2.飛空艇の姫(1)
第2話ですが,時系列はあっちゃこっちゃバラバラなんで,ご自由にお読みください(w)
朝,テレビでやっていた。
この国の将軍さまが外国に出かけるらしい。
黄色の着物に,桜の花を散らした綺麗な帯を締めた女の子が,飛空艇の入り口で手を振っていた。
わたしと同じくらいの年かな?----ううん,少し年上だよね。
顔は見えない。
赤い大きな兜をかぶってるから。
背丈と同じくらい長い刀も腰につけてる。
タイヘンだよね,将軍さまって。
学校に行ったらアオイちゃんがお休みだった。
風邪かな?きのうは何ともなさそうだったけど…
ミコちゃんに聞いたら,お家の都合なんだって。
アオイちゃん家も,タイヘンなんだね。
放課後,公園の前を通ったら,カナとヘイハチロウがいた。
カナはもうすっかり,近所の小さな子どもたちと犬猫のガキ大将になっている。
ヘイハチロウの上で仁王立ち。
今日は犬猫連合とちびッ子組の模擬戦のようだ。
カナの采配一下,犬猫連合が魚鱗の陣で突撃。
対するちびッ子組は鶴翼の陣でこれを受け止める。
両者激突寸前のところ,犬猫連合が陣の先頭を突如二手に分け,一手がやや遅れてちびッ子組の左翼を誘い込んだ!
それを見てちびッ子組の右翼は即座に反応。
犬猫連合左の初撃をかわし,そのさらに外がわから包囲せんと----て!何やってるのあんたらはあああっ!
犬猫とチビどもが,にゃーわんわーいと言いながら散って行った。
----なにをする。
みたいな顔しない。
きのうお父さんが読んでくれたカズサノスケの講談本の影響?
ああああああ………もうちょっと,何て言うか~コドモらしい遊びをしようね。
胴体に赤い龍を描いた水色の飛空艇が,真っ青な空を飛んでゆく。
先端には立花さまのお守りの紋所。
錬金術ギルドとの交渉,がんばってきてね。
……………………………
太平洋上空1万メートル。
槍のような形をした小さな飛行体が,飛空艇に横付けした。
三叉に分かれた後部には,人間が乗っている。
童話に出てくる魔女のようなローブやマントを身にまとった人間たちは,ヘルメットもつけず,特殊なスーツのようなものも着ていない。
彼らの飛行体は「ホウキ」と通称されている。
大星禍の時にあった宇宙戦闘艇を基にしたもので,自動車くらいの大きさの----ごく小さなものだが,戦においては一機がこの巨大な飛空艇と同程度の攻撃力を有すると言われる。
銀色の「ホウキ」が,一機また一機と中へ吸い込まれてゆく。
「で…名にし負う錬金術ギルドの長 "パラツェルスス" 殿が,今日はいったい何の御用かな。」
飛空艇の中央に設けられた謁見の間では,勝気そうな顔をした赤毛の少女が,古式な鎧甲冑をまとった三人と対峙していた。
中央に赤い兜の将軍,その左には青い甲冑に身を包んだ武将これは「ゲンジ」,右には緑色の鎧の上に狩衣をまとった「ヘイシ」がいる。少女への問は,青い甲冑の武将から発せられた。
歴戦の武者の,恫喝にも等しい鋭い詰問に動じることもなく,少女は「賢者の石」の白く輝くカドゥケウスをふるい,飛空艇の床を揺らせて言った。
「知れたこと…錬金術ギルドの長"パラツェルスス"の名において要求する----"カズサノスケの遺産" を渡しなさい!」
サナ 石田紗菜>石村紗菜 9才 ふつうの女の子。髪は学校では三つ編み,家ではポニテ。
カナ 石田佳菜>石村佳菜 4才? 無口,おかっぱ。行動の予測がつかない,ちょっと謎の存在。若干三白眼だが,黙っていればそれなりに可愛い。
ヘイハチロウ 斉藤さんとこの犬。大型の日本犬。コワモテだが「アマガミ犬」と綽名される。
アオイ 舘花葵 10才 紗菜のクラスメートで友達。色白でツヤツヤの長い髪。背は紗菜より少し大きいくらい。時々何日も学校を休む。
月琴町 さあ,どんな町でしょう?
大星禍 さあ,何でしょう?
カズサノスケ むかしのエラい人。
ミコちゃん 10才(?) 神社の娘。紗菜のクラスメート。いっぱいいる。