第七章 「崩壊」
数週間後。兄はある日を境に壊れていった
「は、何」
「勝手にすれば」
「いい加減にしろよ」
以前よりもはるかに冷たい言葉が飛び交っていた。兄に認めてもらいたかった。ここ一週間ずっと考えた。どうやったら認めてもらえるのか。私が出した結果は、兄に少しでも近づくことだった。兄の心境はたまにわからなくなる。少しは妹としても理解しているつもりだった。でも、兄がシリアルキラーと知った日からわからなくなってしまった。
あの日何気なく兄の部屋に入って探し物をしていた時、タンスから血のついた包丁や鈍器がたくさん出てきた。まだヌルッとしているものもあれば乾いてるものもあった。
一回じゃない、そこでそう確信した。
私にはわからなかった、人を殺したくなる気持ちが。 兄と同じことを実行すれば少し兄の気持ちがわかるかもしれない、そう思ったのだ。
私は早速その日の夜から兄の行動を探っていった。どんな前準備をし、いつ、どのように殺し後始末をするのか。門限が18時と決まっていたが、それは昔のことだ。自分が勝手にまだ守っているだけで破ってもきっと怒られないはずだ。
だってもう子供じゃないんだから。