第六十一の魔法「レクスの心」
ケーニッヒはゆっくりと剣を構える。
「イエロ・ブリッサ!」
先手を打ったのはレクスだった。三つ放った風の弾丸はケーニッヒ目掛けて襲い掛かる。
ケーニッヒは最小限の動き、手首の動きだけで器用に剣を動かし、弾丸全てを弾く。目の前を見るが、レクスはいなかった。
レクスは既に、風の力を利用しケーニッヒの後ろに回りこんでいた。
「ウィリデ・ウラガーノ!」
素早く魔方陣を描き、指揮棒から竜巻を起こす。大きな竜巻はいとも簡単にケーニッヒを吹き飛ばす。
「くっ!」
真後ろからの攻撃に避けることが出来なかったケーニッヒ。ただ、それほどダメージを受けていないのか、ゆっくりと立ち上がり服についたほこりを払っている。
「全然、ダメだなぁ」
「ん?」
「君には資格がない」
試合中にも関わらず、レクスはケーニッヒの声に耳を傾ける。
「何のことかな?」
「彼女のこと……、クロのことだよ」
「どういうことだ?」
「君は、クロに対して何か特別な感情を抱いていないかな?」
「それは……」
言葉が出なかった。自分にはメルキュールという立派な許婚がいるのは事実。それなのに、いつの間にかクロに対しても特別な感情を抱いてしまったのも、また事実。
幼い頃に、親の言い付けで許婚になった。だから、本当にメルキュールのことが好きなのかは、わからない。大切だとは思っている。だけど、それが「好き」という特別な感情とは違う気もしている。
人を愛することも知らず、許婚となったメルキュール。人を愛することを知って、特別な感情を抱いたクロ。
「もしも、僕の言っている事に心当たりがあるなら、止めた方がいい」
「なんだと……」
「君には、クロを任せられない」
「なぜ、君にそんなことを言われなければならない」
「彼女は、クロは、僕じゃなければダメなんだ」
そう言うと、ケーニッヒは俯き、悲しい表情を浮かべた。
「仕切り直そうか、そろそろ決着をつけたいし」
「それも、そうだな」
不思議な言動だったが、今はこの闘いの決着をつけることが先決だと考えたレクス。全てが終わってから、クロとは話し合おう。
37話以来の後書きです。
どうも、友人が見ていると書く気になれなくて……。
長かった5対5の実演もいよいよ最終戦となります。
まぁ、やりたいことをやりすぎてキャラが増えすぎたせいで
色々と考えなければならなくなった……。
この小説はケッコー自由に書いています。設定などは大まかに決めて、
あとは自分の書きたいことを書いている感じです。
これからはちょくちょく書いてみたいと思うので、暇な御方が
いらしたら見てください。
最後に、新連載を投稿しようと思っています。
新連載はなるべく設定なども細かくしっかりとしていこうと思います。
が、まだあまり決まっていません。
強いて言うなら「現代を舞台にした超能力」です。
超能力ということで、色々カブるかもしれませんが、
楽しく見てくだされば幸いです。
長文になりましたが、これにて失敬。