表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
役立たずの【種子生成】スキルで追放されたので、辺境でもふもふドラゴンと自由に生きることにした  作者: はぶさん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/46

第四話 不器用な戦士と、希望の種 第3部『師の言葉と、始まりの一歩』


翌日、僕たちとオークの一団は、郷の隣に切り拓かれた小さな土地の前に立っていた。

ズボラが、昨日僕から受け取った希望の種を、祈るようにそっと土に埋める。

「コハク、ハグレ、お願いだ」

僕の言葉に、二匹が頷くように小さく鳴いた。


コハクが「あうー!」と一声鳴くと、温かい光の息吹が大地を包み込み、土はみるみるうちに生命力に満ちたものへと変わっていく。続いてハグレが、その土へと清らかな水を注ぐと、オークたちから「おお……!」というどよめきが上がった。

種が植えられた場所から、淡い緑色の光が放たれたかと思うと、一本の芽が力強く顔を出し、まるで天に手を伸ばすかのように、ぐんぐん伸び始めたのだ。戦士である彼らが、生涯で初めて目にする、静かで、しかし何よりも力強い奇跡の光景だった。


木が彫刻に使える太さに育つまでの数日間、僕とズボラのささやかな師弟関係が始まった。

僕は彼に、ドワーフの斧を貸し与え、父に教わった斧の扱い方と、前世で得た木の知識を、惜しみなく伝えた。


「力を込めるんじゃない。斧の重さを利用して、刃を滑らせるんだ」

「木には『目』がある。その流れに逆らわずに刃を入れれば、木は君に応えてくれるはずだ」

そして、何よりも伝えたかったことを、僕は彼の目を見て、はっきりと告げた。

「ズボラくん。君のその繊細さは、誰にも真似できない、かけがえのない力なんだ。誇っていい」


ズボラは、初めて得た「師」の言葉を、一つも聞き漏らすまいと、真剣な眼差しで聞き入っていた。


そして、運命の日が訪れる。

木は、大人の腕ほどの太さにまで成長していた。僕がその一本を切り出し、ズボラの前に差し出す。

彼は、ゴクリと喉を鳴らし、師である僕の言葉と、友であるドワーフの斧を手に、初めてその柔らかい木材へと向き合った。


森の誰もが、息を呑んで彼を見守っている。

ズボラは、震える手で、斧を構えた。そして、師の教えを胸に、そっと刃を木肌に当てる。


サクッ……。


洞窟に、信じられないほど軽やかで、心地よい音が響いた。

硬い木に、ただただ跳ね返されてきた彼の力が、初めて、彼の意のままに木へと伝わっていく。

ズボラの目から、一筋の涙がこぼれ落ちた。

彼は、まだ何も完成させていない。ただ、ほんの少し、木を削っただけだ。

けれど、そのたった一削りで生まれた、なめらかで、美しく、自分の意志が完璧に反映された削り跡を見て、すべてを理解したのだ。


「……彫れる」


彼の唇から、か細い、だが確かな歓喜の声が漏れた。


「僕にも、彫れるんだ……!」


それは、"ガラクタ"と呼ばれた一人のオークが、初めて自分の才能を信じることができた感動的な瞬間であり、僕たちの郷が、また一つ、新たな輝きを手に入れた瞬間でもあった。




---


ここまでお付き合いいただき、本当にありがとうございます!皆さんの感想や、フォロー・お気に入り登録が、何よりの励みになります。これからも、この物語を一緒に楽しんでいただけたら幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