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世界をとるか、少女を救うか

作者: 大蛇真琴

転載はしないようにお願いします。

プロローグ

 大都会・東京。港付近にあるイベントブースの十八番となったスタジアムに、俺らはいた。

「【インペリアル・ウォー】か…。名前は古いけど、内容は今風だな」

 そう、異世界人とコントローラーなしで戦えるという、このアーケードゲームは画期的なシステムで、今や少年少女…果ては大人まで、出来てしまう。そんなゲームが完成したというのだ。

「しかし、妙だな?大人は乗れませんって書いてあったけど?」

 確かにそうだ。このゲームは万人向けではなかったのだろうか?

「…は、自…供を…せ…すか?」

 かすかに聞こえてきたこの言葉に違和感はさらに深まった。

「しかし、まぁ…」

 そう、俺達はもうブースの中にいるのだ。しかも、並んでいる。次の番は俺達だ。抜けられる筈もない。

「…タダなんだし。遊ぼうぜ?」

「だな」

 ボックスの中に入ると、本当にコントローラーがなかった。

「中央の認証パネルに手を当ててください」

 機械的な音声が流れる。

 手を当てると、少し電流が来た。

「何だ?」

「認証完了…。では、ゆっくり遊んでください」

 画面を見ると、クラスは騎士。使える武器はロングソードだった。

 マニュアルを見ると思ったとおりに物事が動くらしい。

 剣を振るイメージを試しにする。すると、剣が思う様に動くのだ。

 敵を20前後狩った後、ゲームの終了の画面が出た。どうやら、ステージをクリアしてしまったみたいだ。

「剣…ね。自分の名前復唱するみたいで、嫌だな」

 後ろから肩をたたかれる。猛だ。

「剣、お前どうだった?」

「ステージクリアしたよ」

 その言葉に、猛は驚いたようだ。

「くそぉ、大鎌なんて使うから、硬直長いんだよ…」

 俺は疑問に思った。

「ん、配給された武器が違うのか?お前、クラスは?」

 スッと答える。

「ジョーカー。俺は愚か者ってことか…?じゃなきゃ、性格診断までやりっこしないだろう?」

(…こいつ、性格のことも頭に来てんのか、ん?)

 俺は驚く。

「性格だって?」

 猛は頷く。

「おう、画面に出てたぜ?気づかなかったのか」

 俺は思い返してみる。

「そう言えば、何かあった様な…」

 俺の思い違いならいいと願うしかなかった。

 そう、あの時…。こう聞こえたのだ。

「貴方は、自分の子供を殺せますか?」


「データ回収したの?」

 澄んだ声の少女が無線で連絡をしている。繋がっている先はどこかは、分からない。

「そう、じゃあ。身元確認急いで、ある子がこちらの戦力になってくれるかもしれないわ」

 何百もあるデータから搾り出されていたのは、【天翔 剣】。そう、あの剣だった。

「それと、サブマテリアライザーは、完成したの?ちょっと!まだなの?」

 少女は声を荒げる。重要なことらしい。

「まぁ…いいわ。多分、あちらも動くでしょ?」

 あて先には、【ブラン】と書かれていた。

 内容はこうだ。

「私は異星人のヒューマノイドモデル、通称【ブラン】です。【ノワール】を止める為に、あなた方にこのシステムをお渡しします。…マテリアライズシステムの器具。通称…マテリアライザー。今送った、ゲームのテストを早めてください。時間の猶予は本当にありません」

 という内容。私からしてみればどうでもなかった…。本当なら。

「時間…、か」


 適合者…。それは、現代ではあり得ない、所謂魔術、魔法と称されるものを扱う者である。

 適合者しかり、その強靭な能力は凄まじい物だった。

 しかし、それを外部に持ち込むと言うのは、どういう事なのだろうか?

