第十五の魔法「黒い影、再び」
どうやら、マルグリットはレクスのことが好きで、最近仲良くなった私のことを疎ましく思っている。そんな私に敵対するように、一緒の班になったということだろう。
そう思ったとき、またマルグリットに黒い影が見えた。今度は見間違いでもなく、ずっと見え続けていた。
森を探索していると、何度かマルグリットに嫌がらせをされた。いきなりヘビを投げられたり、前と同じように転ばされたり。さすがに怒りそうになったが、我慢しなくてはならない。せっかくサフィラが誤解を解いてくれたんだ。こんな早く問題を起こせば、昔に逆戻りだ。今は、自分が我慢すればいいだけのこと。
気が付くと、授業の時間も終わりに差し掛かっていた。森に入っているため、早く引き上げなければ帰りに間に合わなくなる。
「そろそろ終わりにしようか」
「え~。まだ、こっちのほう探してないよぉ」
マルグリットが指差した方は更に森の奥の方だった。この森に魔物はいない。だけど、気になっていることが一つだけあった。まだマルグリットに黒い影が見えている。先程からずっと。マルグリットの体を取り巻いているように動きながら。
「なぁレクス。マルグリットの周りにある黒い影が見えるか?」
「黒い影?別に何も見えないけど…」
どういうことだ?なぜ、私にしか見えていない。レクスが嘘を言うわけも無いし、幻を見ているわけでもない。
「もういい!私一人で探すから!」
「待って。一人で行動したら……」
レクスの忠告を無視してマルグリットは奥の方へと走っていった。マルグリットは自分のことを心配してもらおうと敢えて森の奥へと走った。レクスが自分を追って来てくれれば、自分のことを心配していると思ったのだ。
「どうする?レクス」
「追うに決まっている。このままじゃマルちゃんが心配だ」
レクスと一緒にマルグリットの後を追おうとしたその時、森の奥から悲鳴が聞こえた。マルグリットの悲鳴だった。
「レクス、今の声」
「急ごう!何かあったんだ!」
このとき、私は嫌な予感がした。あの時、マルグリットを強引にでも止めておけば、あんなことにはならなかったのに。そして、この森の奥へ行くことが、私自身の、この黒くなる手に変化が訪れるきっかけになってしまう。