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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

まだ、始まらない物語(前編)

作者: Anemone

『......ス……リスッ』



遠くで呼ぶ声がする。

叫んでいるのは誰?私はどこにいるの?

息がしずらくて、重い瞼を開けるとそこは暗いくらい穴の中。ランプに火が灯り、本も鏡も宙に浮いている…いや、落ちているのか。

あれ、それって私も…


「きゃあああああああああああああ!!」




落ちてるじゃないの!!!


浮遊感に吐きそうになりながら地面ぶつかるような気がして目を瞑ったけど、一向に私の身体は地面に叩きつけられなかった。恐る恐る目を開けるとそこは部屋のようだった。私は起き上がり部屋を見回した。部屋は扉がなく、真ん中にテーブルがあるだけ。テーブルに近づくと緑の液体が入ったビンがある。


【drink me】か…。何を思ったのか私はそのビンの中身を少し飲んだ。


「ん…熱い」



急激に身体が熱くなり、私はみるみるうちに小さくなった。辺りを見回すと小さなドアがあった。そうか、小さくならないとこのドアは見えないわね。ドアノブをひねるが開かないので鍵を探すと、あのテーブルからはみ出して鍵がみえる。あれは私のジャンプ力でも無理ね。ふと辺りを見渡すと、そばに【Eat Me】とかかれたクッキーが皿に乗せられ、地面に置かれていた。



もしかしてこれを食べたら大きくなるのかしら?

恐る恐るクッキーをひとかじりすると、頭がふわふわしたかと思えば、みるみるうちにからだが大きくなって…


「…って、さすがにこれは大きくなりすぎよ!」



頭が天井にあたり、首をひねらないと天井をぶちぬくくらい成長してしまい、ひどく不恰好な体制になった。


「仕方ない、鍵をとってもう一度小さくならなきゃ」


行儀は悪いが足下にある小さなテーブルにある小瓶と鍵を取り上げ、小瓶の中身を飲み干した。すると、みるみるうちに小さくなり先程の扉の前にたった。



「これを差し込めばいいのね」



祈る気持ちで鍵を鍵穴に差し込み回すと、小さくガチャッという音がした。


「やった!!」



私はすぐにドアノブを回し、勢いよく外へでた。




「どこ…ここ?」


目の前に広がる風景は見慣れた家の庭でもなく変わった…すごく変わった景色だった。

空は一面薄い紫で歪な形のショッキングピンクの雲が浮かんでいて、目の前にはオレンジ色の湖に、エメラルドグリーンのアヒルが泳いでいた。



「なんなのここ…」


パニックになりそうな頭を落ち着けようととあえず辺りを見回ろうと足を踏み出した瞬間、カチャリと耳の近くで音が鳴った。



「動くな」



少年期特有の少し掠れたソプラノの声が私の動きを止めた。そして、私は気づくのだ。頭のすぐそばにあるものの存在に。



「お前、…誰だ?」


警戒を解くことなく、少年は問おてきた。

私は答えようと口を動かすが、声が掠れて上手く喋れなかった。額に冷や汗をかきながら、私は体を震わせないようにするので精一杯だった。だって、銃口が私の頭につきつけられているんだもの。



「…っち、そのまま、こっち向け。いいか、何もするなよ。不審な動きをしたら打つ」



銃口を私の頭に当てたまま、少年は私の肩を掴み振り向かせる。私は振り向くと、少年を恐る恐る一瞥した。真っ直ぐに私を射抜くように見ていた青い目の少年はこれでもかというくらい目を見開き、銃を下ろした。


金髪のショートヘアに青い真ん丸の目をした彼は水兵のような格好をして、頭にウサギの耳を生やしていた。あえて触れずに私は、彼を見つめていると



「……アリス?」


と泣きそうな声で呟いた。



「なに?アリス?」

「アリス!!」

「…え!?きゃあっ」



突然少年に抱きつかれ、私はバランスを崩し地面に尻餅をついたが、少年はそれでも離してくれそうになかった。むしろその逆で痛いくらいに私を抱き締めた。


「っ…あのー?」



私が声をかけると、さっきまで銃をつきつけていた人とは思えないほどだらしのない笑みを浮かべていた。


「あ、急に抱きついてごめんね!久しぶりにアリスに会えたから嬉しくて、体が先に反応しちゃった!」

「いや、あの…」

「だって、あまりにながかったんだもん。もう待ちくたびれるとこだったんだからね」



頬を赤く染め、恥じらいながらも一気に話す彼に私はどう答えようか迷っていた。しかし、そんな私の反応に彼は眉を寄せ不思議そうに顔を覗きこんできた。



「アリス…?」

「私は、アリスじゃないわ」

「え…」

「ごめんなさい、私はあなたが待っているアリスなんて人じゃないの」

「どういう…あ、ちょっと!」



私は少年から離れ、すぐに立ち上がり踵をかえそうとしたが、慌てて少年に腕をひかれ、結局また尻餅をついた。


「ちょっ何!?」

「お願い、待ってよアリス」

「だから私はアリスじゃない…」

「じゃあ、君の名前はなんなの」

「私はー、」



あれ



「私はー、」





一体誰なんだろう。



お久しぶりです。anemoneです。なんだか

気づけば季節が巡りますね。

今回は初短編を書きました。前編後編に

別れております。

不思議の国をアレンジした内容ですかね?

楽しんでもらえたら幸いです。

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