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月琴町奇譚  作者: 斗酒庵主人
7/14

7.ミコちゃん

キャラ紹介ですねー。

 「----葛原ミコです。サナちゃん,よろしくね。」


 転校初日,となりの女の子はそう言った。


 お昼休みの時に聞いたら,ミコちゃんは神社の娘さんだという。

 この町でいちばん大きな神社「深間調(ふかましらべ)神社」。

 町のまんなかにつきでてる,あのでっかい岩山の上にある神社から通ってきてるって。

 あそこって上るのにロープウェイ使うんだよね。

 毎朝,あれに乗ってきてるのかな?


 ミコちゃんは可愛い。

 つやつやの髪の毛はおかっぱで,大きな瞳はきらきらで真っ黒だ。お肌も真っ白だしほっぺたは桜色。

 ただ…そのう。

 なんか怒ってても笑ってても同じ顔な気がするんだけど?

 ----ちーーーーーーーっ


 「それはサナちゃんの気のせいなのです。」


 言われてしまった。

 ていうか,その前になんか変な音しなかった!?


 「それはサナちゃんの気のせいなのです。」


 ミコちゃんはお勉強も運動も得意。

 得意なんだけど----成績は中の上なんだって。


 「ミコちゃんは要領がわるいのです。」


 と言ってた。

 体育の徒競走。

 横がミコちゃんだったんだけど,スタートの瞬間,見えなくなってた気がする。

 スゴい土煙とかあがってた気がする。

 でもミコちゃん----いつのまにか最期から2番目だったんだよね。


 「ミコちゃんは要領がわるいのです。」


 鉄棒で,

 先生が見てない時に月面宙返り決めてたけど。

 いま逆上がり練習してるのはなぜ?


 「それはサナちゃんの気のせいなのです。」


 ----いろいろあったけど。

 ミコちゃんと,その後知り合ったアオイちゃんはクラスでも一番のお友達だ。


 * * * * * * * * * *


 ある日曜日のお昼。

 うちの近所の神社にはじめてお参りに行った。

 うちから学校へ行く通学路の途中にあるので,あることは知ってたけど,中に入ったことはなかったんだ。


 住宅街のなかにあるお社は,ミコちゃんとこの鎮守様にくらべるとずうっと小さくて。

 鳥居をくぐったら境内に小さな公園があって,ブランコとか滑り台が置かれていた。


 カナはよく,遊びに来ているらしい。


 そっちに顔見知りの小さな子が何人かいたらしく,わたしの手を離して走って行った。


 わりと大きな狛犬さんの横を,お辞儀して通って階段をのぼり。

 お賽銭入れるとこの前で,大きな鈴を揺らして手をパンパン。


 さあ帰ろうと思ったら,巫女さんの服を着た女の子が,参道の石畳のとこでお掃除してるのに気がついた。

 おかっぱの髪……大きなお目々……


 「ミコちゃん?」


 「----はい?」


 「あれ,どうしたの?

  なんでうちの近所に----って,

  そうかお家のお手伝い?」


 「…えーーと。」


 ----ちーーーーーーーっ,ちん!


 「いまなんか鳴った?」


 「----気のせいなのですよ。

  はい,3丁目の石村さんちのサナちゃんですね?

  はじめまして。」


 「え,なにミコちゃん。」


 「はい,ミコちゃんはミコちゃんですが。

  わたしはたぶん,サナちゃんの知ってる

  "ミコちゃん" じゃないです。」


 「…………え?」


 びっくりして女の子をもういっぺん見た。

 そういえば…ミコちゃんってこんなに背低かったっけ?

 わたしと同じくらいだったよね。

 でも顔はそっくり…ていうか見分けがつかない。

 あえて言うなら。

 いつもつけてるリボンの位置と色が少し違うかな………


 「えーーと…そうするとあなたは,

  ミコちゃんの妹さんとか?」


 「いいえ,同じ町の神社さんですが,

  うちは鎮守様のところと親戚とかでないですよ?

  サナちゃんのクラスのミコちゃんさんは,

  鎮守様のミコちゃんさんで,

  わたしはここのお稲荷さんのミコちゃんなのです。」


 「どういうこと?」


 「知りませんでしたか?

  ミコちゃんは,いっぱいいるのですよ。」


 -----ええええええええええっ!?


 「この国の神社の神主さんのご家族には,

  かならず一人は "ミコちゃん" がいるのです。」


 ----くらっ…衝撃の事実。


 「え?…え?

  じゃあミコちゃんって……なんなの?

  あ!神社にいるんだから神様?」


 「ミコちゃんは人間なのですよ。」


 「え…じゃあ妖怪…座敷童みたいな?」


 「ぷんぷん----失礼ですね。

  ミコちゃんは人間なのですよ。」


 「でもでも!だってこんな……

  まさかロボットとか!」


 「ミコちゃんは人間なのですよ。

  触ってみてください。」


 ほっぺたをつんつんしてみる----柔らかい。

 手を握ってみる----温かい。

 わたしの中でちょっと何かが崩れた気がした。


 「ミコちゃんは,ミコちゃんなのですよ。」


 そういってお稲荷さんのミコちゃんは笑った。

 表情は変わらないのだけれど。


 「じゃあ…ミコちゃん,ってどのくらいいるの?」


 ----ちーーーーーーーっ。


 「いまなんか鳴った?」


 「----気のせいなのです。

  800万人…くらいいるみたいなのですよ。」


 うん,ミコちゃんはミコちゃん。

 わたしは考えるのをやめた。


 わたしの知らないミコちゃんは,ペコリとお辞儀をすると,またお掃除をはじめた。


 カナが走ってくる。

 お昼ごはんに帰ろう。


サナ 石田紗菜>石村紗菜 9才 お姉ちゃん。ふつうの女の子。髪は学校では三つ編み,家ではポニテ。

カナ 石田佳菜>石村佳菜 4才? 無口,おかっぱ。行動の予測がつかない,ちょっと謎の存在。若干三白眼だが,黙っていればそれなりに可愛い。


ミコちゃん 神社の子,いっぱいいる。


月琴町 さあ,どんな町でしょう?


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