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第33話

その言葉に従い、ユノの横でしばらく店を眺めていると、裏口からエプロン姿の若い女性が出てきた。


距離があるため、表情はよくわからない。


ゴミ袋を次々と放り出したあと、その横に背の低いダンボールを、丁寧に二段積み重ねた。


すると、図ったように浮浪者のような男が角を曲がり、路地に入ってきた。


台車のようなものを押していて。夏だというのに煤けたジャケットと汚れまみれでだぶだぶのズボンを穿いている。


男は店の裏口に近づくと、従業員だと思われるその女性に何度も頭を下げつつ、ダンボールを二つとも持ち上げた。


男がダンボールを台車に乗せるのを見届け、女性は店の中に戻っていく。


男は台車を押し、ゆっくりとこちらに向かっていた。


ここでわたしは合点がいった。


「なるほど。ああやって貰うんだ。無料だったら得だね」


すると、祐一が冷笑を浮かべながら、首を振って指摘する。


「でも、あの人が二箱とも持ってるぜ」

「店の人に頼むとか?」


祐一は、ふん、と鼻を鳴らした。


「だから、ヒロの頭と心で思いつくようなやり方じゃないんだよ」


その皮肉めいた言い方に、わたしは自分が侮辱されたように感じ、抗議の意を示すため黙って祐一から顔をそむけた。


その瞬間、ユノが後ろからわたしの肩を叩き、耳元で囁く。


「駐車場の中に入るぞ」


カズを除き、わたしたちは自転車を押して駐車場の中へ入った。


ユノと祐一が自転車をコンクリート塀に横付けし、自転車のサドルを踏み台にして塀越しに路地を見られる体勢をとったので、わたしもそれに倣った。


路地に出たままのカズがポケットに手を突っこみ、だるそうに立っているのが見える。


そして、まさに男が目の前を通り過ぎようとするとき、カズは男へにじり寄り、なにやら話しかけ始めた。


カズの体格が小学生にしてはかなり大きいにしても、男の本来の身長には敵わないだろう。


しかし、台車を押すために腰を曲げ、お世辞にも綺麗とは言えない服を着ているその男の、うっすら髭の生えた不健康そうな横顔に比べれば、カズには威圧感とさえ呼べるものがあった。


ここまでくれば、わたしにも、わたしたちがしようとしていることが理解できた。


わたしたちはこの男からあのダンボールを奪い取るというわけだ。


わたしたちのいる場所からは、かろうじてカズとその男の声を聞くことができた。


しかし、話の具体的な内容までは分からない。


ただ、ヒロが話す度に男は俯きがちになっていき、ついにはカズが上のダンボールを台車から持ち出しても身動き一つしなかった。

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