2話
「え、えーと貴方は?人魂ですか…?」
洗井は恐る恐る聞いてみた。
「あ?人魂?違ぇよ。こっちの世界で分かりやすく例えるとマスコットキャラクターって奴だ…って上の連中が言ってたな…」
「マスコットキャラクター?え?よく分からないのですが?」
「何?何も説明されていないのか?はぁ…上も適当だな…」
人魂らしきものはやれやれといった口調で発言した。
「じゃぁ説明っすからよーく聞いとけよ?」
「は、はい。」
「まず、俺はこっちとは違う世界から来た。」
洗井は真剣なまなざしで話を聞きながら相槌を打つ。驚きより興奮が勝っているようで目を輝かせている。
「それでこっちの世界でヒーローを育成して人助けをさせることが俺の役目だ。以上。」
人魂はダルそうな口調で説明をした。
「あのー、いいですか?」
「何だよ。」
少しキレ気味に人魂のようなものは答える。もしかすると少しキレやすいのかもしれない。
「なぜヒーローを育成しようとしてるんですか?」
「あぁ?まぁその辺はだな。…修行のためだ。こっちの世界でいうと学校みたいな感じだ。」
「な、なるほど」
よく分かっていなさそうな口調で洗井は答えた。
「まぁ深いことは考えるな。要するにお前が人助けをすればそれでいいんだよ。ヒーローになりたかったんだろ?」
人魂のようなものは上から目線でそう言い放った。
「さて、じゃあ契約のお時間だ。」
「契約…?」
洗井はちょっと不安そうな表情で聞いてみる。
「まぁヒーローになるための契約だよ。お前は何も心配しなくていい、ヒーローになりたいならな。ちなみに契約によって俺はこっちの世界での体を得ることができるからなしてもらわないと困るんだよ。」
人魂のようなものは語る。契約は慎重に行うものだがどうやら早く進めたいようですぐ次へと話を進める。
「さぁ!俺を触るんだな」
「えっ熱そうだし…」
まぁ普通の人ならそう感じても無理は無い。
「熱くねぇよ。」
人魂らしきものはまたまたキレ気味に言った。
「じゃぁ失礼します。」
洗井は人魂らしきものに手を伸ばす。
「いくぜ、契約だ。」
辺りが眩しく光る。とても眩しい。目がチカチカする。
「こ、これで終わり…?」
「あぁ…」
洗井の目の前には人魂らしきものは居なかった。
代わりに居たのは洋式トイレに手足が生えていて、蛇口の部分が龍の首になっている大人の男の拳2つ分くらいの大きさの何かだった。
「えーとさっきの人魂さん・・・?」
「あぁ!?…姿が変わったんだよ。こっちでの世界での姿だ。さっきも言っただろーが。」
「あのー、変わった形ですね…。」
洗井は少しオドオドしながら言う。
「まぁ容姿は気にするな。俺も別に気にしねぇし。」
「分かりました。」
洗井はキレられなくてホッとしている。
「お名前」
「あ?」
「お名前聞いていませんでしたよね?」
「名前は無い。好きにしろ。」
「じゃあトイレ君でいいですか?」
「好きにしろ。」
さぞ名前等どうでもいいように言い放った。トイレの意味、形、何に使うものなのかを理解していない可能性もある。
「後…」
トイレ君は深く域を吸い込む。
「敬語やめろ。」
「あ、うん…」
洗井の緊張はまだ解けていないようである。