長雨の恐怖
これは、読んでて怖くはないけど、後でゾゾー!と来る話。
少しでも関連あるようだと背筋凍るよ(笑)
梅雨は過ぎたというのに、まだ雨雲が居座っている。
一昨日からこっち、雨の途切れる時間がまったくないようで、三日間の合計降水量は、もう500mmを超えていると、お昼の情報番組内で特集されているほど。
俺の住んでる地域は、都会とは微妙に離れてる、田舎とも都会とも言えないベッドタウン地域。
都会と違い、車やバイク等の足がないと、買い物に出るにも、都会に出るにも困ってしまうような、交通過疎地域。
昔は地域の循環バスとかが結構な本数で地元民の足を確保していたが、その数年で循環バスへの補正予算も削られてしまい、一日一往復という馬鹿げた本数になってしまった。
とりあえず、俺の家には、小型二輪と軽自動車が、それぞれ中古ではあるが現役で一台づつあるため、買い物や都会へのアクセス手段には困っていない。
困ってはいないが、この長雨でバイクなど出せないし、もっぱら軽自動車が主な買い物や通院、仕事場へのアクセ手段となっている。
「はぁ……滅入るなぁ……こうも長雨・豪雨が続くと、それはそれで困るんだよなぁ……」
俺の職業柄、月に十日ほどの雨なら大歓迎、晴れたら晴れたで別の方の職業で大歓迎というところなんであるが……
あまりの豪雨が長期に渡ると、それはそれで職業柄、別の心配に。
そう思っていると、携帯電話の呼び出し音。
何処から?
と見ると、その別職業の方の会社から、久方ぶりに連絡。
電話に出て、要件を聞いてみると……
「……ってわけでね。久々だけど、ちょいと遠くの山へ、この長雨で設備に異変がないか調査してくれって。どう?明後日だけど、都合の方は大丈夫かな?」
急な日程だけど、俺なら受けられる。
そう返事すると、
「じゃあ、ちょいと現場まで遠いんで、朝八時までに事務所へ。そこで相乗りで現場へ向かうから」
はぁ……いつものことながら、こっちの起床時間が5時台になるのもお構い無しなんだよなぁ……まあ、そのぶん、こっちも日当を高めに請求してるんだけど。
ということで、当日は朝の五時起床で、眠い目こすりながらも、まだまだ続く(豪雨でないってだけ、まだ雨は止まない)雨の中、俺は軽自動車で一時間以上かけて会社事務所へ。
少し待っていると、向こうの担当(作業の相方)が作業車に乗ってくるんで、挨拶兼ねて作業車へ乗り換える。
けっこう現場までは遠いため、高速のパーキングエリアで遅めの朝飯を摂り、雨の中出の作業のために作業車に用意されている雨合羽を上だけ羽織る。
現場に到着し、現場周辺の見回りも兼ねて施設の現状を写真に撮り、元請けに送る。
元請けからは、アンテナ関係も調べてくれというので、相方がスルスルと登っていき、俺は地上で安全監視と交通整理。
相方はアンテナの取付部に緩みがないか、ガタツキなどないかと確認し、現場の写真を元請けに送っている。
一時間ほど登ってた相方は、元請けからの指示が出たのか、降りてくる。
「設備にもアンテナにも異常なさそうだし、こっちの天気は、もうすぐ豪雨だってことなんで、今日は終了で良いってさ」
相方の言葉で、俺達は現場撤収を急ぐ。
それでなくとも、ここら一帯は山中……低山ばかりだが、それでも都会からは、いくつも山を越えていかねばならない。
「さて、撤収完了。元請けに連絡して帰りましょう」
と元請けにメールと通話連絡入れようとしたら、案の定、しのつく雨になり、それが豪雨になるのはさほど時間がなかった。
あまりにも雨量が多いと高速が通行止めになる恐れもあるんで、俺達はメールの返事を待たずに、元請け担当に通話して通行止めの危険があるんで帰りますと連絡入れて現場を退去する。
さて、ここから高速の入口まで、一時間どころじゃない遠さ。
大丈夫なのか?
とは思ったが、思いに反して順調に高速入口までたどり着く。
高速に乗ると、段々と雨雲すら薄れていき、遠くには晴れ間すら見えてくる。
ラッキー!
と思ったが、家に帰ってニュースを見た俺の体が総毛立った!
「午後*時**分、**県**地区の山中で、大規模な崖崩れと土石流が発生し、**地区の半分近くが壊滅したとのことです!現場は未だに豪雨と雷雨の黒雲が渦巻き、取材ヘリも危険で近づけません!」
ニュース番組のMCはヘリに乗っているようで、現場を遠くから写している映像とともに大声で報道している。
すぐに携帯電話がなったので、出ると相方。
「俺らの通過した数分後に、大規模な山崩れと土石流……もう、映画みたいだな」
俺も苦笑いしながら、背中が総毛立つのを感じていた……
ちなみに、俺達がチェックしてたアンテナ含む設備は大丈夫だったけど、そこから帰るまでの山道は半分以上が土石流で崩壊してたそうだ……
半分以上が実話です。
一応、ここまで切羽詰まった感じではなかったけど、別職種で今も働いてたら、もう鬼籍に入ってた可能性が高い・・・
ってことで、これは半分が作者の実話。
ちなみに甥は、実際に救助された映像がニュースに流れました・・・