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君は本当の姉が残した生きていた証3

君はびっくりしたような顔をした、当たり前だろう、いざ一軒家に入れば綺麗とは言えない部屋だったから。僕は家事があまり得意ではない、料理だけは辛うじて平凡的な料理を作ることが出来るのだが。

「ごめんね、僕はあまり家事が得意ではないんだ……」

「て、手伝います」

「不甲斐ない保護者でごめんね?」

と、そう言って僕は動き出そうと立ち上がった瞬間、仕事の書類で滑り、尻餅をついた。

「……痛い」

そんな僕を見て、きょとんとしたような顔をする市架。僕は苦笑いをして、照れを隠そうとしていれば、この家のドアを開ける音がして、その音がする方向へと振り返れば、心配そうな顔をする同僚の山口優やまぐちすぐるの姿を見てびっくりした。まさか、こんなグットタイミングに来てくれるだなんて思っていなかったから、驚いたけど、優ちゃんには家の合鍵を渡しているので自分よりも先にこの家でくつろいでいても特に驚くことはあまりない。

情けなさすぎる自分に、思わず優ちゃんに抱きつきたくなったが、これ以上情けない姿を見せたくなかったので、ぐっと堪える。

「優ちゃん、書類に滑って尻餅ついちゃったんだがぁ」

「……何度目だよ、全く。まあ、取り敢えず、初めまして市架くん。山口優と言います。壱の同僚で、親友です。これからほぼ毎日顔を合わせるかもだから、よろしくな? この通り、壱は不器用だからさ、家事とか手伝いにくるから仲良くしてくれると嬉しい」

全くと呆れたように言いながらも、痛さを和らげるためか、背中をさすってくれる優ちゃん優しい。

市架には優ちゃんみたいに育って欲しい。優しいし、気が効くし、面倒見が良いし! まあ市架は数時間過ごしたけど、優しい子だとは感じてはいるが。

「よろしくお願いします」

律儀にもぺこりとお辞儀して挨拶をする市架。市架もいい子だなあと考えていれば、無理矢理優ちゃんに座らせられて、

「頼むからお前は動くな。また怪我が増えるだろうが」

「ごめん、優ちゃん〜」

怪我をするのは僕なのに、何故か怒られてしまった。取り敢えず謝っておいたら、……ったくとまた呆れられてしまい、申し訳なさを感じた。


信頼出来るのは優ちゃんだけ。

あとは学生時代のバイト先の知り合いと、市架だけ。

あとの人は信じられないし、信頼するなどもっての他。

「優ちゃん、いつもごめんね?」

「これだから壱は放っておけないんだ、いつも以上に世話焼くかんな、覚悟しておけよ?」

……優ちゃん、優しいな。

だから、会社内で優ちゃんだけには心を開くことが出来た。僕はたくさんの友人はいらない、けして裏切らない友人がほしいのだ。

「優ちゃんはいつも世話焼きだもん、気にしない」

「全く、世話の焼ける奴」

そんな僕と優ちゃんの会話を聞いて、市架が微笑んでいて、僕はそれが嬉しかった。


その日の八時頃。

優ちゃんは、自宅に帰宅した。

「なあ、市架?」

「はい、なんでしょう?」

「市架は言っていたよね、僕を縛りたくないって。でもね、今の見てわかっただろうけど、市架が僕を縛ってしまうように感じるように、僕は優ちゃんを縛ってしまっているように感じているはいる。だけど、優ちゃんは文句は言わないし、不器用な僕を率先して助けてくれる。その優しさに一度依存してしまえば、その依存はなかなか無くなるものではない。血の繋がりがない優ちゃんともそう言う友人関係になるんだもの、血縁だから頼ってよ。縛っているなんて言わないで、僕は君を望んで引き取ったんだから。

だから、気を遣う必要なんてないよ。頼りないかもしれないけど、僕に出来ることはするから、君の意見を聞かせてほしい」

そう言った後、しばらく沈黙が続いた。その沈黙は耐えきれないものではなく、とても穏やかなものだった。





初めまして、空野雪乃と言います。

「形のない愛ならば」を読んで頂きありがとうございます。

優ちゃん登場。

普段は落ち着いた感じの壱も、優ちゃんの前では甘えん坊な感じになります。

……BLではありませんよ?

ただ、優ちゃんに依存しているだけです。

「形のない愛ならば」これからも読んで頂ければ幸いです。それでは。

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