第九話 突入!カイロン社 前線基地
カイロン社の攻勢が激化し、バーナム鉱業の拠点は徐々に追い詰められていた。
戦況を覆すには、敵の前線基地を叩くしかない。
「ここを突破しないと、いずれ鉱山ごと占領されちまう」
ダンはキャケロビャの操縦席で地図を見つめ、リーナやほかの作業員たちと話していた。
目標はカイロン社が近隣の山岳地帯に築いた補給基地。
ここを破壊すれば、カイロン社の兵站は大きく崩れるはずだ。
「以前の強化型バーランダーの記録装置にあったデータだね」
「ああ」
「だからって正面突破なんて正気?」
リーナは眉をひそめる。
防衛設備の整った基地に突入するのは自殺行為だ。
しかし、そのとき作業場の奥から低い笑い声が聞こえてきた。
「そういう無茶な作戦こそ、うまくやれば面白ぇもんだ」
ダンが振り向くと、そこに立っていたのはヴォルク・ザガノフだった。
「ヴォルク! なんでここに…?」
「久しぶりにお前らとメシでも食おうと思ったら、基地攻めを考えてるって話を聞いたんでな」
ヴォルクはにやりと笑い、地図を見ながら続けた。
「正面突破は難しいが、側面の補給路を利用すれば、少人数で基地内部に潜入できる。 俺が傭兵だった頃も、敵の基地を潰すときはまずそこを狙ったもんだ」
彼の説明によると、カイロン社の基地には定期的に物資が運び込まれるトンネルがあるらしい。
そこを利用すれば、敵の防衛網を突破できる可能性がある。
もちろん、そのまま突入することはできない。
だが、タンク役を用意し無理やり突入すれば不可能ではない。
「つまり、キャケロビャの装甲を盾にして突っ込めばいいってことか?」
「その通り。お前の機体は戦闘用じゃねぇが、防御力だけはやたら高い。弾幕を突破する壁役にはうってつけだ。」
ダンはうなずき、作戦を決行することを決めた。
とはいえ、キャケロビャの装甲だけでは不安もある。
以前倒した重装甲ロボット、シュルードヴァイスから作った簡易的な盾も持たせることにした。
「…よし、やるしかねぇな!」
夜が明けると同時に、ダンたちは出撃した。
キャケロビャを先頭に、少数の作業用メカと歩兵部隊が補給路へと進む。
敵の警備ドローンが飛び回る中、ヴォルクの指示で慎重に接近し、最小限の戦闘でゲートまで到達。
「ダン、準備はいいか?」
「いつでも行ける!」
「なら、行け!」
ヴォルクの号令とともに、キャケロビャが一気に加速した。
そして、巨大な鉄扉をドリルアームで粉砕し、基地内部へ突入。
今回は強襲がメインだ。
パイルバンカーは外し、従来のドリルアームを装備している。
警報が鳴り響き、カイロン社の兵士たちが一斉に応戦する。
しかし、キャケロビャの重装甲と簡易シールドが銃撃を弾く。
そしてダンは一気に格納庫へと向かう。
「ここをぶっ壊せば、敵の補給は止まる!」
リーナが爆薬をセットし、作業メカの仲間たちが急いで基地内部のエネルギー炉に爆弾を仕掛ける。
「あと少し…!」
リーナたちが爆薬をセットし終え、撤退の準備を進める。
そんな中、ダンはキャケロビャで格納庫の大型シャッターを破壊しようとしていた。
「これを壊せば、補給施設にトドメを刺せる…!」
キャケロビャのドリルアームが火花を散らしながらシャッターを抉る。
しかし、その瞬間、警報音とは異なる異様なノイズが響き渡った。
「お前ら、ここまで入り込んだのは大したもんだ…だが、もう終わりだ」
低く冷ややかな声。
ダンが振り向くと、格納庫の奥からゆっくりと巨大な影が現れた。
「な、なんだ!あの機体は!?」
通常の戦闘メカよりも一回り大きい重装甲の機体。
全身は黒とダークブルーの複合装甲に包まれ、関節部には冷却システムらしき放熱フィンが露出している。
四肢には、カイロン社の最新技術を導入した『電磁パルスブレード』が装備されていた。
「カイロン社の最新鋭試作機か…!?」
ヴォルクが驚愕する。
見たこともない機体だ。
この施設に保管されていた試作機なのだろうか…?