 アメリカ軍特別部隊、ファルコン。ここでは、近日異星人と思われるコンタクトが寄せられ、ファルコンが結成された。

 この行動は、各国は裏で既に把握しており、異性人排除の元、団結を固めていた。

「サクラ・アル・レフォリア。ファルコンへの転属が決まった。至急用意せよ」

 大人しげな少女は、声が出せず、敬礼で表現する。

「このチームには、我が軍からサクラ。そして、北欧からアレックス・E・ジャイナ…。そして、リーダーにクェス・パリアナか…」

 少女は不安そうだ。

「大丈夫だ、お前の役目は特化された、暗号を送ること、探すこと。お前には十分出来た。…案ずるな、この者達も同い年ぐらいだ」

 少女は安心した様子で聞いている。

「行け、サクラ・アル・レフォリア特別二等兵!」

 サクラは敬礼をし、ヘリへと乗り込む。

 上官は不安そうだ。

「…寒い時代となったものだ。世界の希望の光が、子供達だと言うことは…」


 そして、二日後。

「クェスは今、日本にいる。データ収集のためだ。特化された人間が見つかったらしい」

 男は笑う。

「特化?それは、子供に対する言い方じゃないでしょ?それに、現代に魔法なんてもの…異端過ぎる」

 ファルコン本部…、そこではこの言葉は常識ではない。

「ここは、特別なんだ。それに時を緩めたりするぐらいの奴がいる。確かに化け物って言っちゃ、化け物だが、特化のほうが聞こえがいい」

 白髪の少年が立っていた。

「聞こえているぞ?補充部隊の二人。それに、化け物は…聞き捨てならないな?」

 隣に立っていた少女はクスリと笑う。

「なんなら、処刑しちゃう?相手は大佐級だよ?無礼にも程があるよねぇ?」

 彼女の笑いは止まらない。目は死んでいる魚のように、無様な男達をすすり見ている。

「まぁ、俺が殺さなくても、あいつなら殺すだろう?」

 誰をさしているか分からないが、この会話は異常だった。

「まぁ、命拾いしたねぇ…。僕なら簡単に殺しちゃうけど」

 残った二人は、頭を抱えていた。


 クェス・パリアナは、日本に来ていた。

「まだなの?情報処理遅いんじゃない?早くしなさい!急いでるんだから」

 猛暑の中、赤い帽子と、赤いコスチュームは、軍隊の服とは思えない程、可愛かった。

「そこ、写真撮らない!だから、ジャパニーズは…」

 データ解析終了の文字が出ると、特に特化された人間が一人、いることが分かった。

「天翔 剣…。年は16か、同い年ねぇ…。それで、SPのキャパシティは…」

 クェスは驚いた。

「すぐに向かうわよ!この子ならファルコン入団の資格を通り越してるわ!」

 クェスの急ぐ理由は、人を死なせない為だった。


「βテスト稼動中…。前回の侵略データ削除」

 月の影に常に停泊しているUFO内だった。

 少女と少年が並んで大きな試験管に入れられている。

 二人とも、息はあるようだ。

「言語把握能力…。目標の対象物の言語を全て認識させます」

 二人は、顔を歪める…。少女のほうが苦しそうだ。

「被献体ブラン、脳波レベル、レッド」

 ブランと呼ばれた、少女のカプセルに鎮静剤が投与される。

「フム…、白は、許容量が少ない…。いや…、以前の記憶があるのか?データ認識どうなっている?」

 オペレーターがPCだと思われる端末で、詳細を調べ始めた。

「オープンデータ、一件だけあり。どうやら、対象物へのデータ送信をしたものと思われます」

 対象物…それは、地球だった。

「フム…。まぁ、いい。今回も私達の故郷になる事は変わりない」

 オペレーターは、無視している。

「上官…。私たちはいつまで、このような事をやっているのでしょうか?」

 上官と呼ばれた男は笑いながら言う。

「馬鹿だな…。いつまでも…だよ」


この世界には、いくつものパラレルワールドが存在していると言われている。

 そう、地球もまたいくつもあった。それを超えられるのであれば、5次元世界に行くとされている。

 果たして、5次元を超えるにはどうすれば良いのか?

 心は超えられるとされる。では、肉体はどうすれば、超えられるのか?

 その答えはこうだ…。遺伝子情報を全て読み取り、データとして、次元の違う空間に送る。

 しかし、次元を超える受信機はどうやって作り出されたのだろう?

