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始まりの事件と出会い 01

続けて投稿

 ピピピピ、ピピピピ、と音を撒き散らす目覚ましを乱暴に止め、まだ眠い眼を擦る。名残惜しいが、まだ睡眠を欲する体に鞭を打ち、ベッドを後にする。


 洗面所で顔を洗ってからジャージに着替える。現在時刻は午前五時半。

「おはよう、父さん、母さん」

 仏壇に線香を供え、手を合わせてから家を出る。


 まずはジョギングから始め、距離にして約15km走る。そのあと公園で型に沿った動きを確かめながら行う。拳や掌打、足技などを一通り行ったら、今度は父さんに貰った本の内容を思い出しながら技を繰り出す。

 基礎的な動きは問題ないが、未だ技という技が成功したことはない。


「ふぅ。大体さ、拳に炎や雷を纏うってなんだよ」

 ついそう漏らしてしまう。いや、ふざけてるわけじゃない。本当にそう書いてあったんだから。

 ただ、瞬歩という特殊な歩法はある程度出来るようにはなった。瞬動、あるいは縮地とも言う技術だ。もっとも、完璧に扱えるわけじゃない。

 俺はあくまで『なんとなく』で扱っている。一般人には十分通じるが、達人と呼ばれる人々には足元にも及ばない。大体、成功したのだってまぐれに等しいのだ。


 不思議パワーでもあるのだろうか。いや、この流派の創始者は不思議パワーを持っていたに違いない。

 普通の人間の俺には無理なんだろうな。でも、父さんの言いつけを守って、ここまで続けてきた。だから。

「諦めるわけにはいかねぇよなぁ……」


 それに、ここまで続けてきたんだ。今さら止めるのも勿体無い。

 そう思ってこれまで続けてきた。


 朝の鍛練が終わって自宅に戻る。汗を流してから適当に朝食を済ませて制服に着替える。

「お、メール……叔母さん、今日も帰ってこないか」


 今の俺の唯一の家族と呼べる人だ。母の妹で、仕事は研究者だと言っていた。そして月に一度帰ってくるかどうかという人物だ。

 その分、金銭的な支援はちゃんとしてくれているので問題ないと言えば問題ないのだが。


 家を出る前にもう一度仏壇に手を合わせてから登校する。

 バスに乗り、空いている席に座る。しばらく揺られて、学校に着く。


「おはよう」

「あぁ、おはよう」

 下駄箱でクラスメイトと挨拶し、教室に向かう。

 自分の席に座り、必要なものを鞄から出す。

 そして窓際の席から、頬杖をついて外を見下ろす。


「……ん?」

 ふと、ある一人に視線が止まる。ほんのりと青い黒髪で、見たことのない制服の女生徒。この辺りの学校の制服は大体知っているのに、見たこともない制服だったことに疑問を持った。

 この辺りでないなら、今の時間なら確実に遅刻だろう。

 そのまま視線で追っていると、彼女が立ち止まった。


「っ!?」


 見た。こっちを見た。明らかにこっちを見た。

 思わず立ち上がってしまった。周囲のクラスメイトの視線が集まっているのが分かる。一度教室を見渡してから、何もないと装うように座り直した。


 再び窓の外に視線を戻すと、彼女はいなかった。

「……、脚、速いのかな」

 そんなことを呟いた。


 *


 放課後になっても、朝見た彼女のことが気になっていた……が、なんの手がかりもないため、内心諦めていた。

「ま、顔も知らねぇしな」


 荷物を持って教室を出る。

 今日は帰ったら何をしようか。正確にはどんな訓練をするか、だが。暇さえあればそればかりしてきたので、思えば友達と呼べる人間は……。


「よう、一緒に帰らね?」

 いた。森矢 孝治、小学校からの友人。もはや唯一と言っていい。

「つっても、バス乗るだけだろ?」

「そう味気ないこと言うなよ。俺のぼっち脱却計画を実行しないお前に対する嫌がらせだよ」

「誰があんなの実行するか」

 悪ふざけというか、なんというか。中二病か! と思わず叫びそうになったりもした。


「しかしよ、お前も俺以外の友達作れよ。てか修業ばっかしてないでもっと遊ぼうぜ」

「いや、なぁ? 技を一つ極めるのだって、年単位でかかるんだ。今手を抜くわけにはいかねぇんだよ」

「まぁ、一日休んだら取り戻すのに三日かかるって言うしな」


 そんなことを話ながらバスに乗り、二人並んで座る。こんなだからおホモだち疑惑が浮上するのかねぇ。でも、否定しようにも否定する相手がいない俺はどうすればいいんだろうか。

「てかさ、お前の流派ってなんなの? ずっと気になってたんだけど」

「ん? 言ったことなかったっけ」

「ない」

「そうだったか。父さんが言うには、『八卦剛拳』っていうらしい」

「聞いたことないな。でも八卦っていうくらいだから中国発祥かな?」

「さぁ?」


 バス停に止まって扉が開いてすぐのことだった。

 乗り込んできたのは覆面の男達計五人。小突撃銃(アサルトライフル)や光剣などの魔導具、さらに最後に入ってきた男は体中に爆弾を巻き付けている。


「高速にのって西に向かえ、いいな!?」

 運転手を拳銃で脅し、さらに叫ぶ。

「このバスは俺達がジャックした!」


「おいおいマジかよ……」

 そう呟くことしか出来なかった。

次回、ヒロインが出たらいいな。

主人公の名前は出ませんが。

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