白く揺れる渓谷
「ちょ…あの…」
そして…
するり─…ぱさっ。
お姉さんはブラウスのボタンを全てはずすと…それを床に落とした。…露になる、お姉さんのブラウスの向こう側。うっすらと、胸の輪郭が透けて見える黒のブラ。
真っ黒いビジネススーツを着ていたし、ボタンをきっちり閉めていたから気づかなかったけど…胸がけっこう…おっきい。お姉さんは壁に背を向けて着替えていて、ちらちらとしか見えないから何とも言えないけど…いつか友人に見せてもらった、グラビアアイドルの写真に載っていたGカップアイドルのおっぱいの大きさくらいはある…気がする。
俺は目の前で行われている、セクシーなシーンについ釘付けになってしまっていた。
そして、お姉さんがスーツのズボンに手を掛けた瞬間─…はっ!と俺は我に返った。
「─じゃなくて!お姉さん!俺、ここ、いる!きっ、着替え、別で!」
俺は何故か言葉をカタコトにさせながら、慌ててお姉さんにそう言った。するとお姉さんはくるりと俺の方に振り向くと。
「あ…ごめんごめん。つい、一人の時のノリで着替えちゃってたね」
お姉さんはそう言うと、慌てて部屋を出た。
「はぁ~…」
お姉さんが部屋から出ていくと、俺は気持ちを落ち着かせようと、テーブルの上のココアをひとくち飲んだ。
「びっくりした…」
あったかいココアを少し飲むと、ドキドキが少し落ち着いた。が、ぽわ~んと、さっきのお姉さんの上半身下着姿のシーンを思い出し、俺の胸がまたドキドキしはじめた。
「ほっ、細いのに…けっこうおっ……」
ぶんぶんぶん!と頭を強く横に振り、さっきのシーンを脳内から消そうとする。すると。
「どうしたの?そんなに頭を振って。何か悩みごとでもあるの?」
と、着替え終えたお姉さんが戻ってきた。俺は不意を突かれたように、思わず「うわああああ!!!」と大声を出してしまった。
「う、わ、すみません!何でもな──」
お姉さんの方に視線を向けると、ドキドキと激しく高鳴る鼓動や俺の思考の全てが、一時停止したようにピタッ!と止まった。
きっちりと、ひとつに束ねられていた亜麻色の肩より長いストレート髪は解かれ、お姉さんの胸の上でさらさらと揺れていた。
今にも大きな胸が零れ落ちそうなほど胸元が大きく開いた、緩くヒラヒラとした黒いキャミソールを着ていて、下はその黒キャミのセットのものなのか、同じような素材のショートパンツを着ているんだけど…とにかく短い。お姉さんの白くて細い生足がほとんど隠しきれてない。
ただ、束ねていた髪を下ろして部屋着に着替えただけなのに…さっきのきっちりとした真っ黒のビジネススーツを着ていたお姉さんと同一人物に見えなかった。
「─…くん…深月君?」
まるで気絶でもしているかのように、意識をなくしながら部屋着姿のお姉さんに見惚れていた。すると、お姉さんに名前を呼ばれ、俺は意識を戻した。
「ほぁ、は、はいっ!」
声を裏返らせながら、お姉さんに返事する。意識が戻った俺の心臓は、喉奥から飛び出てきそうなほど強く跳ねていた。
「ぼーっとしたり、真っ赤になったり、冷や汗かいたり…もしかして、熱でも出てる?」
「い、いえ…ひぇっ!?」
お姉さんは心配そうな顔をしながら、俺の前髪をさらっと手で上げ、こつんと額をくっつけた。それと同時に、ふにん、と俺の胸に当たる、お姉さんの柔らかくて大きな果実。黒のキャミソールが、お姉さんの白くてたわわな果実を、さらに白く…そして艶やかに魅せた。
「ん~…熱はなさそうだけど~…」
むにゅむにゅと、お姉さんの胸が俺の胸に何度も当たる。
「あ、あああああの!熱はないです!大丈夫なので離れてくださいっ!」
俺がそう言いながら、後ろにずりずりと逃げると、お姉さんはきょとんとした顔をしていた。
すると。
「…ねえ、深月君は…私みたいなお姉さんは嫌い…かな?」
「…え?」
「まあ…10歳以上離れてるから…深月君からしたら、私はお姉さんじゃなくておばさんかぁ~…」
ぺたんとアヒル座りをしながら、お姉さんははぁ~…と大きくため息を吐いた。両腕に挟まれたお姉さんの胸が、ぎゅっと真ん中に寄せられ、白くて深い渓谷が出現する。
「いや…おっ、おばさんだなんて思いません。綺麗で素敵なお姉さんですよ」
俺はその白くて艶やかな渓谷から視線を反らしながら言う。
「…ほんと、じゃあもし、私が今深月君に『付き合って』っていったら─…付き合える?」
「……へ?」
間の抜けた声を出したながら、俺はお姉さんの方を見た。
ずりずり…と、お姉さんは四つん這いで俺のところに近づいてくる。広い胸元がふわりと開き、たわわに実る果実が、ユサユサと柔らかに揺れていた。お姉さんの大きな胸の先端─…全貌が、見えそうで見えない。
お姉さんは四つん這いで俺に近づくと…
ひたっ…
白くてすべすべの手が、俺の頬に触れた。
目の前には、お姉さんの綺麗な顔。
お姉さんは俺の瞳を真っ直ぐに見つめながら…
「キス…して─…って言ったら、できる?」
桃色の唇をふるふる…と揺らしながら、お姉さんはそう言った。