 実在にやってのけたのが、このブランを作り上げた異星人だった…。


プロローグ 了






























エピソード 白と黒襲来

 蝉が鳴く暑い夏の夜。作戦は実行された。

「目標位置、投下します」

 上空のUFOから投下されたのは、例の少女と少年だった。

「プログラム開始…。作戦実行」


 少女はふと目が覚めた。

「ここは、地球?」

 古い趣の学校らしきものがある校庭に二人は投下されたはず…だった。

「ノワールがいない!」

 少女は、周囲を見回す。だけど、人影がいなかった。

 ただ、脳内端末にメッセージが残されていた。

「役立たずの足を引っ張るお前へ、俺だけで作戦は実行する。探したければ、探せばいい。けど、早々簡単には見つからないぜ?」

 少女はしまったとばかりに顔を曇らす。現状では、この世界のことを把握するほうが先だ。

 そして、有能な適合者を探すのも重要だった。

「私には、サーチ機能はない…。それは、ノワールも同じ。けど、あの子が既にプログラムを起動させていたら…」

 凄い不安がよぎる。

 ブランは、足を急がせることにした。


「ふぅ…」

 学校は休みだと言うのに、明日から剣道の合宿だった。

 剣は支度をする。

「しかし…、あの学校は厳しいぜ」

 県立和学校…。剣道、古武道、弓道、馬術、柔道に秀でた日本の文化を思わせる、体術のスペシャリストを集めた学校だ。

 その成績は、メダリストや競馬の有能な選手が輩出される学校で、そのため規則も厳重だ。

「あっ、タオルが足りない…」

 昨日は、雨で洗濯物は乾いてなかった。

「しゃーない、コンビニ行ってくるか…」

 剣は自転車に乗ると、およそ30分掛かるコンビニまで足を運ぶことにした。

 剣は、途中銀髪の見かけない女の子を見る。

 気になり、足を止め、声を掛ける事にした。

「ねぇ、君」

 少女はハッとする。しかも、俺の顔を見るなり酷く顔をこわばらせた。

 次の一声からして…疑問に思った。

「貴方、適合者?」

 俺は顔を顰める。

「適合者?なんだそれ?」

「私は、ブラン。プログラムの名前だけど、貴方適合者よね?貴方の体からマナを強く感じる…」

 一種の霊媒商法かと思った。

「クラスはナイト。武器はロングソード…」

 俺は驚愕した。

「君、なんでそれを?」

 俺は、この子を家に呼んで話を聞くことにした。


 遥か昔、マナを操る魔女と呼ばれた人物達が地球に存在した。

 その魔術は秀でたものは天気すらも操り、未来予知も出来たとされている。

 西洋は魔女。東洋は陰陽師。これらの技術は、少なからず、現代にも存在している。

 西洋は薬学、科学、金属の加工。東洋は、星の観測、占い。両方に共通するのは、天気の予測。

 そして、マナは枯渇はしないものの、使い手がいなくなったことで存在すら忘れ去られていた。


「遥か昔、マナを操るものがいたの。魔女と呼ばれる者よ」

 俺は、信じがたい話を聞かざるを得なかった。なぜなら、不安がよぎったイベントの日から疑問に思っていたことがあった。

「マナは扱い方を知らなければ、人体を暴走させてしまうの。だから、子供から扱えるようにしなければいけなかった」

 俺は納得する。

「なるほどね…」

「あの日、そのプログラムを送った…。私の記憶が消される前に…。どういう内容だったかは覚えてないわ。履歴だけが存在してるの」

 俺は、あのことを話す事にした。

「2週間ほど前、東京でイベントがあったんだ。そこで、【インペリアル・ウォー】ってゲームを体験した。それが、適合者の選別プログラムだったんだね?」

 ブランは頷く。

「それで、大人が乗れなかった理由は?」

 表情を曇らせながら言う。

「大人の場合、0.01%しか適合者は現れないの。その場合、世界は子供達だけの適合者より崩れやすくなる…。だから、それだけは避けたかった」

 ブランは続ける。

「でも、ステージをクリアしないと、リンクしたマナと三割から五割しか扱えないという結果になってしまう。それで、マナライザーの力が強かったら、結果的には暴走をしてしまう…」

