ギルドの片隅にて
ギルドとは、冒険者が、金のために集まる場所である。
掲示板に張り出されたクエスト|(魔物を倒したり、薬草をつんだり、子守をしたり)を受注して、達成し、お金をもらう。
ちなみにそのギルドの中枢を担う、0~10番隊によって、治安は維持されている。
よって貴族のお坊ちゃまが来ても安心してお小遣いを稼げるという仕組みだ。――もちろん、その人のレベルによって受注できるクエストは異なるが。
そして、たいていギルドは酒場にある。
その酒場の隅の席で、一人の少年とお爺ちゃんが喋っていた。
「へぇ~。つまり、王の命で、世界最強と言われる…0番隊隊長?が学校にいく事になったわけかー。
ていうか、若いんだねー!その0番隊隊長。」
お爺ちゃんは、何かを小さくつぶやく。
「あぁ、で、その事で、あの二人は対立していたわけね。0番隊隊長って人気なんだなぁ。ま!男に好かれたいとは思わないだろうけどー?」
少年は笑った。
「にしても~、あの大男はギルドマスター、あの少年は2番隊隊長かぁ。
世も末ですねぇ!!」
治安を正すはずの隊が、治安を乱してどうするのか。
神のみぞ知る、いや神すら呆れて何も思っていないだろう。
本当に世も末だ。
少年はそこまで考えて、自分には関係ないと思考を打ち切った。
だって世の中が終わっているなんて、当たり前のことじゃないか。
「ね、お爺ちゃん。」
同意を求めて、少年はお爺ちゃんに笑いかけた。
お爺ちゃんは、少年の机を挟んで前に座っている、白い髭と髪を生やしたしわくちゃなお爺ちゃんだ。
優しそうな、それでいて精悍な顔つきである。
「フォフォフォ…フォフォフォフォフォフォフォフォ。」
だが、何故だか狂ったように笑い続けていた。
よだれをたらして、頬を緩めて、気色悪いほどに幸せそうだ。
ただし顔から血の気が無い。
誰がどう見たって、様子がおかしいのは明白だった。
しかし、現在酒場には酒場の前で争っている二人に目を取られ、こちらは誰も見ていないので騒がれることは無いのだ。
「どうしたのー?笑いすぎじゃない?」
「フォフォフォフォフォフォフォフォォォオオオオ…ごほっげほっっっっ!!」
「ほらーむせるー。」
少年はいっぱいの水をお爺ちゃんにわたした。
お爺ちゃんはそれを一気にあおる。
「ブッハァァあああ!!……は……て?眠く…。」
ばたんっ!!!
と、おじいちゃんは机に突っ伏し、そのままz~z~と寝てしまった。
もちろん誰も見ていないが。
少年は静かに椅子から立ちあり、お爺ちゃんに一言
「色々教えてくれてアリガトね?」
と囁いてから、酒場を出た。
その片手には白い粉を持っていたという。




