7.ミコちゃん
キャラ紹介ですねー。
「----葛原ミコです。サナちゃん,よろしくね。」
転校初日,となりの女の子はそう言った。
お昼休みの時に聞いたら,ミコちゃんは神社の娘さんだという。
この町でいちばん大きな神社「深間調神社」。
町のまんなかにつきでてる,あのでっかい岩山の上にある神社から通ってきてるって。
あそこって上るのにロープウェイ使うんだよね。
毎朝,あれに乗ってきてるのかな?
ミコちゃんは可愛い。
つやつやの髪の毛はおかっぱで,大きな瞳はきらきらで真っ黒だ。お肌も真っ白だしほっぺたは桜色。
ただ…そのう。
なんか怒ってても笑ってても同じ顔な気がするんだけど?
----ちーーーーーーーっ
「それはサナちゃんの気のせいなのです。」
言われてしまった。
ていうか,その前になんか変な音しなかった!?
「それはサナちゃんの気のせいなのです。」
ミコちゃんはお勉強も運動も得意。
得意なんだけど----成績は中の上なんだって。
「ミコちゃんは要領がわるいのです。」
と言ってた。
体育の徒競走。
横がミコちゃんだったんだけど,スタートの瞬間,見えなくなってた気がする。
スゴい土煙とかあがってた気がする。
でもミコちゃん----いつのまにか最期から2番目だったんだよね。
「ミコちゃんは要領がわるいのです。」
鉄棒で,
先生が見てない時に月面宙返り決めてたけど。
いま逆上がり練習してるのはなぜ?
「それはサナちゃんの気のせいなのです。」
----いろいろあったけど。
ミコちゃんと,その後知り合ったアオイちゃんはクラスでも一番のお友達だ。
* * * * * * * * * *
ある日曜日のお昼。
うちの近所の神社にはじめてお参りに行った。
うちから学校へ行く通学路の途中にあるので,あることは知ってたけど,中に入ったことはなかったんだ。
住宅街のなかにあるお社は,ミコちゃんとこの鎮守様にくらべるとずうっと小さくて。
鳥居をくぐったら境内に小さな公園があって,ブランコとか滑り台が置かれていた。
カナはよく,遊びに来ているらしい。
そっちに顔見知りの小さな子が何人かいたらしく,わたしの手を離して走って行った。
わりと大きな狛犬さんの横を,お辞儀して通って階段をのぼり。
お賽銭入れるとこの前で,大きな鈴を揺らして手をパンパン。
さあ帰ろうと思ったら,巫女さんの服を着た女の子が,参道の石畳のとこでお掃除してるのに気がついた。
おかっぱの髪……大きなお目々……
「ミコちゃん?」
「----はい?」
「あれ,どうしたの?
なんでうちの近所に----って,
そうかお家のお手伝い?」
「…えーーと。」
----ちーーーーーーーっ,ちん!
「いまなんか鳴った?」
「----気のせいなのですよ。
はい,3丁目の石村さんちのサナちゃんですね?
はじめまして。」
「え,なにミコちゃん。」
「はい,ミコちゃんはミコちゃんですが。
わたしはたぶん,サナちゃんの知ってる
"ミコちゃん" じゃないです。」
「…………え?」
びっくりして女の子をもういっぺん見た。
そういえば…ミコちゃんってこんなに背低かったっけ?
わたしと同じくらいだったよね。
でも顔はそっくり…ていうか見分けがつかない。
あえて言うなら。
いつもつけてるリボンの位置と色が少し違うかな………
「えーーと…そうするとあなたは,
ミコちゃんの妹さんとか?」
「いいえ,同じ町の神社さんですが,
うちは鎮守様のところと親戚とかでないですよ?
サナちゃんのクラスのミコちゃんさんは,
鎮守様のミコちゃんさんで,
わたしはここのお稲荷さんのミコちゃんなのです。」
「どういうこと?」
「知りませんでしたか?
ミコちゃんは,いっぱいいるのですよ。」
-----ええええええええええっ!?
「この国の神社の神主さんのご家族には,
かならず一人は "ミコちゃん" がいるのです。」
----くらっ…衝撃の事実。
「え?…え?
じゃあミコちゃんって……なんなの?
あ!神社にいるんだから神様?」
「ミコちゃんは人間なのですよ。」
「え…じゃあ妖怪…座敷童みたいな?」
「ぷんぷん----失礼ですね。
ミコちゃんは人間なのですよ。」
「でもでも!だってこんな……
まさかロボットとか!」
「ミコちゃんは人間なのですよ。
触ってみてください。」
ほっぺたをつんつんしてみる----柔らかい。
手を握ってみる----温かい。
わたしの中でちょっと何かが崩れた気がした。
「ミコちゃんは,ミコちゃんなのですよ。」
そういってお稲荷さんのミコちゃんは笑った。
表情は変わらないのだけれど。
「じゃあ…ミコちゃん,ってどのくらいいるの?」
----ちーーーーーーーっ。
「いまなんか鳴った?」
「----気のせいなのです。
800万人…くらいいるみたいなのですよ。」
うん,ミコちゃんはミコちゃん。
わたしは考えるのをやめた。
わたしの知らないミコちゃんは,ペコリとお辞儀をすると,またお掃除をはじめた。
カナが走ってくる。
お昼ごはんに帰ろう。
サナ 石田紗菜>石村紗菜 9才 お姉ちゃん。ふつうの女の子。髪は学校では三つ編み,家ではポニテ。
カナ 石田佳菜>石村佳菜 4才? 無口,おかっぱ。行動の予測がつかない,ちょっと謎の存在。若干三白眼だが,黙っていればそれなりに可愛い。
ミコちゃん 神社の子,いっぱいいる。
月琴町 さあ,どんな町でしょう?