第四話 不器用な戦士と、希望の種 第2部『オークの嘆きと、"ガラクタ"の細工師』
リーダー格のオーク――ドガと名乗った彼は、僕たちの前で訥々と事情を語り始めた。
彼らの一族は、代々「力の強さ」こそを誇りとしてきた戦士の部族。しかし今、族長の妻が重い病に倒れ、古の言い伝えに従い、病を癒すための「守り神の木像」を彫る必要に迫られているのだという。
「だが……俺たちはこの通り、戦しか能がねぇ。木を握れば砕き、ノミを当てれば木材ごと叩き割っちまう……。森の木々を傷つけちまったのも、全部俺たちの仕業だ。すまねぇ……」
ドガは、その巨体を恥じ入るように縮こませた。
そして、彼はおずおずと、背後に隠れていた一人の若いオークを僕たちの前に促す。
「こいつは、ズボラ。俺の弟だ」
ズボラと呼ばれたオークは、兄であるドガと比べると一回りも二回りも体が小さく、戦士というよりは、どこか気弱な職人のような雰囲気を漂わせている。
「こいつは、昔から変わっててよ。戦の稽古は嫌いだが、石ころや木切れを拾ってきては、一日中何かをいじってる。オークとしては……まあ、周りからは"ガラクタ"なんて呼ばれちまってるが……」
ドガは、苦々しげにそう付け加えた。
ズボラは悲しそうに顔を伏せたまま、震える手で、懐から布に包まれた何かを取り出し、そっと僕の前に差し出した。
それは、砕けた木彫りのカケラだった。昨日僕が森で見つけたものよりも、さらに精巧な細工が施されている。鳥の翼の一部だろうか、一枚一枚の羽根の柔らかな質感までが見事に表現されていた。
「……本当は、美しい鳥を彫りたかった。母ちゃんに、見せてやりたかったんだ。でも、力が足りねぇし、この森の木は硬すぎて……俺の手じゃ、いつもこうなっちまう」
その純粋な願いと、自分の無力さに打ちひしがれる姿。
僕は、ズボラの中に、スキルを「役立たず」と罵られた、かつての自分を重ねていた。
(そうだ、彼は何も悪くない。ただ、この世界が、力が全てだと決めつけているだけだ。彼のその繊細な指先は、誰にも真似できない、最高の才能じゃないか)
「(彼が、彼自身の力で輝くための手伝いをしたい!)」
僕の心からの強い願いが、体内のスキルと共鳴した。胸の奥が、カッと熱くなる。
【種子生成】のスキルが、仲間との絆に呼応し、新たな段階へと解放されたのだ!
僕が手のひらに意識を集中させると、今までとは違う、淡い虹色の光と共に、少し大きめの種が現れた。
「ズボラくん。君のその手なら、きっとできるよ」
僕は、その種を彼の前に差し出した。
「この種を育てれば、君の力でも、まるで粘土のように彫刻ができる、特別な木が手に入るはずだ」
ドガたち他のオークは、あまりに小さなその種を前に、戸惑いの表情を浮かべている。
だが、ズボラだけは違った。
彼は、僕の手のひらに乗せられた一粒の種を、まるで壊れ物を扱うかのように、震える指先でそっと受け取った。その瞳には、今まで浮かべていた諦めとは違う、確かな光が宿っていた。
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