小説を書く際の業界隠語や食物の時代考証(メモ)
小説を書く際の業界隠語や食物の時代考証についてのメモ
これは筆者のメモである。
ある文学関係のサイトで
「軍隊、警察、暴力組織などでは隠語が発達し、よく使われる」と言う意味のことが書いてあった。
それはその通りで、世間一般より違う環境に置かれれば、隠語(業界用語とも言う)を使うと意味が通りやすいし、話も早く誤解も減るという効用がある。
不動産屋の言う「徒歩●分」というのは一般人の徒歩所要時間の大体半分程度よりちょっと長い程度であるし、警察官が「弁録巻いとけ」と言うのは、被疑者等から供述を取る前に弁明を聞いて「弁解録取書」を書いておけという意味である。
「星の数よりメンコの数」は陸軍や陸自で言うところの階級章より勤続年数が物を言うことを言う。だから入隊3年近い兵長が勤続5年の聯隊の生き字引と化した一等兵に「古兵殿」と敬礼する事態が発生する訳である。
海軍では普通善行章(3年で1本袖に付ける山形記章。精勤章のこと。1本で大体水兵長になる)が2本(6年経っても水兵長や下士官になれないと言うこと)の上等水兵は「楽長」と呼ばれ恐れられたという。
一方、専門用語が特殊すぎると小説に出てくる機会がガックリ減るのも確かで、「今日の天気、90番台にならないと良いなあ」「あの下層雲は2型か3型か?」とか言いながら花見の蓙を丸めて退避の準備をしている集団が居たらまず、気象庁か気象関係者、若しくはそのOB達である。
90番台というのは雷を伴う降水現象を国際気象通報式で送信するときの現在天気番号、2型下層雲は発達気味の積雲の型番、3型は雲頂が解れて来始めた積乱雲のことであるが、一般の方々はほとんどご存じあるまい(…知っていたらそれはもはや一般人とは言えないのである…)。
気象庁職員でも、グラグラ揺れ出して「キャー地震だ」と言いながら机の下に潜るのは50代前半までの職員、椅子にどっかと座ってps時間の秒数を読んで体感震度を発言(しかも計測震度と1以上ずれはない)していたら、大抵50代後半以降の古狸である。(計測震度計導入前からの技術系職員。事務系職員は多分机の下に逃げる)
食べ物の考証で間違いやすいのは白菜とカレー。
白菜は古くからありそうだが、実は明治期に日本に入ってきたので、江戸時代の庶民が土鍋で白菜をつついていたら嘘だと思っていい。
日本に於けるカレーの発祥は海軍というのも間違いで、明治期に大体民間や陸軍と歩調を合わせて普及している。明治末期にジャガイモにんじんタマネギを使ったカレールーを普及させたのは海軍かも知れないが…。(なお明治期は陸軍ではタマネギ無しで少量の酢を使うとか、民間では蛙肉を使うとか…ちょっと勘弁的なレシピであった…)
まして金曜カレーとか土曜カレーというのは海上自衛隊発足後しばらく経った昭和40年代(インスタントカレールーが市販されるようになってから)の習慣である…。
但しカレールーの出来でその艦艇の調理水準や烹炊員長(海自に於ける給養員長)の腕前が判り、他艦より飯が不味いと士気が落ち、小艦艇では烹炊員長が「簀巻きにする」と冗談半分に脅される事があるそうである…。