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女神の使者  作者: 原 弘一
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事の発端


人は、目に見えないものに怯える。

人は、得体の知れないものを恐れる。


暗闇 幽霊 病原菌 

様々なものに恐れおののき、忌み嫌ってきた。


『人間が想像できることは、人間が必ず実現できる』フランスの作家、ジュール・ヴェルヌの名言である。


近年科学の発達により、次第にその原理が明らかとされてきた。


一方で、科学では未だ解明されていない、謎がある事も明らかである。


呪いも、その一つ。


黒魔術 言霊 祟り 

様々な手段で災厄をもたらしている。


だがそれは、呪いによるものかも知れないし、単なる偶然なのかも知れない。


真実は闇の中である。


人は、目に見えないものに怯える。

人は、得体の知れないものを恐れる。


しかし、もし、それが見えたなら……



【私の名前は、北野きたの ひめ


17歳。

身長155センチ。

髪型は、胸まであるロング。

好きな事は、ビー玉集め。


特徴は、呪われています。


幼い頃から私の周囲では、何かと良くないことが起こりました。

友達の鉛筆が無くなったり、私と歩いていた友達の目の前に、お店の看板が落ちてきて怪我をしそうになったり。


小さい事から大きな事まで、それこそ毎日起こりました。


そして、15歳の誕生日。

友達が次々と怪我をしたり、病気になりました。


一週間後、学校に行くと、クラスで出席したのは、私一人でした。


その日を境に、周囲の私を見る目が変わりました。

みんな私のことを、魔女と呼ぶようになりました。


そして、私自身にも変化が訪れました。


私の周りに何かが居るのが、分かるようになりました。

仄暗い何かが、ウゾウゾと、まとわり憑いているのが見えるのです。


それは触手のように伸びる仄暗いモノで、その輪郭は妖しい紫色に、ぼんやりと光っていました。


手を伸ばしても触れる事は出来ません。お風呂で洗い流そうとしても無理でした。


ある日、学校の階段で先生とすれ違った時、そのウゾウゾが先生の足に触れた途端、先生は足を滑らせ階段から転げ落ちました。


恐ろしくなった私は、その場から逃げ出しました。


人を傷つけてしまう自分のことが怖くなり、登校拒否になりました。

人と会わなければ誰も傷付けない。もう誰も傷つけたくないと思いました。


両親に連れられ、お祓いにも行きましたが、誰も取り除く事はできませんでした。


私は引き籠り、ネットでウゾウゾの事を調べました。ウゾウゾが何なのか、そしてその原因は?

何日も検索を続けましたが、一件もヒットしませんでした。


次第に私はネットゲームをしたり、ネット動画を見たり、ネット三昧になって行きました。


特に、ネット小説の異世界ものにハマりました。


「私もこんな世界に行けたらなぁ……人生やり直せるのに」


ベッドの上で体育座りをして、毎日妄想していました。


そんなある日、いつものようにパソコンを覗き込むと、ネットが騒ついていました。


隕石。流星群。宇宙人の地球侵略。世紀末。

様々な危険なワードで盛り上がっていました。

中でも興味を引かれたのが、


『一生に一度の流星群、貴方の願いが叶うかも』


「まさかね……でも流れ星がたくさん流れたら、どれかが願い事を聞いてくれるかも。家から見れるかな?やっぱり高い所が良いよね……よし!」


私は意を決して、外に出ることにしました】



19時25分


目立つ事が嫌なヒメは、父親の黒いコートを着た。


「ちょっと長いなぁ」


御守りとして、お気に入りのビー玉が数十個入ったショルダーバッグを、肩からかけて家を出た。


「ヒメはマジックバッグを装備した…なんちゃって…良し行こう!」


家の裏手にちょっとした山がある。

歩いて登れば20分で頂上に着く小さな山。

そこには、古い崩れかけた鳥居が四つあるだけ。


山の麓、階段の中腹、階段の頂上、そして少し先の何もない、草木の生えている原っぱの前に一つの計四箇所。


そしてそこは、必ず幽霊が出るという心霊スポットである。

以前は人気のスポットだったが、その場を訪れた人たちには、必ず良くない事が起こるという噂が一人歩きし、今では誰も近付かなくなった。


「私には丁度いい場所だなぁ」


目の前のコンビニを曲がれば山の麓の入り口なのだが、そこに座っていたガラの悪い男達が、ヒメを見るなり近寄ってきた。


「あれれ?こんな日にそんな格好して暑くない?」


「一緒に流星群見ない?」


「飯奢るから、コンビニおにぎり」


「可愛いね〜。今日イチだよ」


(ダメ。近付かないで)


