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01 エメラルダ・クオンティズ
門から一歩踏み出す。
目の前には、外の世界。
「エメラルダ・クオンティズ。貴様には今後一切、我が国の領土に足を踏み入れる事を禁ず!」
そう言われて背中を押された私は、躓いて転んだ。
血のにじんだ手のひらを見つめながら呆然とする。
たったいま、私は自分が生まれ育った故郷を追放された。
おそらく、生きている内に再び故郷に足を踏み入れることはないだろう。
国の門から強引に背中を押されて一歩踏み出し、関係はそれきり。
背後で分厚い門が閉じる音を聞きながら私は涙を流していた。
どうしてこんな事に。
そう思ったけれど、仕方のない事だったのだ。
濡れ衣だと分かっていても罪を被らなければ、好いていた王子様の立場が危なくなってしまうのだから。