自己紹介
「寄ってらっしゃい見てらっしゃ~い」
手拍子。
「今から今世紀最大の大手品を始めるよ~」
観客。
「今見てかないと損だよお~」
ざわめき。
「おっとぉ、その前にこのカバンに銭を放り込んで頂戴~。十分貯まったらやってやんよ~」
帰宅。
「おっとぉ~?皆どうしたんだい?見たくないのかい~?」
さらに帰宅。
「なんだなんだい~。みんな帰っちまって~。いつからこんなご時世になっちまったんだい~」
夕暮れの商店街。
「ん?」
小銭の音。
「おお、お客さんかい?」
「何してんだ。オッサン」
舌打ち。
「なんだ。君かね。だったらこんな銭はいらないよ。札なら別だが」
「またつまらないイカサマで稼いでるのか?」
「これが稼げてる様に見えるかね?」
ため息。
「もうちょっと簡単かと思ったが、もうあの時代とは違うのか」
「『銭』とか言ってる時点で下心丸出しに聞こえてるよ」
またため息。そして胡座。
「また部活とやらをサボったのかね?」
「サボってない。行くのが嫌なだけ」
一方も胡座。
「君は『てにす』とやらが達者なんだろう?何故それを極めんとしない」
「面倒くさいんだ。僕はオッサンと違って飽き性だからね。自分で言うのもなんだけど」
「私も飽きっぽいぞ」
「この手の『銭稼ぎ』、もう14回目だぜ」
鴉。
「そうか」
「何故ドヤ顔でこっちを見る」
ドン引き。
「君と出会ってまだ僅かだが、これほどまでに気が会う者とは思わなかったぞ?」
「気が合ってるのかどうかはしらないが、とにかくその恥ずかしい格好を止めてくれないか」
白のタンクトップ。黒の長帽子。花柄の海水パンツ。
「ふむ。似合ってるだろう?」
「気づけよ変態。いや變態野郎」
「読者には『變態』の読み方も分からないんじゃないのか?」
「オッサンよ。今は『グーグル』という素晴らしい機能があるんだぜ」
「ぐーぐる?なにかの水泳道具か?」
「それ『ゴーグル』な」
茶番。
「さて。私はそろそろお愛想といこうかな」
「ここは寿司屋か」
「駿河君。お愛想とは元々『つまらなくてすまんかった』という意味なのだぞ?みろ。『ごーぐる』などなくても、現代社会人の揚げ足を取ることができるのだ!」
「そこは『グーグル』な」
揚げ足返し。
「そろそろ暗くなってきたな。駿河君、気を付けて帰るんだぞ?じゃの」
と言ってオジサンは商店街の影に消えて行った。
去っていった、ではなく『消えていった』のである。
「変なオッサンだなあ」
一区切り。
さて読者のみなさん。僕の名前は『駿河 蓮』。『するがれん』と読みます。高校二年です。しかもなりたてです。この作品の語り手兼主人公だそうです。ポケモン大好きです。作者もポケモン大好きですけどどうでもいいですね(笑)
さっきのオジサンは最近出会ったオッサンです。今からすごい事言うので馬鹿にしないでくださいね。
あの人は江戸時代から来たそうです。
ええ、わかってます、わかってますとも。読者の皆さん。ここは堪えてください。どうしても堪えられないのなら、そこにサンドバックを置いているのでそれを使って下さい。
正確には『江戸時代に生まれて何年か生きたあと、平成の時代まで寝ていた』らしいです。
嘘っぽいですね。そりゃそうです。
まあ、この『嘘』と思っていることが本当に『嘘』なのか、それを証明するのがこの作品の醍醐味だと思います、と作者は言っています。
ところで、前回に語り手を務めていた人と僕は別人です。別人という言い方ではおかしくなるのですが。あの人は『僕の裏の顔』です。たぶん。会ったことがないので分かりませんが、僕の『悪』の部分そのものです。実際、僕は死んだクラスメートの友達でした。数少ない友達でした。もしかしたら友達だった『つもり』なのかもしれませんが、そう思いたくありません。いや、『想う』ことは出来ないでしょう。
僕、ではなくオッサンは、『僕の裏の顔』とも言える『人物』のことを『惡祇』と呼んでいます。僕も習ってそう言っています。何故オッサンが『惡祇』とか、僕の『裏の顔』を知っているのかは知りませんが。惡祇は、生まれた瞬間の人間に自動的に憑依して『呪い』を掛けることがあります。『呪い』を掛けられた人間は普通では有り得ない体を手にしてしまうのです。『手に入れる』のではなく、『手にいれてしまう』のだそうです。その呪いは『惡祇』を消すまでは消えないそうです。あくまで信じちゃいませんが。
あんな馬鹿げた態度のオッサンですが、アレでも目的があって行動しています。
『惡祇』を退治すること。対峙すること。それがオッサンの『仕事』と聞きました。
惡祇には居てもいい存在と、居てはいけない存在があるそうです。簡単に言えば『無害』と『有害』です。『有害』という存在の厄介なところだそうです。
ちなみに。
僕も『呪い』掛けられています。いや、いるそうです。実際よく分かりませんが、オッサンから見ると人目で分かるらしいです。まだ教えられませんが。理由は『物語の進行に影響が出るから』だそうです。知りませんよね?そんなの。
まあ、ここで『お愛想』させていただきましょう。それでは。