第九の魔法「優等生と劣等生」
合同実技訓練も終わり、クラスの人とも仲を深めることが出来たクロ。そんな朝のある日、広場でレクスを見かける。
珍しく朝早く起きた私は部屋を出て、寮の外を出歩いてみた。朝の日の光や風が気持ちよかった。男子館と女子館の間の広場に着いたときに同じクラスのレクスと出会った。
「おはよう、レクス」
「クロさん。おはようございます」
相変わらず、さわやかな笑顔であいさつを返してくる。レクスとはローザ達のように特別、仲が良いわけではないけど、普通に接してくれていた数少ないクラスメイトだ。
「朝早くから何やっているんだ?」
「魔法を教わったからね。少しでも早く上達したくて」
「熱心だな。俺には絶対無理だ。第一、魔法は使えないし」
「いや、誰にでも得手不得手はあるものだ。焦らずに、ね」
久しぶりにレクスと話してみると、心が落ち着く。相手のことを第一に考え、人のためにと思う性格からだろう。だけど、レクスはあのことをどう思っているのだろう。やっぱり本人の言葉が一番気になる。
「レクス。合同実技訓練の実演で、私が選ばれたこと。どう思う?」
「ん?そうだなぁ」
少しの間、レクスは空を見上げ考え込んでいた。
「あの闘いを見たら、君が選ばれたのは当然だと思ったよ。どんな理由であれ、勝つことが出来たのは君の実力だと思っている」
「でもレクスは学科一位の実力だから、自分が選ばれるとかは思ってなかったか?」
「どんな生徒にも可能性はあった。それは僕だって当然、選ばれるかもって思っていたよ。だけど、君のように勝てるかと言われたら絶対とは言い切れないし、そう考えれば君が選ばれたことには納得しているよ」
レクスがやけに大人びて見える。こういう考え方が出来るからこそ、クラスの皆も信頼している。
「また学校で」
そう言ってレクスは男子寮の方へと戻っていった。
それから、レクスと会話する機会が増えた。レクスから話しかけられることもあるけど、私が授業で解らなかったところを聞きに行くのがほとんど。
相変わらす魔法は使えないままだけど、レクスが言ったとおり、焦らずに自分なりにがんばっていこうと思った。