第四話 不器用な戦士と、希望の種 第1部『壁作りの一日と、夜の訪問者』
僕たちの最初の城に、壁が作られていく。
前世の記憶を頼りに僕が提案したのは、この森の粘土と枯れ草の茎を混ぜて作る、伝統的な土壁だった。ガラクが「おおっ、団子作りみたいで面白いな!」と楽しげに土をこね、コハクがその息吹で枯れ草に不思議な活力を与え、しなやかで丈夫な素材に変えてくれる。そして、ハグレが爪先から湧き出す清らかな水で、土の硬さを絶妙に調整してくれた。
四人の共同作業は、もはや阿吽の呼吸。日が高くなる頃には、家の片側の壁が、早くも腰の高さにまで積み上がっていた。
昼食は、ガラクが残った野菜で作ってくれた、平焼きパン。自分たちの手で、自分たちの家を建て、美味しいものを囲んで笑い合う。郷での生活は、日に日に豊かで、かけがえのないものになっていった。
午後、壁の材料にするための丈夫な蔓を探しに、僕たちは先日、オークたちの伏線となる奇妙な光景を目にした場所の、さらに奥へと足を踏み入れた。そこには、さらに多くの痛々しい傷跡を残す木々と共に、何かの残骸が転がっている。
「これって……木彫り?」
僕が拾い上げたのは、無残に砕け散った木片だった。だが、その表面には、かろうじて鳥の羽らしき、驚くほど繊細な彫り跡が残されている。
「これは獣の仕業じゃない。誰かが、何かを作ろうとして……失敗した跡だ」
そのあまりにも不器用な失敗の跡に、僕はなぜか胸を締め付けられた。何かを成し遂げたいのに、力が及ばない。そのもどかしさが、痛いほど伝わってくるようだった。
その夜、完成したばかりの壁のおかげで、洞窟の奥から吹き込んできていた風が和らぎ、僕たちの食卓はこれまでになく快適だった。
だが、食事の途中、それまで行儀よくガラクの料理を待っていたコハクとハグレが、同時に森の闇に向かって、低く唸り声をあげた。
「ど、どうしたんだ、二人とも?」
ガラクが怯えてフライパンを盾のように構える。僕も、すぐそばに立てかけておいたドワーフの斧に、そっと手を伸ばした。さっきまでの平穏な空気が、一瞬にして張り詰めたものに変わる。
ザッ……ザッ……。
森の闇の中から、複数の何者かが、ゆっくりと枝を踏みしめて近づいてくる。
やがて、月明かりの下にその巨大な影が姿を現した。鋭い牙、屈強な体躯。それは、紛れもなくオークの一団だった。
僕が戦闘を覚悟し、斧を握りしめた、その時。リーダー格のオークが、その屈強な見た目にはまったく似合わない、まるで迷子の子供のような、情けない顔で深々と頭を下げた。
「た、頼む……!俺たちを、助けてくれ……!」
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