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第六十二の魔法「ケーニッヒの実力」

 先に動いたのはレクスだった。指揮棒を前に出し、意識を集中する。レクスの足元から風が生まれる。風はレクスを包み込むと、その身体を微かに浮かせていく。


「すごいね、僕には真似できないな」


 レクスが風を纏う。メギストンの心臓に風が吹き荒れる。

 レクスが指を差し向ける。その方向はケーニッヒ。レクスは風を極限まで圧縮させて指先に緑色の小さな弾丸を作り上げる。


「タルナーダ!」


 弾丸が、ケーニッヒ向けて発射された。あまりの速さに、それは緑色の線を描いた。

 ケーニッヒの左耳を僅かに掠った。光の壁を突き破り、弾丸は観客の壁に激突した。

 あまりに一瞬の出来事のため、観客も教職員でさえ、息を飲んでいた。


「バ、バカな……。光の壁を突き破るだと……」


 ルーウェルは驚愕し、ケーニッヒが負けるのではないかとも危惧した。しかし、それよりも驚いているのはアスワドだった。

 長年、生徒を見てきたが、わずか二年生で上級魔法「タルナーダ」を行使できる生徒がいるとは。


「レクス……、アイツは天才だ」


 レクスは再び、指先に力を集める。


「今度は外さない。全力で当てる」


 その言葉の覇気、眼の強さ。全てが本気であるとケーニッヒは悟った。


「そう、なら僕も本気で立ち向かうよ」


 そう言うとケーニッヒは右手の掌をレクスに見せるようにして前に突き出した。


「何の真似だ?まさか、片手で防ぐつもりか?」


「まぁ、そういうこと。別に手加減しているわけじゃない。これが僕の本気だ」


 完全に舐められている。そう感じたレクスは先程よりも大きな弾丸を作り始めた。

 風の勢いが強くなり、指先には何倍にも膨れ上がった弾丸が創り上げられていた。弾丸と言うよりもまるで、大砲の弾のようなそれは、確実にケーニッヒに定められていた。


「タルナーダ!」


 風の弾はケーニッヒ目掛け勢いよく飛んだ。

 瞬間、ケーニッヒの右腕の指が小刻みに動く。レクスはケーニッヒの掌に小さな、円があることを確認できた。

 弾がケーニッヒの右腕に直撃する。激突した際の衝撃によってメギストンの心臓を徐々に壊れ始めていた。既に、光の結界も強制解除されており、風圧は観客席にまで及んだ。

 誰もが目を瞑り、一部始終を見ていなかった。見ていたのは、アスワドとルーウェル、ヴァローナだけだった。

 そして、レクスは目の前の光景が理解できなかった。

 なぜ、騎士が……?

 ケーニッヒに直撃したはずの「タルナーダ」はケーニッヒを吹き飛ばすことなく、ケーニッヒの右腕に吸収されていった。

 徐々に小さくなる自分の魔法を理解することは出来なかった。全てが吸収された後、ケーニッヒは拳を握り、前へと突き出す。


「君の魔法、倍にして返すよ」


 ケーニッヒが突き出した手を開いた瞬間、レクスの放った「タルナーダ」の数倍の大きさの風の弾がレクスを襲う。

 逃げようにも、逃げられなかった。大きすぎて、回避するのが間に合わなかった。

 レクスは自身の魔法をその身に受け、なす術もなく倒れこんだ。



これにて、実演の話は終了です。


けっこう話数を取っていたかもしれませんね。


次回からは色々なことの後片付けを始めたいと思います。

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