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役立たずの【種子生成】スキルで追放されたので、辺境でもふもふドラゴンと自由に生きることにした  作者: はぶさん


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第七話 料理人の城と、魔法の煙 第2部『燻製小屋と、奇跡の素材』


翌日から、僕たちの郷では二つの大きな計画が同時に始動した。一つは、ガラクの城となる「厨房」の設計。もう一つは、食文化に革命を起こす「燻製小屋」の建造だ。


「燻製に使う煙は、材料となる木によって香りが全く違うんだ。確か……桜や林檎、あとは胡桃なんかの木が、甘くて豊かな香りを生み出す最高の『燻煙材』になるはずなんだけど……」

僕の前世の記憶を頼りに、僕たちは森の中を歩き回った。だが、この世界の森の生態系は、僕が知るそれとは微妙に異なっている。似た葉や幹を持つ木は見つかるものの、これぞという決定的な香りの木は、なかなか見つからなかった。


「くそっ、見つからねえ……!」

ガラクは、誰よりも熱心に木々の匂いを嗅ぎ、幹を調べていたが、理想の木が見つからないことに、苛立ちを隠せないでいた。

「せっかくシルヴァンが最高の知恵を教えてくれたってのに、肝心の材料がなきゃ、宝の持ち腐れだ。俺の夢も、ベーコンとやらも、ただの夢物語で終わっちまう……」

悔しそうに地面を蹴るガラクの姿に、僕の胸が痛んだ。彼の夢を、絶対にここで終わらせたくない。


(最高の料理人であるガラクが、最高の燻製を作るためには、最高の香りが必要なんだ……!)

(僕のスキルで、ガラクの夢を、みんなの美味しい笑顔を、叶える手伝いがしたい……!)


その強い願いが、再び僕のスキルを新たな次元へと押し上げた。

【種子生成】の力が、僕の意思に応えるように、体の奥深くから湧き上がってくる。手のひらに意識を集中させると、淡い虹色の光と共に、これまでで最も大きく、そして生命力に満ち溢れた一粒の種が現れた。その種は、僕が知る「桜」の種と、寸分違わぬ姿をしていた。


「ガラク、見てくれ!」

僕がその奇跡の種を見せると、ガラクは目を丸くした。

これを育てるのは、もちろんコハクの役目だ。【豊穣の息吹】をたっぷりと浴びた桜の種は、数時間のうちに力強く芽吹き、夕方になる頃には、燻製に使うのに十分な太さの枝を、天に向かって伸ばしていた。


最高の燻煙材は、手に入った。だが、燻製作りには、もう一つ、重要な工程がある。肉を腐らせずに熟成させるための、「塩漬け」と「乾燥」だ。それには、涼しく、一定の温度が保たれた場所が不可欠だった。


「涼しい場所、ねえ……」

僕たちが頭を悩ませていると、それまで黙って話を聞いていたハグレが、おもむろに立ち上がった。彼女は、僕たちの家の壁際の、日が当たらない一角へと歩いていくと、その壁に向かって、ふぅー、と長く、白い息を吐きかけた。


それは、ただの息ではなかった。【水の導き】のスキルを応用した、極低温の冷気。

ハグレが息を吹きかけた場所から、壁と地面が、まるで冬のように、美しい霜の結晶で覆われていく。洞窟の一角が、あっという間に、ひんやりとした空気に満たされた天然の「氷室」へと姿を変えたのだ!


「ハグレ、君、すごいよ……!(ただ植物の成長を促すだけじゃない。彼女のスキルも、僕と同じように、仲間を想う心で、新しい可能性の扉を開いたんだ……!)」

僕が駆け寄って頭を撫でると、彼女は「ふしゅん」とそっぽを向きながらも、その尻尾を嬉しそうに小さく揺らしていた。彼女の力なくして、最高の塩漬け肉は完成しない。彼女もまた、この郷に不可欠な、最高の仲間だった。


最高の素材(桜の木)と、最高の環境(氷室)。

全てが整った。あとは、職人たちの出番だ。

ズボラと僕は顔を見合わせると、燻製小屋を建てるべく、ドワーフの斧を手に取ったのだった。



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