「小説家になろう」に小説を投稿しようと考えている作者への助言
なろうの流行であるテンプレートなものを書こうという作者に対してのエッセイではありませんが、そうした作者にも通じる部分もあります。
そもそも感単に書くことを止めてしまうような人は物書きに向いていません。
後半に読まれるための工夫について追記しました。参考になるかはわかりませんが。
まず、
「ぼくも小説を投稿してコミカライズ、アニメ化したい! だからなろうのはやりのものを書こう!」
という人に向けてこのエッセイを書いてません。
小説家になろうの流行(テンプレート)からはずれても、「自分の書きたいものを書く」という作者に向けて書いてます。
その中でもキャラクターの軽快な会話とか、コメディーな内容の、マンガのような内容の作品ではない、大人向けの作品を書きたい。そうした意欲を持っている作者さんに向けて書いています。
ネット小説の流行に乗らない作品を投稿するということは、それだけで「読者の大半を失い」ます。
つまりはじめから読まれる機会が減るということです。
「何を当たり前のことを」と思われるかもしれませんが、その当たり前を理解されていない人が多いように感じます。
ここではそうしたことについて1つ1つ確認していきたいと思います。
* * * * *
あなたは新人です。
連載小説を数話──1話3千字程度として、それを5話ほど投稿したとしましょう。
何曜日の、何時何分に投稿するでしょうか。(読者は学業、または仕事の合間にある休憩時間を利用して小説家になろうでの投稿作品に触れます。そうしたことについても考えて投稿しましょう)
連載ものを定期的に更新しますか? 1週間に1度? それとも毎日更新しますか?
毎日更新するなら、新作の1話目から序盤(10~30話くらい?)がいいでしょう。
毎週更新なら、曜日を決めたり、時間帯を決めて投稿するほうがいいかもしれません。
──ただ、何十、何百話と更新している場合は、時間や曜日をずらして投稿するのもおすすめです。
いつもの時間では見向きもしてくれない読者ばかりになった時間帯をはずして、新しい読者の目に止まるためにあえて時間をずらす。
これは長編作品を投稿している作者なら、やってみてほしいですね。
新人作者が硬派な(タイトルが短く、口語体ではないタイトルの)作品を投稿した場合、おそらくPVは2桁ほどでしょう。
○0人前後の読者の目に止まり、その中で何割の人が作品のページを開いてくれるか。そこが最初の勝負になります。
タイトルとあらすじで読者の興味を引いたとして、1回の投稿でブックマークが付くことは希です。
まず10人からブックマークがもらえるかどうか、それも少ない更新で10人の読者から「つづきが読みたい」と興味をもってもらえるかどうか。
それは新人にとって簡単なことではありません。1作品5話を投稿したくらいでは、多くの場合ブックマークが付かないのではないでしょうか。
読者の多くは感想や評価はもちろん、ブックマークすることもケチります(それが標準だというのは悲しいことです)。
作者は投稿、更新した作品になんらかの反応を求めがちですが、すぐにいい反応として表れるとは限りません。それを肝に銘じて作品を投稿しましょう。
いきなり数百のブックマークが付くなんて奇跡はそうそう起きないでしょう。──まして、流行の作風をはずして書くとしたら──
それどころか、簡単に読めるような文章ではなく、(流行物でない)雰囲気重視の文章で重々しい物語を書いている作品に低い評価を投げつけ、作者に筆を折らせようとする毒者もいます。
こうしたことも理解した上で、それでも書きつづける気概も必要になります。
低い評価を付けられたからと、すぐに書くのを止めてはいけません。
感想やレビューなどはなかなかもらえません(相互評価など、仲間と馴れ合いをしている作者は別です)。
先に書いたように、マンガのように誇張されたキャラクターなどを廃し、会話よりも文章による描写を多用した、難解な物語性を重視した作風なら、なおさら読み手の多くは遠ざかります。
それでもなお多くのブックマークや評価を望む場合、更新をつづけ、10万字くらいは書きつづけるようにしましょう。
よく「10万字の壁」などというふうに言われていますが、読者の中には「ブックマークを付けるなら文章量の多い作品にだけ」と考えている人もいると思われます。
もちろん文字数だけでなく、話数が多いかどうかも基準になるかもしれません。
章の区切り(章タイトル)なども、読者の興味を引きつけられるものであるか考えましょう。そこまでやっても、なかなかブックマークが付かないこともあるでしょう。
数十話を書きつづけていても評価もブックマークも付かない場合は、物語の内容や、あるいは文章そのものに読者の興味を引かない可能性があります。──元も子もありませんが。
文章が問題であるなら、読み手に伝わりやすい文章に書き直したり、改行を増やすといいかもしれません。
ネット小説はスマホやタブレット、パソコンの画面で読むので、行間を空けることで読みやすくしている作品がほとんどです。
紙の本は印刷代がかかるので、多くの小説は1ページがびっしりと文字で埋められていますが、ネット小説ではそうした書き方はNGです。
場面ごとに細かく文章のあいだを空けて、読みやすくしましょう。
物語の内容や登場人物に読者の興味が得られないとしたら……残念ですが、厳しい戦いになるのは間違いありません。
だからある程度は、読者の興味を引くような内容に寄せたり、書き方も変化せざるをえません。
がちがちのお堅い文学作品を好んで読むタイプの読者は、ネット小説を読まないでしょう。
ネット小説の多くは「手軽で、お気楽な内容と文章」が求められているからです。
私の場合あらすじで「この小説は気軽に読めるような作品ではありません」と、断りを入れておきました。
ぶっちゃけ、固い内容と文章の作品を書きつづけるのは勇気もいるし、根気も必要です。
それでもなんとか書きつづけることができたのは、小説家になろうを利用している読者にも硬派な作品を求める読者がいたからでしょう。
ともかく「自分が書きたい物語」と「読み手に好んでもらえる作品」という、2つのあいだでバランスを取ることが大切です。
難しい内容でも書きつづけることで、自分の場合は外部サイトで紹介されたりすることもありました(なろうでのレビューもしていただきました)。
手軽な読み物を求めている読者が大半なのは確かで、固い文章で書かれた物語は敬遠されがちです。しかしそれでも受け取ってくれる人はいます。あきらめずに、そして読者に読んでもらえるような文章を書くことを心がけましょう。
「なろう系は書かない」そんな気概を持つ作者が増え、硬派な物語が多く書かれるようになることを望んでいます。
それが結果として「なろう系」からの脱却につながるだけの読み手が「小説家になろう」に増えると考えます。
作品を投稿した作者は、読者からの反応を期待するものです。でなければわざわざネット上にあげたりしないでしょう。読者はそのことを理解すべきです。
作者側は、時間をかけて書いたものを読んでもらいたいという気持ちはわかりますが、読者も時間を割いて読んでいるのだということを忘れずに。
互いが互いをおもんぱからなければ、現在のような「読まれることを目的とした安易な作品」であふれることになるでしょう。