表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/11

はじめて、彼女の家に…



「おはよう、深月君!」


 家を出て、いつもの通学路を歩く。すると、いつも待ち合わせの場所にしているコンビニの前に、春風がいた。春風は俺に気づくと、ぱあっと表情(かお)を明るくさせながら、俺のところにパタパタと駆けてきた。いや、俺の彼女、可愛すぎん?


「おはよ、春風。ごめん、待った?」

「ううん、今来たところだから!」

「そっか。じゃあ、行こっか」


 俺がそう言うと「うん!」と春風は嬉しそうに微笑みながら、俺の隣に来て並んで歩き出す…何だか、いつにも増して可愛い。

 

「!…深月君?」


 少し歩き出したところで、俺は隣で揺れていた春風の手を、きゅっと握った。登下校中に手を繋ぐのは初めてだった。


「…いいの?見られたらからかわれるからって、登下校の時は手繋げないよって言ってたけど…」

「…うん。今日の春風、いつにも増して可愛いからさ。なんていうか、他の男に牽制?してるつもり─…」


 そう言いながらだんだん恥ずかしくなってきて、俺は春風から視線をそらした。普段そんなこと言わないのに、俺は何言ってるんだ?ってなった。自分の言葉がだいぶ恥ずかしかったのか、頬や耳がほんのり熱くなった。たぶん、赤くなってる。すると。


「ふふっ、深月君耳まで真っ赤だよ。恥ずかしいなら無理しなくていいよ」


 と、春風はクスクスと笑いながら言った。


「いやなんか、自分の言葉に恥ずかしくなっちゃったっていうか…てか、春風と手繋ぐのは恥ずかしくないから。それに、牽制はほんとだし。だって、春風…まじ可愛いからさ」

「も~…ほんと、朝からどうしたの?可愛い可愛いってそんなに言われたら、さすがに照れるって!でも…すごく嬉しい。ありがと!」


 ぎゅっと。握る手の力を強め、春風はとびきりの笑顔を俺に見せた。ドキッと、俺の胸が強く大きく揺れる。


「…少し、いいかな?」

「ん?なぁに?」


 

 ────────…



 俺は春風の手を引いて近くの木陰に行くと、春風にキス…した。


「…最近、深月君たくさんキスしてくれるね」

「嫌…かな?」

「ううん、とっても嬉しいっ!」


 黒髪のボブを風に揺らしながら、微笑む春風。その笑顔が可愛くて、俺はまた春風の唇にちゅっとキスする。


「あ、そうだ!今日、学校終わってお昼ごはん食べたらさ、私のお家に来ない?」

「え?どうしたの、急に」

「明日から中間テストでしょ?それで今日から短縮授業で早く帰れるからさ。何処かで一緒に勉強したいなーって。私…今回の数学があんまり自信なくて。で、深月君、数学得意でしょ?」

「得意って言うか、まあ、教科の中では一番好きだけど…」

「お願い!私に数学を教えてください!」


 春風は手を合わせて、そう俺にお願いした。


「うん、うまく教えられるか分からないけど、いいよ」

「ほんと!ありがとうございます、前川先生!」

「なんだよ、前川先生っ─…て」


 俺が話してる途中。春風は俺の左肩に両手を乗せそして、背伸びをしながら…俺の頬に〝チュッ〞とキスした。


「それより早く学校(ガッコ)行こ!遅刻しちゃう!」


 春風は俺の手を引いて、パタパタと駆けだす。

 春風にキスされた左頬がほんのりあったかい。唇を重ねたキスも良いけど、頬にするキスも良いな─と。春風に手を引かれながら、俺はキモい顔で(多分)にやついていた。





「─じゃ、帰ろっか」

「そうだね」


 授業を終え。春風と教室でお昼ごはんを食べ終えて少しおしゃべりをした後。俺と春風はスクールバッグを持って教室から出た。


「深月君って、まだ私の家に入ったことなかったっけ?」

「うん、今日が初めてだね」


 何度か春風の家の前に行ったことはあったけど、まだ春風の家に上がったことはなかった。そう…春風の家に…女子の家に上がるのは初めてで。だから、めちゃくちゃにドキドキしてる。いや、最近一人暮らしの女性の家には何度か上がったけど…でも、それとはまた違った緊張感がある。


「あ、そういえば今日、家に誰かいる?」

「うん、今日はお母さんがいるよ」

「そっか、コンビニで何か手土産?みたいなものでも買おうかな?」

「え?そんなのいいよ!」

「いやでも、手ぶらでお邪魔したら失礼かなって…」

「いやいや!そういうのはいいよ!大丈夫だよ!」

「…そう?」

「そうだよ!も~…深月君ほんと真面目なんだから!」


 だんだん、春風の家が近づいてくる。だんだん、鼓動が強く早くなってくる。変な冷や汗が毛穴から吹き出てくる。緊張、する。


「ねぇ深月君、なんか顔色悪いよ?もしかして体調悪いとか?大丈夫?」


 心配そうな顔で俺のことを見ながら、春風は聴いてきた。


「いや、体調は悪くないよ。なんか、緊張してるだけ」

「え~!何で?ああ、お母さん?大丈夫だよ、私のお母さん優しいから」

「いや、お母さんもそうだけど─…」

「?」


 もちろん、春風のお母さんのこともあるけど…それよりも、彼女の家に上がるっていうのが、何かよく分からないけどすごく緊張する。


 俺が冷や汗をかきながら緊張していると。


 ─…ぎゅっ。


「春風?」


 春風は、冷や汗で濡れている俺の手を握った。


「ふふっ、手汗すご。どんだけ緊張してるの?…大丈夫、なにも心配しないで」


 俺の手を握る、春風の手。ちいさくて柔らかくて…なにより、あったかくて。緊張でカッチカチに固まっていた俺のこころが…春風のあったかさでほぐれていく。


「…ヘタレでごめん。それと、ありがとう」


 握られた手をぎゅと握り返しながら、俺は春風にそう言った。

 春風と手を繋ぎながら歩いていると、春風の家に着いた。春風のおかげで緊張がほぐれていたけど、でも家の前に来るとやっぱちょっと緊張してくる。

 すると。


「─あ!そうだ、忘れてた~…」

「へ?何を?」

「今日、お母さん仕事休みだけど、友達と出掛けるからいないんだった…」

「…へ?」

「よかったね、深月君!お母さんいないから緊張しなくていいよ!」

「え?あ…はい」



 ─いや、それはそれで緊張するんだけど。


 だって、春風と2人きりってことでしょ!?


 ええ!?




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] えぇっ?! ふ、二人きりっ?! こ、高校生ぐあっ!! いやー。あるあるなんでしょうな~。きっと。 連れ込んで二人きりなら──、キスも済ませちゃってるし……。 ご、ごめん。 何パターンか、展…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