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06 宿屋の主人
気が付いたら宿屋の部屋で眠っていた。
気の良い主人が私の境遇に同情して、置いてくれたようだった。
私はお礼を言って、「何でもします」と頼み込んだ。
人の良い宿屋の主人はそれから私に仕事を教えてくれて、いくつかの役目を割り振ってくれた。
信じられない事だった。
私は素性の知れない女性で、何も持っていないというのに。
そういうと、主人は数年前に面識のなかった誰かに助けてもらったという過去を教えてくれた。
それ以来、困っている人を見かけたら、知らない人でもできるだけ助けるようにしているのだと言う。
私は主人の親切心に涙が出た。
一人で泣いているとバルドに「泣き虫女」とからかわれてしまった。