第四十四の魔法「実演第一回戦開始」
舞台となるのは、ユートピア学園校舎の天高くに位置する闘技場。その名も「メギストン」
年間を通してたった一度しか使われないこの場所は生徒たちにとっても夢の舞台であった。
三年の両学科成績最優秀者のみが立つことを許させる場所。その場所にクロたち五人の生徒が門を開け、足を踏み入れた。最初に声をあげたのはクロだった。
「うぉ!すげぇな!」
クロたちのいる場所は「メギストンの心臓」と言われている闘技場の舞台。そこには辺りを取り囲む5mの高き壁とそこから天を覆うような巨大な観客席。まさしく、全生徒憧れの場所であった。
「すごい…こんなに新入生がいるなんて」
周りを取り囲む観客席は白と黒の真新しい制服に身を包んだ一年と二、三年で埋め尽くされていた。
「今年の入学者数はここ十年で一番多いらしいからね」
「あ、ローザだ。それに、サフィラも」
クロは緊張感が無いのか、ローザに向かって手を振っている。
「呑気なもんだな」
「おっと、騎士学科の生徒も到着したようぜ」
反対側の門が開き騎士学科の生徒が入場してくる。そのなかには見覚えのある人物。
「ケーニッヒ」
今回、賭けをしているが、ケーニッヒの番は最後。私は四番目。直接闘うには最低でも一回は勝たなければならない。
闘技場の真ん中に位置する場所にある最後の門が開き、ヴァローナが現れる。
「新入生の皆さん、入学おめでとうございます。皆さんにはこの一年でどれ程成長できるのか、希望を持ってもらうために両学科から選出された生徒で団体戦の実演を行ってもらいます。それでは早速ですが、先鋒の生徒、前に」
魔法学科からはバシリス。騎士学科からはドッジーナが中央へと歩き出す。
「これから始まる実演では、実際に剣と魔法による闘いを見てもらいますが魔法による特殊なプロテクトを施しているため実際にケガをすることはありません。思う存分闘ってください。そして…」
ヴァローナは二人が中央に来たことを確認すると、指を鳴らした。
すると、メギストンの心臓を取り囲むようにして透明な光が下から発射された。光は上空に集まり、半円を描くようにしてメギストンの心臓を取り囲んだ。
「魔法は時に暴発することも考えられます。それを考慮して、観戦している生徒の皆さんの安全を確保するためにこの装置を使います。この光の外には決して魔法は出ることはありません。思う存分闘ってください」
「やはり、魔術師は軟弱だ。こんな物が無ければ人に危害を加えかねない危ないものだ。騎士の力のほうが優れている証拠だ」
ルーウェルの意見も最もだが、ケーニッヒは賛同しなかった。確かに、魔法は暴発すれば危ない。しかし、二年生なのに暴発するほど危険な魔法が使えるのだろうか。そこにケーニッヒは疑問を持っていた。何かを、ヴァローナは知っているようにも見えた。
両者がヴァローナに向かい一礼する。そして、各々の武器を構える。
「それでは、始め!」