始まりの事件と出会い 03
久しぶりの投稿ですねー。
他のはちょこちょこ書いてたんですが。
「······目標の視認に成功」
ポツリ、と自らに言い聞かせるように呟く。
今回の任務は首都高速道路を走行中のバスにビルから飛び乗り、中にいるバスジャック犯を無力化することだ。
まったく、何故私がこんなことをしているのだろうか。こんなことなど科式の連中にでもやらせておけばいいものを、あの人は何を考えているのだろうか。
大体、私なんかが出なくてももっと適任もいたハズだ。
とはいえ、そんなに暢気に考えている時間はない。私は駒だ。あの人の駒でいい。余計なことは考えるな。感情など削ぎ落とせ。
そう、これでいい。
「任務、開始」
縁を蹴って跳躍する。腿のホルダーから軍用ナイフを抜く。ナイフを構え、天井を切り裂くと同時に屋根を蹴破って侵入する。
呆けているバスジャック犯の一人の頸動脈を切断し、その脇を通り過ぎて爆弾を持つ者へと向かう。途中にいた犯人の一人の顎を下から蹴り上げ、後方に倒れるのに合わせて喉を踏み砕く。何が起きたか分かっていない爆弾を巻き付けた男の子胸ぐらを掴んでから乗降口から外に蹴り出した。
「うぉぉおおっ!」
後ろにいた犯人の一人に、学生が取り付いていた。朝の学校から見てた奴······?
「っ! 伏せろ!」
気付いてから叫ぶが、遅かった。
突き落とした犯人の爆弾が爆発したのだ。衝撃で窓ガラスは吹き飛び、バスはコントロールを失って横転した。
*
「──あ、がはっ!?」
気が付いたら全身が痛い。一体何が? 思い出せ。
バスジャックが起きたんだ。それで、高速道路を走ってたら天井を突き破って誰かが入ってきて、爆弾を巻き付けた奴を外に突き落として、それをしたのが女の子だと気が付いて、その子が「伏せろ」って叫んだら······、あぁそうだ。思い出した。
大きな音と衝撃が来て、視界が乱れて、歪んで。多分、爆弾の爆発だったんだろう。
痛むからだに鞭を打ち立ち上がろうとして、失敗した。
「ぐぅっ······!」
体のあちこちの骨が折れている。折れた骨が直接神経を刺激してやがる。呼吸をするだけでも体が痛む。それでも、俺は叫ぶ。
「孝治、無事か······!?」
返事はない。気配が回りにない。あぁ、それでも。諦めてやるものかよ。
辛うじて無事な右腕で体を引き摺って動く。そして見つけた。見付けてしまった。
「──────あ」
覚悟はしていたつもりだった。
「──────あぁ」
それでも認めたくなかった。
「──────くそっ」
夢だと断じてしまいたかった。それでも。それでも出来ない。してはならない。それは、孝治を、孝治と過ごした日々を否定することになるから。
「チックショウがァァァァァァァァアアアアアアッ!」
俺は弱い。親友一人守れないのだから。