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重機動ロボ キャケロビャ   作者: 剣竜


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第十三話 新たなる旅立ち

 


 ガライアVの荒野に朝日が昇る。

 廃墟と化した旧採掘施設の瓦礫の中で、ダン・ウェルナーは静かに佇んでいた。

 昨日まで続いていた戦いが嘘のように、世界は静まり返っている。


 囮にしたヴェルクシュトゥルムは酷く損傷している。

 ギルの乗っていたヴァイス・クリューガーはひしゃげ、装甲のあちこちにパイルバンカーの跡が残っていた。

 決闘は壮絶なものだったが、辛くもギル・レイバーを倒し、カイロン社の支配を退けることに成功した。

 しかし、戦いが終わった今、ダンは何をすべきなのか分からなくなっていた。


「ふぅ…」


 バーナム鉱業の拠点では、残った作業員たちが復旧作業を進めていた。

 戦闘の影響で施設の半分以上が破壊されていたが、それでも生き残った人々は諦めてはいなかった。

 リーナ・ファルクは機械修理班の指揮を執りながら、キャケロビャの応急処置を終え、ダンの様子を気にかけていた。


「…ねぇ、ダン」


 作業場の片隅で、キャケロビャを眺めるダンに近づく。

 最初は単なる作業用ロボットでしかなかったキャケロビゃ。

 しかし戦いに巻き込まれ、戦闘用ロボットと死闘を繰り広げてきた。


「これから、どうするの?」


「どうする、か…」


 ダンは目を伏せた。

 バーナム鉱業に残るか。

 それとも、また新たな戦いに巻き込まれるのか。


「俺は…」


 その時、ヴォルク・ザガノフの低い声が響いた。


「お前がここに残るなら、それもいいだろう。だが、どうせ燻るなら、外の世界を見てみるのも手じゃねぇか?」


「外の世界…?」


「ああ。ガライアVは広い。ここはまだ、ほんの一部に過ぎねぇんだ」


 ヴォルクはダンに地図を手渡す。

 そこには、未知の地域や廃墟となった都市の名が記されていた。

 今まではこの鉱山の周辺でしか生きていなかった。

 しかし、カイロン社との戦いで知った。

 世界は広い、ということを…


「この星には、企業の支配が及ばねぇ場所もある。戦いを続けるのも、そこで新しい生き方を探すのも、お前の自由だ」


 ダンは地図を見つめながら考えた。

 今まで彼は世界を知ろうとしなかった。


「…ヴォルクはどうするんだ?」


「あんまり一か所に長くいるのは性に合わねぇんでな」


「そうか…」


「ちょっとしたツテがある。戦争を離れたって、傭兵はどこでも食っていけるもんさ」


 ヴォルクはちらりとキャケロビャを見た。

 傭兵ギル・レイバーとヴァイス・クリューガーを倒した機体。

 戦士の風格が漂っていた。


「…お前の相棒も、立派になったな」


「…ありがとうよ」


 ダンはキャケロビャに触れる。

 これまで幾度となく命を救ってくれた機体。

 しかし、ヴォルクには一つ気になることがあった。


「…なぜヴェルクシュトゥルムを使わなかったんだ?」


 爆破されたカイロン社の前線基地から強奪した機体、ヴェルクシュトゥルム。

 ヴォルクは、ダンを乗せるために持ち出したつもりだった。

 しかし、実際には囮に使っただけだった。

 実際に対決したギルも、まさかダンがキャケロビャに乗り続けていたとは思ってもいなかった。


「深い意味はねえよ」


 地形を利用した奇襲戦法。

 それがキャケロビャの戦い方。

 今回の戦いも、それをしただけだ。

 ダンはそう言った。


「こいつは、最高の相棒だ」


 ダンははっきりと言い切った。

 とはいえ、やはり機体にも疲労がたまっている。

 いつか、どこかで本格的な修理や改修が必要になってくるだろう。


「だったら、こいつを鍛え直す場所を探してみろ」


 ヴォルクはニヤリと笑った。


「この星のどこかに、お前に相応しい戦場があるかもしれねぇ」




 --------------------





 その夜、ダンは整備場でキャケロビャの修理作業をしていた。

 今まで破壊したカイロン社のロボットの残骸から、使えそうな部品を捜す。

 そしてそれをキャケロビャに移植する。

 リーナは溶接機を使いながら、時折ちらりとダンの方を見ていた。


「…やっぱり、行くつもりなのね」


「…ああ」


 ダンがそう答えると、リーナはふっと微笑んだ。


「なら、私も行くわ」


「えっ?」


「驚いた?」


 リーナは溶接を止め、ダンに向き直る。


「この戦いが始まってから、ずっと機械をいじってた。どんなに壊されても、直して、改造して、戦えるようにした。でもね、思ったの」


 リーナは手袋を外し、油に汚れた手のひらを見つめる。


「私、まだまだ学び足りない。もっとすごいメカニックになりたいの。だったら、ここにとどまる理由なんてないじゃない?」


「…本気か?」


「本気よ」


 リーナは少しだけ顔を赤らめながら笑う。

 ダンは少しの間、彼女の瞳を見つめていた。

 そして、やがて小さく笑った。


「それに、ダン一人じゃ絶対に無茶するでしょ? 私がついててあげないと」


「…あんたには敵わねぇな」







 数日後。

 ダンとリーナは最低限の荷物をまとめ、出発準備を整えていた。

 バーナム鉱業の上司には話をつけてある。

 リーナは、以前の抗争でカイロン社から奪った運搬用トレーラーを退職金代わりにもらい受けた。

 ダンはキャケロビャを譲り受けた。

 バーナム鉱業の仲間たちが見送る中、ダンは振り返り、ヴォルクに軽く手を挙げる。


「世話になった」


「いいってことよ。…まあ、生きてりゃまたどこかで会うだろうぜ」


 ヴォルクは煙草を吹かしながら、ニヤリと笑った。

 キャケロビャのエンジンが低く唸り、ゆっくりとトレーラーに向け歩き出す。

 そしてカイロン社の運搬用トレーラーに乗り、ダンがキャケロビャを固定する。

 リーナが操縦席の隣で地図を広げた。


「さーて、まずはどこへ向かおうかな?」


「…荒野を抜けた先だ」


「ふふふ、はいはい」


 ダンは遠くを見つめながら呟く。

 戦うためではなく、自分の答えを見つけるために。

 ダンとリーナ。

 そしてキャケロビャを乗せたトレーラーの巨大な影が、朝焼けの中に溶けていった。



 -------------------



 キャケロビャ


 型式番号:無し

 全高:11.8m

 動力源:高圧縮ディーゼルエンジン

 装甲材質:耐圧複合スチール

 武装:

 •ドリルアーム×1(左腕)


 採掘作業用機体キャケロビャ。

 戦闘用としての性能は低く、装甲も薄い。

 武装らしい武装もない。

 しかし重機であるため、パワーだけは非常に高い。

 地形を生かした戦闘により、格上の敵にも戦えるだけのポテンシャルを秘めている…

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