくれるかな。丸山は僕が指を拾った本数だけ僕に斬られる。僕がもし1本も指を拾えなかったら、君のことは責任をもって王都まで護衛して帰すよ。分かった?」


 丸山は何も言わなかった。また発言して何かを失うのが怖いんだろう。


「ニロ、こんなとこ見せてごめんね」


「ロロルに悪いことした人にバチを与えてるんでしょお? 見るよぉ」


「そうか。さぁ丸山純子、そろそろ僕のこと思い出した? 今和野一。砂場でウサギの糞を泣きながら探してたやつさ」


「あ…………今和野、思い出したッ!」


「やっとか。これはあの日の復讐だから。フェニ、合図をお願い」


「いきます。用意…………始め!」


 2人で競うように泥をさらった。

 呻き声を漏らし、顔に泥が付くのも厭わずに丸山は右手を動かした。左手は泥に浸からぬよう胸元に押しつけている。


「残り20秒」


 丸山は左手までもぬかるみに突っ込む。


「すごい気合いだ。宝探し、丸山好きだったもんね」


「残り10秒」


 丸山の呻き声が泣き声に変わってきた。


「丸山。また許してくださいってお願いしてみたら?」


「残り5秒————」


「やだやだやだやだやだやだやだやだ」


「4、3、2、1、そこまで! では、何本とれたか見せてください」


 丸山がガラスで傷だらけになった右手を広げ、乾いた地面に拾った指を出した。


「2本です……」真っ赤な目で僕を見つめる。「な、何本拾いましたか……?」


 僕はにっこり笑って、拾った指を出した。

「6本だよ」


 僕はぬかるみから上がる。


「は? えっ? あの? なんで……!?」


 僕は自分の左手を見せた。指は無い。僕も「許してください」と言ったから切れ落ちたのだ。わざとそうして、自分のスコアに5本追加した。丸山は多くても3回と思っていただろうけど、結果は倍の6回僕に斬られることになる。


「じゃあ丸山純子」僕はショーテルを手にぬかるみの中で腰を抜かした丸山を見下ろす。「そういうことだから」



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