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内気だった娘が友達と一緒にバレーに行くようになって変わった。


疲れたとかしんどいとか言いながらもレギュラーになったと喜んでいるし、よく笑うようにもなった。


娘が帰ってくる6時頃に合わせてお風呂を沸かし、ご飯を作って待っているのが日課になった。


「ただいま」


旦那が帰ってきた。


最近、休みのたびに河原に行っては宝探しと称したガラクタ集めに勤しんでいる。


「おかえり、今日もナニか拾ってきたの?」


興味はないが聞いてあげると喜ぶのでいつも聞いてあげている。


「今日はこんなの拾ったよ」


第一印象は気持ち悪いだった。


旦那の手の平にあったのは明らかに安物の指輪だった。


自然に落ちたとは考えにくい。


やっぱり何かがあって捨てたものだろう、そんなものなんで拾ってくるのか。


そんな事を言っても機嫌を悪くするだけなので言わないが。


「あんまり置いとかないで、処分してよ?」


前に拾ってきた物にナニかが憑いていたみたいで家の中で霊障があったのだ。


それをネットで説明書き付で出したら高く売れたと喜んでいた。


機転を聞かせた自分は賢いように言っていたが、こっちはいい迷惑である。


一向にガラクタ集めを辞めないので家族会議を開いて集めた物を置いておかないでどんどん処分していくなら拾ってきてもいいということにした。


「わかってるよ」


そう言って旦那はガラクタ部屋に引き揚げていった。


旦那が部屋に引き上げていって暫くすると


パンッパンッ

パンッパンッパンッパンッ


という音が聴こえてきた。

何をやってるんだろうか?


「ただいまー」


娘も帰ってきた。


「おかえり、今日も疲れたでしょ?

お風呂入っておいですぐにご飯にするから」


「ありがとう、お父さんは?」


「上のガラクタ部屋にいるんじゃない?」


「今日も拾ってきてたの?」


「指輪拾ってきてたよ」


「見るからに安物」


そう言って娘と大笑いした。


娘がお風呂に行ったのでその間に食事を仕上げる。


バレーの帰りは沢山食べるので作りがいがある、娘の好きなブロッコリーも湯がいた。


鼻歌混じりに台所に向かっていると


「いやあぁァァァァ」


お風呂場から叫び声が聞こえた。


火も消さずにお風呂場に走っていき扉を開けると娘が鏡を背にして倒れこんでいた。


「どうしたの!」


声をかけると娘がしがみついてきた。


「あ、あぁ」


声にならないらしい。


ナニか恐がっているように見える


「大丈夫?どっか怪我してない?」


もう一度声をかけると


「鏡越しに血塗れの女の人が睨んできてた」


ぽつりと言った。


また霊障だ。


今度こそ旦那に家のガラクタを全部処分してもらおう。


「怖かったね、どっこも怪我してない?」


「どうした!」


旦那が二階から降りてきてお風呂場には入ってこないで様子を聞いてきた。


「お化けが見えたんだって。

私、一緒にお風呂入るから台所の火消しといて」


「大丈夫なのか?」


「大丈夫だからそこ閉めて」


旦那にアコーディオンカーテンを閉めるように言って娘をなだめながら一緒にお風呂に入った。


お風呂に入っているとリビングの方からまた


パンッパンッ


という音やら


ガタガタッ


という音が聴こえてくる。


旦那はいったい何をしているのやら?


娘は相当怖かったらしく、お風呂から上がって少し落ち着いたがご飯もあまり進んでいなかった。


「お父さん、さすがに拾ってきた物全部処分してもう拾って来ないでね。

今までこんなこと無かったのにお父さんが物拾ってくるようになってからよ?」


いつもはやんわり言うが今回はきっぱり言い切った。


旦那は苦い顔をしている。


「なんか見間違えたんじゃないか?」


まだしらばっくれようとしている。


こういう時、この人は自分でもわかっている。


人に言われて行動するのが嫌なのだ。


放っておいてもそのうち処分するのだろうが今回は待っていられない。


「こんな怖い目にあったんだから悠長にしてたらダメよ?

すぐに処分してくださいね」


これだけしっかり釘を打てば大丈夫だろう。


言い過ぎてはへそを曲げる。


ご飯を食べ終わり、寝支度を済ませる。


リビングではこたつの前に横になって旦那がいつものようにうつらうつらとしていた。


「あなたー、私たちもう寝るわよ?」


声をかけると薄目を開けてこちらを振り返る。


「まだ恐がってるの?見間違いだってあんなの」


娘を見て声をかける。


この人なりに心配して声をかけているのだろう、だけど言い方が悪い。


「なんでそんなこというのよ」


娘は恨めしそうだ。


「まだ小学校6年生なんだから変な物見えたら恐いの当たり前よ」


「そんなに恐がって気にしてたら余計によくないぞ」


旦那がそう言うと娘は私の手を引っ張って二階に上がって行った。


「絶対お父さんのせいなのに」


そりゃあ怒るよねと思いながら


「お父さんも分かってるからすぐに処分してくれると思うよ。

今度何かお詫びに買ってもらいなさい」


そう言って笑いかける。


娘はまだモゴモゴ文句を言っていたが一緒に布団に入ってしばらくしたら眠っていた。


いつもは一人で寝ているのだが今日は一緒に寝てほしいとお願いしてきた。


娘の頭をよしよしと撫でながら、最後に一緒に寝たのはいつだっただろうか?


そんなことをぼんやりと考えていた。




体が重い。


いつの間にか眠っていたようだ。


嫌な悪夢を見ていた気がする。


思い出せない。


また金縛りかなと思うと体が動く。


だけど体が重い。


隣で娘がうなされている。


娘を起こそうかと思ったが違和感に布団をそっと捲ってみるとそこには血塗れの女がいた。


夢の中で見た女だ。


恐怖のあまり絶叫した。


女がヴァアァァァと唸りだした。


娘も隣で起きて悲鳴をあげた。


部屋中がガタガタ揺れだした。


どうにか娘と布団から出たいが女は妙に重くて動けない。


もがいているとその間にも女はヴァアバアァヴァァアァァとさっきよりも酷く唸り続ける。


部屋はその間もずっとガタガタ揺れている。


パンッパンッパンッパンッ


っという破裂音のようなものがする。


扉もバンバン音をたてている。


ドアノブがガチャガチャと回っている。


恐怖で頭がおかしくなりそうだ。


娘と私は悲鳴をあげながら、もがくが動けない。


ふと体が軽くなった。


さっきまで上にのって唸り声をあげていた女が宙に浮いている。


蛍光灯がチカッチカッと瞬いた。


もうなにがなんだかわからない。


そしてバンッと扉が開いた。

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