第七話 激突!重機動ロボ
銀河の辺境の資源惑星ガライアV。
この惑星において、採掘場は生命線であり戦場でもあった。
バーナム鉱業の拠点を守るため、ダン・ウェルナーは今日も『キャケロビャ』に乗り込む。
しかし、これまでとは違い、彼の機体には新たな武器が備えられていた。
それは『パイルバンカー』と呼ばれる武器だ。
整備士リーナ・ファルクが旧式の採掘機を利用し、急ごしらえで取り付けた新装備だ。
高圧縮空気の力で巨大な杭を打ち出し、敵の装甲を貫通する。
その武器は、戦闘用ではないキャケロビャにとって、頼みの綱となる切り札なのだ。
「敵影確認! カイロン社の部隊が接近中!」
哨戒担当の作業員が警報を鳴らす。
鉱山の入り口から、数機のカイロン社製メカが砂煙を巻き上げながら進軍してきた。
先陣を切るのは、『バーランダー』と呼ばれる旧式の汎用戦闘メカ。
キャケロビャの初陣で戦った機体と同型だ。
しかしよく見ると武装などが違う。
おそらく強化型だろう。
「やるしかねぇな…!」
ダンはキャケロビャを前進させ、迎撃体勢を取る。
鉱山労働者たちも、作業用ロボットや即席の防衛砲台で応戦する。
以前倒したカイロン社のロボットたちを素材に制作したものだ。
何かに使えないかと、倉庫に残骸を保管していたそれを、武器に転用しているのだ。
だが、相手は傭兵部隊。
プロの戦闘技術と最新鋭の機体を駆使し、バーナム鉱業の防衛ラインを少しずつ押し崩していく。
「どけぇぇぇっ!!」
キャケロビャの強化クローが敵機の装甲に食い込んだ。
クローが装甲を削り、内部機構を破壊していく。
強化型バーランダーは断末魔のようなスパークを発し、そのまま沈黙した。
次の瞬間、別の敵機が背後に回り込んでいた。
反応速度ではどうしてもあちらに分がある。
「ちっ、こいつ…!」
ダンは追加装甲のおかげで攻撃を耐えるが、決定打を与えられない。
キャケロビャはもともと戦闘用ではなく、機動力ではどうしても劣るのだ。
「くそっ…! やっぱり今の装備じゃ押し返せねぇ…!」
キャケロビャのクローで強化型バーランダーの装甲を削ろうとするが、素早い動きでかわされてしまう。
以前戦った個体よりも明らかに強い。
強化型というのはどうやら嘘ではないようだ。
反撃のビーム砲がキャケロビャの肩をかすめ、警告音がコックピット内に響く。
「ダン! パイルバンカーを使って!」
「試作段階だろ!?」
リーナの声が通信越しに飛んできた。
パイルバンカーはまだ試作段階。
綿密な試運転などはしていない。
前回の戦いでは使わざるを得なかったのだが…
「今やらなきゃ負けるわよ!」
ダンは歯を食いしばり、パイルバンカーのトリガーを引いた。
凄まじい衝撃がキャケロビャを伝い、巨大な杭が発射された。
それは強化型バーランダーの胸部装甲を貫いた。
一瞬の静寂の後、機体は沈黙しながら地面に沈んだ。
「…やったか?」
ダンは息をつく。
敵を一機撃破できた。
だが、敵の機体はまだ数機いる。
油断はできない。
しかし、リーナは腕を組みながら戦場を見つめ、眉をひそめていた。
そして通信を入れてきた。
「いや…様子がおかしいよ」
「何が?」
「あいつら、撤退を始めている。まだ戦力は十分あるはずなのに…?」
リーナの言うとおりだった。
敵は撤退していったのだ。
戦闘が終わった後、ダンとリーナは敵の機体の残骸を調査していた。
リーナの指摘通り、今回の攻撃はあまりにも中途半端だった。
何かを探るための戦闘じゃないか。
それがリーナの見立てだった。
「こっちに、まだ動くデータ記録装置があるよ!」
リーナが破損した強化型バーランダーの機体から記録装置を取り出し、携帯端末に接続する。
画面には、カイロン社の無線通信記録が浮かび上がった。
「…座標データ?」
ダンが画面を覗き込むと、そこにはガライアVの地図と、ある一点を示す数値が記録されていた。
「これは…山岳地帯?」
バーナム鉱業の管理外のエリアだった。
そこに、カイロン社は何らかの拠点を築いている可能性が高い。ダンは拳を握る。
「…確かめに行くしかねぇな」
「待って、危険すぎるよ」
リーナが警戒の目を向ける。
カイロン社が何かを探っているということは、こちらの動きを警戒している可能性が高い。
「リーナ、気をつけろ。カイロン社は単なる企業じゃない」
「何をいまさら…」
「傭兵崩れや戦争帰りの連中も雇ってる。明らかに異常だ」
「確かにね」
「…やばい奴が出てくるかもしれん」
以前戦った男『ギル・レイバー』や今回の傭兵たち。
それに続き、新たな戦力が投入されていく。
そしてダンの言葉通り、カイロン社の本部では新たな刺客が選ばれようとしていた。
「ナッシュ・フェルド、出撃準備だ」
カイロン社の指令室で、鋭い眼光を持つスナイパーが静かに微笑んだ。
「…わかった」
次なる戦いは、より危険なものになろうとしていた。
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CMR-03S「バイアランダー・強化型」(旧型戦闘用ロボット・改良型)
タイプ:汎用戦闘用メカ
全高:9.8m
装甲:中装甲(耐弾性重視)+耐衝撃セラミックコーティング
武装:
•75mmマシンガン×2
•簡易プラズマブレード×1(腕部)
•小型ミサイルポッド×2(肩部)
概要:
かつて銀河連邦軍が制式採用していた量産型戦闘メカをカイロン社が買い取り、企業間抗争用に転用した機体。
『ヴェルクシュトルム』の戦闘データをもとに強化されている。
ベースとなった機体の弱点だった、低い機動力を強化している。
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