くのいちオケツ
〈人物一覧表〉
村枝ケツ子(29)…くノ一。忍者なんだから、本名晒すのはやめて欲しい。
荒ジャケ(39)…先輩くノ一。昼間はOLなので、里のくノ一筆頭ではあるが、忍者の誇りは埃と一緒に丸めてポイ。
ツッコミ「おケツ~、おケツはどこぞ!」
ボケ「はっ、荒ジャケセンパイ! すでに、ここに!」
ツッコミ「はいはいはい、席について~、今日もアラサーまっしぐら、生え際もお肌のハリも結婚リミットもキワッキワの村枝ケツ子に」
ボケ「本名晒すのやめてください」
ツッコミ「乙女も惚れちゃうセクシー忍法講座を始めちゃうわよぉ」
ボケ「イエス、セクシー! ノー、エスケートゥー!」
ツッコミ「あんた、小じわのケアはチャンとしなさいよ」
ボケ「それはさておき今月の〈くノ一ノンノ〉の特集『こんな女子力は通用しない!』ってタイトルなんですけど。これどう思います!?」
ツッコミ「ちょっと。近い近い。鼻息荒いッ」
ボケ「むふーッ! 最近じゃ、どこにいっても女子力、女子力! 記事にも『あなたのその女子力は時代遅れ!』『女子力スカウターに引っかかるオンナになろう!』なァんて煽りが沢山あって、ってか、女子力スカウターって何だよ!?」
ツッコミ「そりゃ丸一日、テレビ見ながら酒あおってる、職業〈忍者〉とは名ばかりの自宅警備員29歳は、女子力ないわよ」
ボケ「酒は命のお水ですッ。ていうかセンパイこそ、何をちゃっかり昼間、OLやってんですか! くノ一だったら、忍べよ! 一人だけ副業とかズルい! あたしの就職口探してきてくれるって言ったじゃないですかッ! ぐおお。あたしが女子力ないからこんなことになるんだ! ちっくしょー!」
ツッコミ「うるせぇ、ニートがッ! まったく……。いい、おケツ? ケーススタディよ。例えばの話。あんたは合コンで二人の男に出会いました」
ボケ「ふんふん」
ツッコミ「一人は、いかにもアキバ系のブサメン。もう一人は、遊び慣れてそうなイケメン」
ボケ「また極端ですね」
ツッコミ「さて、あんたはちょっとおっちょこちょいな小悪魔系を演じてグラスを取りこぼすの」
ツッコミ『あ~ん、やっちゃった~☆このスカート、超気に入ってたのに、ビールこぼしたせいで、おもらししたみたい~☆』
ボケ「下品か」
ツッコミ『お股がびしょびしょ~☆』
ボケ「解せぬ」
ツッコミ「ケツ子の小悪魔ビッチに若干引き気味のイケメン」
ボケ「引かれてるじゃないっスか!」
ツッコミ「そんな中、近づいてくるブサメンくん」
ボケ「げえッ!」
ツッコミ『ちょ、ビチ子ちゃん大丈夫!?』
ボケ「ビチ子ちゃん!?」
ツッコミ『ウップス、お股びしょびしょ! エロス! これはテラエロス!』
ボケ「ていうか超絶ピザ声ッ!」
ツッコミ「そう言ってしかし、店員さんに蒸しタオルをもらって、まずしっかりと染みの部分を蒸らしたあと、裏側から乾いたハンカチを抑えさせると、上からタオルを押し込み染みを移すという、迅速かつ、丁寧な処置を行うブサメン」
ボケ「え、何それ、あたしできないそんなこと」
ツッコミ「でも口では『ビチ子たん、萌え~。はひぃはひぃ』と荒々しい鼻息よ」
ボケ「貞操の危機ッ!」
ツッコミ「さて、同じ処置をイケメンの方がさらっとやってのけたら、あんたはどっちを」
ボケ「イケメンに決まっておる!」
ツッコミ「そりゃそうよね。そういうもんなのよ。女子力って恋愛でどう使うかが重要なの。でも結局恋愛って、『その人のことを好きかどうか』で変わってくるでしょ?」
ボケ「ザッツライ!」
ツッコミ「極端に言うとね、綺麗な女の子にだったら、何されても『この子気が効くわ~』って絆されちゃうもんなのよ、男って」
ボケ「本当、下半身が脳みそですよね、男って」
ツッコミ「だけど、女の子も同じでしょ? あんただってさっき、イケメンくんを選んじゃったわよね?」
ボケ「うぐぅ」
ツッコミ「男も女も同じ。じゃあ、女子力って何?って話よね」
ボケ「ホンマそれ」
ツッコミ「いいこと? あんたはさっきの例えでこう答えなきゃいけなかったの。『ブサメンくん、ありがとう。お蔭で、お気に入りのスカート、汚さないで済んだわ』ってね」
ボケ「これが女子力か!?」
ツッコミ「そう、これが忍法、微笑みの爆弾!」
ボケ「微笑みの爆弾!? 新たなセクシー忍術の誕生っスね!」
ツッコミ「狙った相手は、例えブサメンでも落とす! いいこと、おケツ! この忍法をマスターして、明日からの合コンパーリィに備えるのよ! そして、あたしも呼びなさい! コンパセッティングプリィーズッ!」
ボケ「ケツ子におまかせ!」
ツッコミ「今夜は早速特訓と洒落込むわよ! おケツ! 大至急コンビニで缶ビール買ってきなさい!」
ボケ「ツマミは〈チーかま〉でも!?」
ツッコミ「構わなくってよ!」
ボケ「くノ一おケツ、いきまーす!」
ボケM「私は忍者。くノ一おケツ。本名、村枝ケツ子。29歳。今日も今日とて、里のくノ一筆頭の荒ジャケセンパイと女子会と称した、飲み会に興じるのだ」
二人「女子力向上バンザイバンザイ!」