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重機動ロボ キャケロビャ   作者: 剣竜


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第十一話 新たなる機体…!?

 

 ガライアV・バーナム鉱業の廃棄区画にて。

 鉱山地帯に広がる薄暗い空。

 崩れかけた建造物の隙間から、夜明け前の淡い光が差し込んでいた。

 鉱山地帯に広がる静寂の中、ダン・ウェルナーは独り、荒野を進んでいた。

 キャケロビャの機体は損傷が激しく、戦闘には到底耐えられない状態だった。


「…くそッ!」


 歯を食いしばりながら、ダンはキャケロビャの操縦桿を握りしめる。


 ギル・レイバー、カイロン社が誇るエースパイロット。

 その圧倒的な戦闘技術。

 そしてヴァイス・クリューガーの性能は、ダンの機体とは別次元だった。

 このままでは勝てない。

 その事実が、胸に重くのしかかる。

 しかし、戦うしかない。

 逃げることは許されないのだ。

 廃棄区画の一角、長年放置されていた格納庫の前でダン・ウェルナーはキャケロビャを降りる。


「…こんな場所に来てる場合じゃないんだがな」


 ダンは独り呟く。

 カイロン社の襲撃で、バーナム鉱業の拠点はほぼ壊滅状態。

 敵がいつまた攻めてくるかわからない。

 だが、ヴォルクに『話がある』と呼び出され、彼の指示に従ってここへ来た。

 ダンが格納庫の中へと足を踏み入れると、そこには見慣れた背中があった。


「遅かったな」


 ヴォルク・ザガノフ。

 かつての傭兵であり、ダンに戦い方を教えた男。

 その隣には、リーナ・ファルクがいた。

 彼女は腕を組み、ダンを見つめている。


「お前ら、一体何のつもりだ?」


 ヴォルクは無言で指をさした。

 ダンがその方向を見た瞬間、目を見開く。

 そこに、一機のロボットが鎮座していた。

 漆黒の装甲。

 強靭なフレーム。

 無駄のないフォルム。


「…なんだよ、これ」


「ヴェルクシュトゥルム。カイロン社の格納庫から奪った機体だ」


 彼は静かに言った。

 ヴェルクシュトゥルム。

 カイロン社の戦闘用重機動メカだ。

 以前、ギルが使っていた機体でもある。

 カイロン社の前線基地を爆破する際に、そのゴタゴタを利用して運搬用トレーラーと一緒に奪取したという。


「カイロン社の…?」


「バーナム鉱業の技術じゃ、キャケロビャの強化にも限界がある。それに、お前ももう気づいてるだろう?」


「…」


 ダンは唇を噛んだ。

 キャケロビャでは、ギルには勝てない。

 それは、先の戦闘で痛感したことだった。

 強力な戦闘メカ、ヴェルクシュトゥルム。

 キャケロビャとは比べ物にならないスペック。圧倒的な機動力と火力。

 リーナが歩み寄り、ダンの肩を叩く。


「本当は、キャケロビャを改造し続けるつもりだった。でも、もうそれじゃ間に合わない」


「…だからって、カイロン社の機体に乗れってのか?」


 ダンは機体を睨みつける。

 キャケロビャは、戦闘用ロボットではない。

 ただの採掘用ロボットだ。

 それでも、ずっと共に戦ってきた相棒だった。


「俺は…」


 言葉に詰まるダンを、ヴォルクはじっと見つめる。


「お前の気持ちはわかる。でもな、『勝たなきゃ意味がない』」


「ッ…!」


「お前がギルに勝てないなら、お前も、仲間も、全員死ぬ。それでもキャケロビャにこだわるか?」


 ダンは歯を食いしばる。

 どんな機体に乗ろうが、やるべきことは変わらない。仲間を守るために戦う。

 ダンはゆっくりとヴェルクシュトゥルムを見上げた。

 戦う覚悟は、できている。

 だが…


「…決めるのはお前だ」


 ヴォルクはそう言い残し、静かに背を向ける。

 リーナもまた、ダンを見つめながら微笑んだ。


「…待ってるから」


 ダンは答えを口にしなかった。

 ただ、彼の瞳には迷いがなかった。

 ヴェルクシュトゥルムが、沈黙の中で彼を見下ろしていた。

 決戦の時は迫っていた…





 --------------------



 一方、その頃。

 ガライアV・カイロン社前線基地の臨時指令室にて。

 バーナム工業の反撃により前線基地は崩壊。

 なんとか残った施設に、臨時の前線基地を作っていた。

 そんな薄暗い指令室に、モニターの青白い光がぼんやりと映し出されている。

 映像には、先日の戦闘で収集されたデータが表示されていた。


「ギル・レイバー」


 淡々とした声が響く。


「君の功績は評価に値する」


「へぇ、それは光栄だな」


