露出狂……?
◆露出狂……?
「ふぅ〜〜! ごちそうさまぁ。ごめんなさいねぇ、なんかわたしだけおいしい思いしちゃいましてぇ」
全身血だらけで微笑む彼女のお腹には、もう口は開いていなかった。なんら変わりない、普通の柔肌。うっすらと線が入っていたりなどもない。
「いえ、いいんですよ。では私たちはこれで」
「仕事がありますので」
僕らは同時に背を向けた。後ろからがぶりされることはなかった。
「ちょーーっと待ってくださいぃ!」代わりに僕らを言葉で呼び止める彼女。
「なんですか?」
「あなたたち冒険者なんですよねぇ? おねがいしますぅ、わたしとおともだちになってくれませんかぁ?!」
「どういうことですか?」
「実はわたしぃ人間の生活にあこがれてましてぇ、王都で暮らしたいんですけどぉ、ご覧の通りの魔族なんでぇ、わたしを殺そうとしたり、こわがられちゃったりでぇ。だからぁ人間のおともだちがいれば、他の人たちにも怪しまれずに暮らせると思いましてぇ」
ふわぁ〜っと語尾が伸びる喋り方だけど、言葉そのものには我々を必死に説得しようという焦りがうかがえた。
「どうしましょうか、ロロル君」
「友達って、なろうよ、はい、でなるものなのかな。僕、友達いなかったし、いつも1人だったし、あんま分からないんだ」
あれなんか言ってて悲しくなってきたぞ。
「あのですねぇ! わたしと友達になるといい事がありますぅ!」
「なんですか」
「わたしのお腹は奈落になってるんですぅ。だからいろんなものをたっくさんしまっておけますよぉ〜!」
「えっ、消化されたりしないの?」
「お口の中の分かりやすいところに置いておけばいいのでぇ」
お口の中の分かりやすいところ、とは。
「逃げ足だって速いです! 足の指もこんなに開きます!」
元より靴は履いていなかったようで、目の前で足の指をわきゃわきゃされる。体も柔らかいようだ。
「あと解体も得意ですよぉ! ほらこんなふうに魔物のキチョーな部位をキレイに採れるんですぅ! さくらんぼの茎をちょうちょむすびできるぐらいにわたしの舌は器用なんですぅ!」
顔の方の口からピンクの舌を出してぺろぺろとアピール。「速い」ぼそりとフェニが呟く。
「あのぅ、おともだちになりましょお? おともだちにぃ、おともだちぃ……」
彼女は魔物の角を差し出しながら呪詛のように「おともだち」と呟き続けた。
血まみれで水着姿の女の子からの、おともだちのお誘い。脳の処理が追いつかない。
「ロロル君、冒険者として稼ぐ場合、無尽蔵のアイテムボックスがあるとかなり便利です。あのお友達は、便利です」
友達がいたことはないけど、友達に便利ってワードは使わないと思う。
そういえば、異世界初日の初めての復讐の際、岸野や樫木が小さなポーチから槍などを出していたっけ。
「そういうアイテムは売ってないの?」フェニに聞いてみた。
「ほぼ無いと思います。クラフトが女神から貰い受けるアイテムポーチが有るんですが、そういえばロロル君は持ってないんですか?」
「いや…………」
あの女神め。
まぁ……この女の子、悪い人ではなさそうだし、いいか。
「じゃあ、あの……こちらからもお願いします。友達になってくれますか?」
「なりまーす! やったぁ〜! やったぁ〜!」
子供のように飛び跳ねる……、そういえば名前をまだ。
「僕はロロルです。彼女はフェニ。君の名前は?」
「あーわたし名前は無いんですよねぇ。好きに呼んでくださぁい」
くっ、又もネーミングセンスを問われることになろうとは……!
「さぁ〜! 呼んでくださ〜い。ぎぶみーお名前ぇ、かもーん!」
耳に手をあてて名前待ち。
「ニロ、はどうかな……?」
自信なく告げると、彼女は喜色満面、全身全霊で喜んだ。
「わぁ〜かわいい名前ぇ! はーい、ニロでぇす! こんにちわぁ!」
「なんてハイセンスな命名! 口が二つ、二つの口、二口……それをにろと読ませるなんて!」
「やめて……」
ネーミングセンス、欲しい。
「こんにちわぁ、ニロでぇす!」
青い髪の彼女は、周りの木や、花、虫なんかに声をかけてまわった。
「ニロでぇす! ニロだよぉ! ニロなんだよぉ〜!」
ほっとくと世の果てまで行ってしまいそうなので呼び止めた。
「ニロ」
そう呼ばれるとニロはこの上ないほどに喜んで、僕らの方へかけてきた。




