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依存と想い

泣き疲れたのか、着替えた僕のズボンにしがみついて眠る市架。

そんな彼を撫でながら、たくさん人と接して疲れた僕は優ちゃんに寄りかかる。何かあるからいけないからと、心配性な優ちゃんはしばらく僕の家に泊まると言って、優ちゃんの自宅に寄ってから家に帰って来たからもうすぐ二十一時になる。

そろそろ眠らなきゃと、動こうと考えるが、気持ち良さそうに眠りにつく市架の姿を見ると動けずにいた。

そんな僕を見かねてか、優ちゃんは僕の頭を鳥の巣にするかのように荒い手つきで撫でた後、ズボンを握る市架の手を優しく外して、横抱きにして市架ために用意した部屋へと連れて行ってくれた。

僕は撫でられた髪を整えるように触れていれば、ため息をついて戻って来た優ちゃんは躊躇うことなく肩が触れるくらいに近い距離に座ってきた。

これ、もし社内の女子が見てたら甲高い声をあげて、一部は喜んでいたんだろうなあ。……想像しただけで、鳥肌が立ってきた。優ちゃんとの関係が勘違いされることはよくあるけど、同人誌を作って、優ちゃんに渡して僕に読ませようとするのは本当にやめてほしい。

優ちゃんとはそんな関係じゃないし、これからもなるつもりはないのだから。お願いだから、せめて本人の目の前での腐女子トークは遠慮してほしいの、同人誌を作られるのも本当は嫌だけどね。

僕の説得じゃ、多分何を言っても無駄なんだろうけど。僕の優ちゃんへの想いは、多分間違えなく依存だ。ストーカーで悩んでた時も、会社で困っていた時も、そして一人で会社にいた時もいつも優ちゃんだけが助けてくれた。そこまでしてくれて、依存してしまうのはおかしいことだろうか?

現に、優ちゃんは市架のことも気にかけてくれている。自分の彼女も作らないで、僕の側に居てくれているのに、恋愛感情は持たないが、執着してしまうのはあの人達のせいなのかもしれない。

……そう考えながら、僕は優ちゃんの肩に寄りかかる。眠いのかと思ったんだろう、眠気を誘うかのように僕の頭を撫でる優ちゃん。そんな彼に僕はもう一つ、嘘をついている。一つ目は市架を引き取りたいが故にあの会社に働いていたこと、これは市架を引き取る前にバレてしまった嘘である。

「ごめんね、優ちゃん。僕、嘘つきなんだ。嘘をついていないと、生きていけない」

「……知ってる」

次の日、僕は仕事を辞めた。

そして、小説家に転職したんだ。


市架が不安定になるかもと思って、僕は趣味で書いていた小説を、応募してみたら文庫化されることになった。一度は断ったんだ、市架は耐えられるかもと思ったから。それでも根気よく交渉してきたから、僕は文庫化予定日時を遅らせることを条件にそれを了承したんだ。

それを優ちゃんに言いたくなかった。優ちゃんなら応援してくれるってわかってたから、だから言わなかった。少しでも、少しでも優ちゃんの側に居たかったから僕は嘘をついたんだ。

それが逆効果だってわかってても、優ちゃんの側に少しでも長く居たかったんだ……。









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