 ギルは薄く笑った。

 映像を背にして、ギル・レイバーは窓際に立ち、眼下の整備区画を見下ろしていた。

 そこでは、彼の乗機ヴァイス・クリューガーが整備兵たちに囲まれながら、次の戦闘に向けた調整が進められている。


「やれやれ…またつまらん時間を使わされたな」


 低く、退屈そうな声が指令室に響く。

 声の主は『ロイド・カスパー』。

 カイロン社の軍事部門を統括する幹部の一人だ。

 鋭い目つきをした男が、手にしたタブレット端末を操作しながら、ギルへと声をかけた。


「まさか『鉱山作業用のロボット』に本気を出すとは思わなかったぞ。どういうことだ?」


 ロイドは端末を机に置くと、冷たい視線を向ける。

 ギルは嘲笑うように鼻を鳴らし、振り向いた。


「本気? まさか。適当に遊んでやっただけだ。おかげで、あのバカがどう動くかよくわかった」


「遊びにしては、随分と時間をかけていたようだがな」


「まあな。こっちの機体のテストも兼ねてたしな」


 ギルは軽くため息をつく。

 何もわからぬ役人の相手をするのは大変だ。

 そう考えながら。

 それを知ってか、知らずか。

 ロイドは端末に目を落としながら、静かに続ける。


「ヴァイス・クリューガーの運用データは良好だ。従来の機体とは比較にならないほどの性能を示している」


「当然だろう? 俺が乗ってるんだからな」


 ギルは自信満々に言い放つ。

 しかし、ロイドはギルの軽薄な態度を意に介さず、次のデータを表示した。


「しかし、キャケロビャのデータも興味深い。あの機体は本来、戦闘用ではない。それにもかかわらず、お前の攻撃を何度もかわし、撤退に成功している」


「ハッ、機体のおかげじゃねぇよ」


 ギルは椅子に無造作に腰を下ろし、脚を組んだ。


「問題はあのパイロットだ。ダン・ウェルナーとか言ったか。素人のくせに、妙な粘りを見せる」


 ロイドは目を細めた。

 確かにダン・ウェルナーは素人だ。

 だが、彼は何度も生き延び、カイロン社の計画を妨害している。

 そのことはロイドも知っていた。


「ほう、お前がわざわざ名を覚えるとはな」


 ギルは不敵に笑う。


「アイツは面白ぇよ。戦い方を知らねぇくせに、しぶとく生き残りやがる。正面から潰すのはつまらん。もっとじっくり、『戦士』として育ててやりたいぐらいだぜ」


 ロイドはギルの言葉を聞き流し、再び端末に視線を落とす。

 キャケロビャとヴァイス・クリューガーの性能差は歴然。


「だが、キャケロビャでは限界がある。次の戦いで、やつは新たな機体を投入する可能性が高い」


「へぇ…そりゃ楽しみだな」


 ギルは興味深そうに笑う。


 ロイドは映像を切り替え、バーナム鉱業の内部情報を映し出した。

 前線基地に保管されていたロボットは、ほぼ爆破で焼失した。

 残骸も確認されている。

 しかし、一部その残骸が確認されていない機体もあった。

 それはつまり…


「奴らの技術力では、まともな戦闘メカを開発するのは不可能だ。しかし、カイロン社の技術を流用した機体が手に入るとすれば?」


「…」


 ギルの笑みが少しだけ薄れる。


「なるほどな」


「もしそうなれば、やつは今以上に厄介な存在になる。だが、貴様の仕事は変わらない」


 ロイドは静かに言い放つ。


「ダン・ウェルナーを確実に始末しろ」


 ギルはしばらく黙った後、立ち上がり、整備区画に目を向ける。

 ヴァイス・クリューガーの装甲が、格納庫のライトに照らされて鈍く輝いていた。


「言っておくが、俺は戦争がしたいわけじゃない。ただ、戦って、強い奴を倒す。それだけが俺の仕事だ」


「ならば、仕事を続けろ」


 ロイドは端的に言い放つ。

 次の戦闘で、必ず仕留める。

 それがギルに与えられた最後の仕事だ。

 ギルは軽い笑みを浮かべる。


「命令だ。この件が終われば、君には相応の報酬を与えよう」」


 ロイドの口調に、迷いはなかった。

 それを聞いたギルは黙って頷く。

 彼はそのまま会議室を出ようとした。

 だが、扉の前で立ち止まり、最後に振り返る。


「お前ら企業の連中は、何もわかっちゃいねぇな」


「何?」


 ロイドが眉をひそめる。


「俺の『仕事』は、命令通りに人を殺すことじゃねぇ」


 ギルは不敵な笑みを浮かべた。


「俺の仕事は、『強い奴を倒す』ことだ」


 そう言い残し、ギルは部屋を後にした。

 彼の瞳に映るのは、次なる戦場。

 そして、戦うべき獲物『ダン・ウェルナー』だった。

 決戦の時は迫っていた。


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