 俺は不安がよぎった。

「んじゃ、猛は?」

 ブランは、その理由が分かったようだ。

「猛って子のクラスは?」

「ジョーカー、武器はデスサイズ」

 少女は剣に詰め寄る。

「その子の所に行きましょう!今すぐに」


「クラス:ジョーカー…。精神崩壊を大きな力の根源の代償とし、その猛威はクラス:バーサーカーに引けをとらない。武器をデスサイズとする事で、更なる強さを発揮する…」

 自転車の後ろの座席に乗りながら、ブランは剣へと伝える。

「連絡も取れないんだ…。力のせいか?」

 ブランは、プログラム起動のスイッチが押されていることに気づいた。

「多分、そうね。けど…一般人じゃ、普通ここまで大きな力にならないのが常識。何故?」

 剣は悔やみながら言う。

「多分…俺と喧嘩した時はいつも剣道でけりをつけてた。そのせいだろう…」

 ブランはなるほどと相槌を打つ。

「恐らく、そのせいで、ポテンシャルは人より上みたいね…。で、その勝負の結果は」

 剣は即答する。

「五分五分」

 ブランは、不安が積もっていた。

 猛の町に着く。剣が、コンビニに行こうとした町だ。

「何だ、この血の量は!」

 凄まじかった。血の雨でも降ったかのように、道路が真紅に染められれていた。

「貴方も、マテライザーを起動して!」

 剣は、どうするのか見当も付かなかった。

「剣をイメージするの。手に持つように!」

 剣は、剣を連想する。鞘を腰に巻き、剣を取る自分の姿を。

 すると、炎の渦が剣を取り巻き、炎の剣を右手に握り締めていた。

「使える時間は、今から1時間弱。さぁ、行きましょう」


 猛の前に、黒い髪の少年が立っている…。しかも、凝視していた。

「何だよ?やんのか?」

 少年の瞳をじっと見た時、自分のいたところは、別世界だった。

「面白おかしくもある愉快な人類よ?進化を遂げてみないか?幸いにもお前にはその準備が出来ている」

 猛は激怒する。

「いいねぇ、その顔。だから、人間は好きだ。観察してて面白い」

 猛は殴りに掛かる。

 しかし、何かの力により突き飛ばされている。

「好戦的なクラスのようだね。まぁ、愚か者のほうだけど」

 猛は身を起こし少年に言い放つ。

「おまえ、何者だ?なんで、お前も愚か者って言うんだ!」

 少年は笑う。

「俺か?俺は、君にある力を授けたプログラムの一部だよ。名前はノワール」

 猛は続ける。

「何を分からないことを言ってる?明白なことを言え!」

 少年は、猛に少しずつ近づいてくる。猛は恐怖を覚えた。

「いいだろう、クラス:ジョーカーの戦士よ。しかし、君はマナの力を半分しか生かせてない…。けど、それも見物だ。さぁ、受け取るがいい、疾風のデスサイズを」

 猛は意識を失う。


 次に猛が目を覚めた場所はよく見た河川敷だった。

 手元には、デスサイズが置かれていた。

「これが、俺の力」

 それに飲まれることは恐らく理解できてただろう。だが、避けることは不可能であった。


 炎の渦は天まで届く勢いだった。

 それを見たのだろう、奇声が近づいてくる。

 それは、まさしく猛だった。

 鎌を振り、先制の一撃を空中から加えようとする。距離は遠いが、何故か斬撃だけがこちらに来る。剣は、剣で止める。

「ブラン、離れて!」

 ブランは頷く。

「相手の属性は風よ。それだけ注意して」

 鎌と剣の交わす金属音が鳴り響く。剣は不利な状況にあった。剣の属性の炎が弱まっているように思えたのだ

(…不完全燃焼している!)

 鎌の柄を使い、剣の腹に一発食らわせる。

「くっ…、巧い」

 それに気づいたのか、どこからともなく光の妖精が現れた。魔術で、ブランが出したものだろう。しかし、攻撃は弱く…。猛の風の盾を貫けるものではなかった。

 剣はその隙を突き、鞘で頭を思いっきりたたく。しかし、猛は動じない。

「くそ…打つ手なしかよ」

 またも、金属音が鳴り響く。猛の変わったところと言えば、頭から流血しているぐらいだ。

「猛、いい加減目を覚ませよ!俺達親友だろう!?」

 しかし、今の猛には動じなかった。

 剣は叫んだ。

「ブラン!他に方法は!?」

 ブランが出てくる。シェルターを作り、話の場を設けた。

「あの鎌を壊せば、おそらくあの子のマナは0なるわ」

「了解」

 剣は、自分の相棒に渾身の力を込める。

(…聞こえるか?相棒、親友を助けたいんだ。俺の命はどうでもいい!だから、力を貸してくれ!)

