02.20
この夜に
祈るものがあるというのなら
どうか
この手で
誰も傷つけることがないようにしてください
生きていても死んでいくときも
誰かを傷つけることのないように
どうか僕に
希望など見せないで
水面でもがきつづけるより
海の深くを知りたい
どうか
この夜に
息ができるようにしてください
見ないふりして傷つけたものの数を知って
頭を抱えたくなってしまうから
そうして頭の重い朝が来ると
僕は人間になる
誰かを君と呼び
自分を私と言い
さも大切なものがそこにあるように
さも大切なものを抱えているように
いつしか誰かが僕にそうするように
誰かを傷つけている
それが君のためだと憤り
僕のためだと猛り
物語の挿絵に描かれていた霧の朝は
なかなか訪れない
幼い頃から見ていた夢のひとつで
祖父と誰もいない道を
手を繋いで歩いていたのだ
どうして夜が来て
朝が来ることを
みんな絶望しないのだろう
でも僕も生きている……
大切なものなど存在しないのかもしれない
それがなければ
生きる理由もなくなってしまうように思えるから
ある、と諭しているだけで
いつの日かの朝
鉄塔を横ぎる僕のまえ
なんの意味も価値もないけれど
ただきれいでまぶしい指輪がおちている
そんな想像ができることが
自分でもしんじられないよ
僕が僕を許せばいい
それだけのことができない
祈ることさえ許せない
自分が好きな僕は憎悪に塗れ
自分が嫌いな僕は__
ああ
こんな感情
とかしてきえるものなら
でもたしかに
朝は迫っている
僕はまだ世界に夢を置く
だから辛いんだけどね