「そんなとこ突っ立ってないでさぁ〜。こっちにおいでよ」


そうして一人の男がヒメに手を伸ばした時、ヒメの後ろから仄暗い何かがウゾウゾ動きだし男の手に触れた。


すると男は、弾かれる様に体を捻り尻餅を突いた。


「イッテェ〜」


「えぇ!?そっちでいくの?仕方ねぇなぁ…今、ぶつかったよね?」


「こいつ倒れたよ〜。ねぇ聞いてる?」


(それ以上近付いたらダメ)


ヒメはうつ向いた。


「人にぶつかっといて何だその態度は!?」


「シカトですか〜?慰謝料払えよ」


仄暗い何かがウゾウゾと動き始めた。

ヒメは顔を上げると、真面目そうな男が近付いて来るのが見えた。


その真面目そうな男にも、ウゾウゾが伸びようとしていた。


「来ないで!」


ヒメは咄嗟に声を上げていた。

しかし彼はピタリと動きを止めて、正義感と書かれた瞳でヒメを見ていた。


「早く逃げて!」


(お願いします)


「何やってるんだ!」


案の定そう言うと、真面目そうな男が近付いてきた。

それを見たレスラーのような男が、金髪に支持を出した。


「あいつ邪魔だな。追い払え」


「はい」


金髪の男は、短く返事をしてナイフを取り出した。


「何だお前?怪我してぇのか?」


金髪は走り出し、真面目そうな男は傘を振りかぶった。しかし傘の重さで、フラついてるように見える。


(ダサい)


ヒメは不謹慎にもそう思ってしまった。


「しまった!」


真面目そうな男が声を上げた。


(危ない!)


「そこまでだ!」


ナイフで刺される。そう思った時、コンビニの自動ドアが開き、中からビニール袋を被った背の高い男が出てきた。


「え?」


時が凍りついた。


「悪は許さん!」


(ダッサ!)


ヒメは思わず口に出すところだった。


しかし、その後はとても格好よかった。

ビニール袋さえ被っていなければ…


瞬く間に、ビニール袋を被った変な男が、ガラの悪い連中をやっつけた。


「覚えてろ!」


その中の一人が、泣きそうな声を出した後、仲間を連れて尻尾を巻いて逃げて行った。


(忘れたくても忘れられない。ビニール袋を被って『アクは許さん』って…正義のヒーロー、ビニール仮面か)


「ダサい…」


「ビニールしか無かったんだから仕方ないだろ!」


ビニール仮面が、突然声を荒げた。


(ヤバっ!声に出てた!?)


「い、いや、あの、さっきの捨て台詞がダサいって言ったんですけど…何かすみません」


「あ〜ね…はは…怪我してない?」


(ホッ、良かった。誤魔化せた)


安心したのも束の間、ヒメの肩越しに仄暗い何かが、ウゾウゾと動き始めた。


(いけない!この人たちにも触れてしまう)


「助けに来なくて良かったのに。早く何処か行って」


ヒメを助けた二人の男たちは、動きを止めてキョトンとしていた。


(……助けて貰ってこの言い方はダメだね。ちゃんと説明しないと)


「私は呪われてるんです…魔女なんです。私に関わると良くない事が起こるんです。だから早く離れて下さい。」


「「へ?」」


再び真面目そうな男は、驚愕の表情をしている。ビニール仮面については、覗き穴から見える目が、怒りで真っ赤に燃え上がっているようだった。


(そうだよね……魔女って言われても、普通信じないよね)


その時突然、ウゾウゾが、いつもより激しく動き出した。


(ダメ!早く離れないと)


「助けていただいて、ありがとうございました」


(何かおかしい!こんな動きは初めて!)


ウゾウゾがヒメを囲み始めた。

そして、慌てて周囲を見回しているヒメを、みるみるうちに包み込んで行く。


「どうぞ」


真面目そうな男が、突然傘を渡してきた。

ヒメは驚いた。

ウゾウゾが、彼に触っていたのだ。


(遅かった…)


彼も不幸にしてしまった。


(ごめんなさい)


受け取った傘はそっと傘立てに返した。


「だよね」


真面目そうな男は残念そうに呟いた。


ビニール仮面を見ると、彼にもウゾウゾが触っていた。


(彼も……ごめんなさい)


そしてウゾウゾは二人の体を登って行った。

二人の姿は真っ黒に包まれて見えなくなった。

ふと上を見ると大きな何かが、目の前に迫っていた。


(まさか!お願い!助けて!)


「こりゃ詰んだわ」


「隕石?」


二人の声を聞いた後、視界が真っ白になった。

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