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汝、大罪人なり  作者: にんにく
2/7

千年後


それから千年の時日がたった。


藁や日干しれんが、布などで作られていた家々は最早どこにも無く、綿密な魔術式から作られた邸宅がそこらじゅうに出来た時代。

もちろん昔のような集落は村になり、都市になり、国になった。


国には信じられないような人数の、いろんな種族が集まる。

白や黒の肌を持つ人間や、獣と人を掛け合わせた獣人、森の精霊により作られたエルフやドワーフ。

みんなが活き活きと、自分の国で楽しそうに生活している。


そんな中に一人、紅いピアスをはめた少年が居た。

楽しそうに口笛を吹きながら、にぎやかな大国の大通りを歩いている。


「ふっふふ~。あ、ここだ。」


ふと少年は、大通り沿いの小さな酒場を前に立ち止まった。

随分古いようだが風情がある酒場だ。


看板には大きく‘ギルド’と書かれていた。


「まだあったとは。素晴らしい!」


パンッと手をたたく。

一言賞賛。

そして酒場に足を踏み入れ――――ようとして、左にサッとよけた。


その少年の横を、酒場のドアを巻き込んで大男が


吹っ飛んできた。


「うをッッッ!!」


ズザザザザザ…と、地面をすりながらようやく止まった。


頭を血だらけにし、痛さのあまりにうずくまっている。

ぷるぷると震えていた。


しかし、やがて顔を上げて叫び始める。


「てんめぇ!!ふざけんじゃねぇ!!」


大男のそこら中に響く威圧的な声。

なにより大男自身の全身甲冑の格好が、それを更にあげていた。

最早、少々滑稽なぐらいに、コッテコテの重装備である。


「うるさいですよ。」


だが、それをものともしない冷静な声が酒場の中から聞こえる。


「むしろふざけんな、はこっちですから。」


そう言って、のそりと酒場から出てきた男は、まだ少年といっても差し支えないほど若い男だった。

だが、その雰囲気は圧倒的である。

なにしろ、あまり大きな声を出していないというのに、周りからは注目を集めている。

ざわ…ざわ……と二人の周りに、通りがかった人が集まっていた。


だが、二人はそれを気にも留めていないよう喧嘩腰で話し続ける。


「勝手にあんな事決めて、許されると思ってるんですか?」

「許すも何も王様の命だろうが!!」

「それを承認したのは貴方でしょうが。」

「んなもん、拒否したらどうなると思ってるんだ!!」

「そんなんだから王の犬なんて呼ばれているんですよ。」

「あ゛ぁん!?」


一発触発。まさしくそんな気配だった。


だが、いつもなら野次馬のひとつやふたつ飛ばしそうな場面だが、周りの人たちは何も言わない。

それどころか崇拝している気配すらあった。


どうゆうこと?と、少年は首をかしげたが、誰もそれに答えてくれる人はいなかった。


「よく分かんないなー…。まぁいっか。」


少年は二人の横をとおり、酒場に入った。

もちろん二人はそれに気づかない。


気づかない。


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