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プライベートルーム

無事にトイレで用を済ませると、功太は足早に部屋を目指す。行きは必死で気にならなかった物さえも何故か色々と目に付いては無意味な恐れを抱いてしまう。

なるべく余計な物を見ないようにと視線を下げて足元の廊下だけを見ていると、功太が使用しているゲストルームを過ぎた先にピンク色の丸い物体が落ちていた


「なんだ…?」

気になって拾い上げると、シフォン生地で作られた女性用の髪飾りだった

「確か…シュシュだっけ?そういえば、娘がいるとか言ってたな…」

夕食時に金子が話していた身体の弱い娘がいる、という言葉を思い出す。50代位の金子なら、その娘は恐らく十代から二十代だろう。きっとこの髪飾りはその娘の物に間違いない


「明日、金子さんに渡せば良いか」

とりあえず拾ったシュシュをブレスレットのように腕にはめ、顔を上げると廊下の突き当たりにある部屋の扉が開いており中から明るい光が漏れている事に気が付いた

「もしかしてあそこが娘の部屋かな…ちょっと落とし物を届けるだけだから良いよね」

功太も立派な成人だ、同じ年頃の女性というのはやはり気になってしまう。誰に言うともなく言い訳めいた言葉を呟き扉へ近付いて行くと、そっと中を覗き見る


「あの~落とし物を拾ったんですけど~」

軽く声を掛けるが返事は無い。更に誰もいないのか物音1つ聞こえてこない。恐る恐る部屋に足を踏み入れると、その華やかな部屋の作りに功太は驚いて息を飲んだ。白とピンクで統一された部屋はまるでお姫様のプライベートルームようで薔薇の甘い香りが部屋いっぱいに充満している


部屋の中ほどには功太の背丈程もあるガラス製のキャビネットが鎮座しており、枝付きの燭台やアンティークな人形と共に動物や花の形をしたクリスタルが幾つも並べられていた。細かな作りのクリスタルは、受けた光を乱反射させ光の粒が紙吹雪のように舞って辺りを照らしている

「きれいだなぁ…」

その繊細な光に功太はすっかりと魅入ってしまう


「女の子の部屋に勝手に入ったらダメだよ」

背後から掛けられたハスキーな声に功太の身体は勢いよく跳ね上がる


「す、すみません!!そこの廊下で落とし物を拾ったんで、届けようと思って…それで、あの…光がキラキラして凄いキレイで、こんなの初めて見たから…いや、そうじゃなくて…」

慌てて頭を下げてしどろもどろに言い訳を始めるが、焦るあまり功太自身も何を言っているのか分からない状態だ


「いいわ、特別に許してあげる」

微かな笑い声と共に発せられた台詞に功太は安堵して頭を上げた瞬間、目の前に現れた光景に驚きと衝撃で言葉を失った

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