 炎の渦が力を増し、剣と融合する。

「あれは…、バーンソード。クラスは、普通マジックナイトの物。何故、剣が使えるの?」

 ブランは止めに入る。

「貴方のクラスではないものを使うと、暴走するわ。今すぐ、その剣を離して」

 業火と疾風の力の差はこれで五分五分になった。鎌に当てると、鎌はすぐ煙を放つ。

 …溶解だ。剣の相棒は力ずくで猛の鎌を壊そうとしている。

 それに気づいたのか、猛は距離をとる。

 飛ぶ斬撃で、剣に軽症を与えながらも、なおも続ける。しかし、距離は詰められていた。

「ハァァァァッ!」

 鎌を捉らえた業火の剣は、猛のデスサイズを完全に溶解した。

戦った二人は、意識を失い…倒れた。


「何、子の状況…。もうプログラムは発動したって言うの?」

 クェスは、車を急かさせた。

 そして、廃屋にたどり着く。それは、剣と猛がいる場所だった。

 二人を介抱している少女を見つける。

「貴方、ブランね?」

 突然のことに、ブランはびっくりしたが、頷く。

「全国連本部会直属私設軍ファルコン本部のクェス・アリパナよ?状況を説明してもらえるかしら?」

 ブランは、それに応じることにした。


             エピソード 了












EP1 エピローグ

 剣が目を覚ました場所…。それは病院だった。病室は思ったより狭く、個室のようだ。

「そういえば、猛は!」

 勢いよく起きたせいで多少傷が痛む。腹を掠り、体全体に軽い切り傷が出来たようで、包帯が腕や、足に巻かれていた。

「そんなに焦らなくてもいいわよ」

 声の主はブランだ。

「起きたみたいね?」

 もう一人、カーテンの向こうにいる。しかし、声の主は知らない。

「君は?」

 少女は微笑みながら答える。

「クェス・パリアナ。16歳。全国連本部私設軍、日本支部に配属されたファルコンの日本のリーダーを勤めさせてもらうわ」

「ファルコン?って、何でそれを俺に?」

 疑問は残る。

「天翔 剣殿。本日より、ファルコン日本支部に配属が決定されました。よろしくね、ジャパニーズ」

 視線をブランに向ける。

「戦いは激化するのが妥当よ。これからも、続くと思うわ。けど、それで一人だけだったら、直ぐに死んでしまう…。酷な言い方だけど、貴方を生かすためなのよ?」

 剣はなるほどと相槌をうち、切り出す。

「猛は?」

 少女はため息をつく。

「あのジャパニーズね…、私の格好を見るなり、ここはオタクの聖地か!って言うじゃない…。呆れるほど、元気だったわ」

 俺は一息胸を撫で下ろす。

「猛もファルコンに?」

 クェスは首を振る。

「あの子にはもうマナがひとかけらも残っていなかったわ。所謂、化け物から常識人に戻っただけよ」

 ブランが、助言をする。

「ノワールの意識の欠片が残されていた。だから、多分あそこまで強かったんだと思う」

 クェスが、ドアの鍵をロックして話し話し始める。

「そうね、あの子の力は、Bクラスだった。サブマテライザーを使わなくても、あの状況から言えば、そうなるわね」

 猛の事について加える。

「この戦争が終わるまで、彼は大量虐殺犯として、世間で騒がれるでしょうね。けど、そんなこと全世界でもう起こってるわ」

 ブランは黙る。

「貴女のせいってわけじゃないのよ?本来は、これを仕掛けた張本人達のせい…。貴女は、一部の端末にしか過ぎなかった…。道具に善悪なんて問うより、使った本人達のほうが悪いに決まってるんだから」

 ブランは、こう切り出した。

「その異星人って言うのが…、未来の地球人なんです」

 俺とクェスは驚いた。

「はぁ?何それ…。どういうことなの?」

「正確には、別次元の地球人。深く言えば、未来人…という事になります。未来人は、鉱石や自然物質を使い果たし、地球を再生不能にし、そして、略奪なども頻繁に起きました。それを不快に思った未来の宇宙船の人間は、次元を超えて、端末を転送することに成功したのです」

 クェスは、一つ疑問に思った。

「もし、仮に端末の次元移動に成功したとして、人間はどうするのよ?」

 ブランは続ける。

「遺伝子をデータ数値化して、転送し…、培養液で人体を作り上げます。錬金術で言うホムンクルスという物です」

 俺らは相槌をつく。

「んじゃ、俺が使った魔法はどうなるんだ?」

「それは、未来人が過去の魔法と呼ばれるものの全てをデータ化に成功し、マナライザーを作り出しました。ですから、貴女達の言う異星人は、全員使えます」

 それを聞いて、クェスはベットに座った。

「私たちの作ったサブマナライザーは、それの補助的な装置よ。マナの容量増加って言えば話が通りやすいかしら?」

 ブランは驚く。

「成功したんですか!?」

 クェスは頷く。

 気づくと夕方になっていた。

「んじゃ、私達ファルコンの施設に戻るわ。お大事に」

 俺は会釈をし、寝ることにした。


             エピローグ 了


ちょっとデータを間違えて消してしまいました。

感想をできるだけお願いします。

評価だけでもいいです。


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