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第一の魔法「この少女問題アリ」

世界には果てというものが存在しなかった。幾多の冒険家が挑み、敗れた大地ヴェスパル。この大地では様々な種族が共存している。しかし、その種族にとって脅威となっているもの。

 それが「魔物の存在」だった。魔物により滅んだ種族も多い。しかし、魔物の存在に怯える訳にはいかなかった。種族は協力し、魔物を倒す術を見出した。

 剣と魔法。これが種族たちの見出した術だった。そして、今でも魔物と種族の交戦は続いていた。




 王都エリゴール。ヴェスパルの中心に位置し、全種族の交流が盛んな都市である

エリゴールには魔物を討つために創設されたシュルヴィーヴルという軍の本拠地が存在している。そのため、この都市には剣を使う騎士と魔法を使う魔術師を育てる学園が存在している。学園の名はユートピア。生徒はシュルヴィーヴルに入隊するため日夜訓練をしている。

この日もいつも通り、ユートピアの魔術師クラスでは授業が行われていた。教卓の前で熱心に話している教師は書き終えた黒板の字を消し、何人かの生徒を前に呼び出した。


「ヴェスパルでは、魔物により繁栄が途絶えた種族が数多くあります。今、魔物を倒すために協力している種族は四つの種族しかいません。ですが、この四つの種族は誇りを持って魔物を倒そうとしています。では順に説明していきましょうか。まずはローザ。彼女はポルポル族と言う種族です」 

 

 そう言われ紹介されたローザという少女は教師の腰よりも小さかった。


「ポルポル族はとっても小柄な体が特徴的です。小柄な体ですが現存している種族の中で一番古い歴史を持つ種族です。続いてエルフ族であるサフィラを紹介します。エルフ族は種族の中でも最も繁栄した種族です。森を護り、争いを嫌った種族ですが、自らを護るために協力の道を選びました。ポルポル族とエルフ族の二つの種族が共に協力したことにより魔法は誕生したと言われています」


 サフィラは金色の髪を腰まで伸ばしており、それを靡かせるだけで男子生徒からはため息がこぼれる。耳は横に尖っていて瞳の色も青色。その綺麗な顔立ちから男子生徒の人気も高い


「続いて紹介するのはトラゴスのようなカノン族です。カノン族は種族の中でも珍しい半獣半人の種族です」


 紹介されたトラゴスの耳は頭部近くに位置し、毛が生えている。口元からは鋭い牙、そして尻尾も生えている。トラゴスは狼との半獣である。


「最後に紹介するのはプレミア族のレクスです。プレミア族は現存する種族の中でも最も優れている種族です。シュルヴィーヴルの指揮官や将校のほとんどがプレミア族で構成されているのもご存知の通りでしょう。その類稀なる知能と高い身体能力。更には統率力も素晴らしく、何処を見ても非の打ち所の無い種族と言っても良いでしょう。」


「先生、そんなに言わなくてもいいでしょう」


 そのように言われ、照れたように話すレクス。


「いやいや。事実、キミはこの魔法学科でどの分野でも学年トップの実力だし、謙遜することは無いよ」

 その言葉の後、クラスの生徒全員は拍手を始めた。クラスの代表を務めるレクスは頼れるリーダーだった。それにプレミア族ということで他の種族を卑下することも無く、完璧な生徒だった。


「さてと、これで一応種族の紹介は終ったことだし、授業を・・・」


「先生、まだクロの紹介が終っていませんよ」


 授業を終えようとした教師に女子生徒は窓際で寝ている生徒を指差し、言った。


「あぁ。そうだったね、じゃあクロ。前に来てくれるかい?」


 教師は、ばつが悪そうにクロという生徒に呼びかけた。しかし、呼びかけを無視しているのか、聞こえていないのか、クロは一向に置きようとはしない。


「おーい、クロ。聞こえているかい?君が来なきゃ授業は終らないよ」


 その言葉を聞いて、クロの横にいた生徒は机を揺らし強引にクロを起こす。


「おい、起きろよ。早く休みたいんだよ」


 机を揺らされたことで体を起こした。クロと呼ばれる生徒は女子生徒だが、男子生徒の服を着ており、丈も膝近くまで伸ばしている。目深に被った帽子から覗かせる鋭くきつい目は横の男子生徒を見ている。

 その目に怯え、慌てて体を逸らす男子生徒。ゆっくりと教卓の前まで歩いていく。教師は一つ咳払いをし、気を取り直して説明を始める。


「彼女の種族はヒュム族と言って、すでに滅んでしまった種族です。クロはその唯一の生き残りらしく、滅亡の原因は詳しく解っていませんが、恐らくは種族間での争いが原因と言われています。とても、優秀な種族でしたが、非常に愚かな行為だと私は思っております」


 その言葉の後、クロは後ろの黒板を思い切り殴る。真ん中に亀裂が入り始めると徐々に広がり地響きを立てながら崩れ落ちる。


「私の悪口は何を言っても構わないけど、種族の、他の皆の事を悪く言ってんじゃねぇよ」


 教師は腰が抜けたらしく、足を引きずりながらクロから離れようとする。

 この世界でたった一人しかいない種族の女の子、クロ。彼女を中心にこの物語は始まる。


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