始まりの事件と出会い 02
バスジャック発生から一時間が経過し、バスは現在静岡県内の高速道路を西に走行中だ。
何やらヘリが追跡してきているようで、先程から音が聞こえている。恐らく報道のものだろう。
とにかく冷静に、現状を確認してみる。
犯人達が自ら垂れ流した情報によると、爆弾は巻き付けてる男のスイッチと、男自身の心停止によって起爆するらしい。もっとも、爆弾が本物でない可能性もあるが、確証出来ないため迂闊には動けない。同時に科式などによる暗殺が不可能であると言える。
そして男達の持つ武器。魔導具に関しての知識は無いのでなんとも言えないが、奴らの持つ銃火器は間違いなく本物だろう。天井に乱射しやがったし。
爆弾の男は運転手の隣に。他の男達はバス内を等分に並んでいる。
(全員を倒すのは無理。車内じゃ行動範囲も限られるし、爆弾の男にたどり着く前にスイッチを押されてアボンだ)
かといって考えても打開策が思い浮かぶわけではないので、現状手詰まりだ。
何かが起こることに期待しなければならない。
(それにしても、奴らの目的はなんだ? 仲間の解放……なんて言葉は聞いてない。それなら反社会的組織による犯行? それなら組織名を大々的に知らしめるハズ)
ますますもって分からない。聞いてみるのも一手だが、それで発砲されたりする可能性もある。どうにかして奴らから話し掛けてくる状況を作るべきか……。
チラリと横の孝治を見る。彼の横顔は、どこか諦めているような、それでいて恐怖するような表情をしていた。
他の乗客も、似たような感じだ。
「おい、小僧」
突然近くにいた男が声をかけてきた。
「……俺ですか?」
「そう、お前だ」
まさか向こうから話し掛けてくるとは思わなかった。
「お前、何か言いたいことがあるんだろ?」
予想外の言葉に体が強張る。
「おんやぁ? どうして分かったのかって? それは俺が昔心理学をかじってたからだよ!」
「……、何故、こんなことを?」
それだけしか言えなかった。だが、それが一番聞きたかったことだ。
「んなもん決まってるだろ。そこにバスがあるからだ!」
爆弾を巻き付けている男が言った。
……つまりあれか? そんな下らない理由で、大した理由もなく、俺達はこんな危険な目にあっているとでもいうのか?
(ふざけんじゃねぇぞ!)
そう叫びたいのを唇を噛んで抑え込む。
畜生、俺があんなことを聞いたせいで乗客の雰囲気がさらに暗くなっちまった。中には泣いてる子もいる。
頼むから早く解決策を見つけてくれ、科式。
そんな願い虚しく時間だけが過ぎていく。
そして、それから数十分たった頃だった。
ズガァン! と音を立ててバスの天井を突き破って誰かが侵入してきたのは。
次回、ヒロインが出ます。たぶん