第四の魔法「不幸に不幸は続くもの」
私はまた、魔法の実験で失敗をした。好戦的になる性格からローザたち以外のクラスの皆からは疎外されている感じがあった。変えたいと思っても、きっかけが無い。しかし、その日の放課後に意外な事を担任のロッソから告げられた。
この日の放課後。私は耳を疑うようなことを告げられる。
それはホームルームでのことだった。内容は二日後に行われる騎士学科との合同実技訓練の内容だった。
「今回の実演でこのクラスの代表が決まった。クロだ」
その言葉にクラスがざわつく。当然だった。私よりも優れている生徒はクラス全員と言ってもいい。
「えっと、クロ。辞退は出来ないから、選ばれた以上がんばれよ」
そう言って担任のロッソは去っていった。教室は、この話題で盛り上がっていた。この合同実技訓練で騎士学科と競うことはクラス全員が知っている。負けたら惨めな思いをするのは当たり前だった。
今日の授業が終わり、いよいよ明日に控えた合同実技訓練。クラスにはすでに負けたかのような雰囲気が漂っていた。クロは部屋に戻ったが、何を考えても明日のことが頭から離れようとしない。
「クロちゃん。大丈夫?」
心配そうに見つめてくるローザ。やはり自分のことのように悲しい顔をしている。
「大丈夫だ。何とかなるよ」
私は、ローザにこれ以上心配かけさせないと嘘をついた。本当は恐い。普段から好戦的ではあるが、それは種族のことを悪く言われるからだ。深い理由は無いが、種族の皆のことを言われるとどうしても黙ってはいられない。その時のように好戦的になれればいいけど。
「あのね、今夜は一緒に寝ていい?」
「ん?急にどうした?」
「お母さんから聞いたの。一緒に寝ると不安じゃなくなるって。だから一緒に寝よ」
どうやら、ローザには強がりもバレているらしい。こんなに心配してくれる友達がいるんだ。少しはがんばってみようかな。
アスワドは三年の学年主任であるパーチェの元にいた。
「どういうことですか!クロを選ぶなんて」
「アスワド君。もう決まったことなんだよ」
「ですが、パーチェ主任。クロのことを知っているんですか?今日の授業であのクラスは魔法を扱い始めました。しかし、クロは今日の授業に参加していなかったんですよ。それだけじゃない。クロには魔法の素質も目覚めていないのに。どうやって実演をさせるつもりですか!」
アスワドの言っていることは本当だった。今日の授業で初級魔法程度の魔法を扱えるようになった魔法学科の生徒たち。レクスに至っては初級魔法の大半を取得するまでに成長している。そのレクスを差し置いて、何の魔法も使えないクロを選んでいる。
「だからどうしたというのだ?此方で決まった以上、君が口出ししても無駄なんだよ」
もはや、口論は無意味だった。あとは奇跡を祈るしかない。アスワドはそう思っていた。
ついに始まる合同実技訓練。魔法学科代表として騎士学科の生徒との一騎討ち。クラスの皆はすでにあきらめムード。魔法をまったく使えないクロはこの窮地をどう乗り切るのか。