「ふっ、『試作』なんて肩書は必要ねぇさ」
機体の通信が開かれ、パイロットの顔がモニターに映る。
「ギル…レイバー…!」
ダンは歯を食いしばった。
「ようやく再会したな、ダン・ウェルナー。お前がここまでやるとは思わなかったが…これで終わりだ」
ギルの『X』がゆっくりと間合いを詰めてくる。
「まずは試し切りだ」
その瞬間、『X』の両腕から、赤黒く輝く電磁パルスブレードが伸びた。
ブレードが走るたび、空間が歪んだように見える。
通常のブレードとは違い、刃の周囲に電磁フィールドが発生する。
あらゆる物体を切断する『切断力の暴力』がそこにあった。
「やべぇ…!」
今回は戦闘用の装備ではない。
パイルバンカーも装備していない。
ダンがキャケロビャのドリルアームを振るおうとした瞬間、ギルの機体が消えた。
「ど、どこだ!?」
ダンが周囲を見回す。
「遅ぇよ」
ギルの声が背後から聞こえた。
次の瞬間…
キャケロビャの簡易シールドが切断された。
「な、何!?今の動きは!?」
リーナが絶句する。
『X』は一瞬でダンの死角に回り込み、ブレードでシールドを削り取っていたのだ。
もし、簡易シールドを装備していなかったらどうなっていたか…
「くそっ…!」
ダンは必死にキャケロビャを反転させ、間合いを取ろうとする。
しかし、ギルの『X』は余裕の態度で言った。
「お前の機体、戦闘用じゃねぇのに、よくここまでやったな。だが…」
次の瞬間、ギルがスラスターを吹かし、爆発的な加速でキャケロビャの正面に回り込む。
『X』のブレードが振り下ろされる。
ダンは咄嗟にキャケロビャのスラスターを最大出力で噴射し、ギリギリで回避した。
間一髪。
しかし、それも長く持たないだろう。
「もう限界だろう?」
「ぐぅっ…!」
『X』のブレードはキャケロビャの機体をかすめ、装甲が焼けるように抉れた。
ダンはこの一撃で悟った。
「こいつ…次元が違う…!!」
ギル・レイバーの操縦技術は、今までのどんな敵とも比べものにならない。
しかも、『X』の機動性能は圧倒的だった。
以前はなんとか撤退に追い込むことはできたが、勝ったわけではない。
「ダン! もう時間がない、爆破を優先するわよ!」
リーナの声が響く。
ダンは息を荒げながら、キャケロビャのスラスターを吹かし、必死に距離を取る。
狭い格納庫の中だったのが幸いした。
わずかにギルよりも早く反応することができた。
「ヴォルク、こっちはもう限界だ! 撤退する!」
「了解! 全員、離脱するぞ!」
ダンたちは爆破寸前の基地から脱出し、最後にリーナが起爆スイッチを押す。
巨大な爆炎が基地を包み込み、補給施設が崩壊する。
ギルの『X』も爆風に巻き込まれ、ダンたちはなんとか撤退に成功した。
しかし、ダンは操縦桿を握りしめながら、胸の奥に不安を抱えていた。
「ギル…あいつを、どうやって倒せばいい…?」
ギルがあの爆発で死んだとは思えなかった。
不思議と、確信に近い何かがあった。
「次は…真正面から、あいつとやり合うことになるかもしれねぇな」
ダンはキャケロビャの傷ついた装甲を見つめながら、戦いの行方を考えていた…
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??-?? 『X』
全高:約10mほど
装甲:?
武装:電磁パルスブレード×2
概要:
ギル・レイバーが使用する謎の機体。
カイロン社の試作機と思われるが詳しくは不明。
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