3話
「さて、変身だ。やり方を教えてやる。」
「変身!?…やっぱりできるんだ!!」
洗井は喜んだようで声を荒げてそう言う。
「まぁ聞け、心の中で変身したいと念じろ。」
「うんうん、次は!?」
「それで完了だ。」
「え?」
洗井は少し驚いている。無理も無い、特撮ヒーローは変身のポーズや掛け声などを行いつつ変身していたからだ。
「ポーズとか掛け声とかはいらないの?」
「いらねぇよ。」
「自分でそういうの考えても良い?」
「勝手にしろ。」
洗井は目をつぶって片手を顎に当てて考える。
「よし!」
洗井は拳を握り締め、腕をクロスさせると両腕を横に持ってきて右手を大きく上げ叫ぶ。
「変身!」
するとどういうことであろうか。洗井の姿は白いスーツと黒いマンとに身を包み、腰にはゴッツイ銀色のベルト、顔全体を覆う白い仮面を身につけた長身のヒーローらしき物に変身していた。仮面の上には長細い水道が付いている。
「それがお前のヒーローとしての姿か…」
洗井は部屋にある鏡を見る。
「これが俺か…すげぇ!本当にヒーローになれた!」
洗井は目を輝かせている。喜んでいるようだ。
「早速人助けと行きたいとこだが…」
トイレ君は横に寝転ぶ。
「もう今日は眠い、疲れた、寝る。」
小さな目を瞑るとトイレ君は眠りに付いたようであった。
随分勝手である。しかし、洗井はそんなことよりも変身できたことに感動しているのでトイレ君の態度は特に気にしていない。
「よし!ヒーローとしても学生としても頑張るぞ!」
洗井は右手を挙げて叫んだ。
こうして洗井はヒーローになったのであった。