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第20話

わたしは部屋にテニスバッグを置いてから玄関を出て、建物の前に放置されていた銀色のママチャリに跨った。


祐一も鞄を前カゴに入れ、自転車を発進させる。


図書館に向かう道中、祐一に並走しながら、わたしはユノとカズの素性について訊いてみた。


祐一によると、彼らは隣の校区にある小学校の同級生で、週に一、二度だけ学校に行き、他の日は通っている学校の友人とゲームをしたり、一〇三号室やあの公園でたむろしたり、時には自転車で遠出して遊んでいるらしかった。


彼らの親はこの状態を黙認していて、お小遣いもそれなりに貰っているらしく、ゆえに、朝からファーストフード店で朝食を摂っても破産しない。


てっきり近くの図書館に行くものだと思っていたが、三十分ほど漕いだあと、着いたのは五階建ての中央図書館だった。


かなり新しい建物で、白を基調とした、総合病院のような外観。


外壁も窓も、陽光を厳しく反射していた。


「本返すから、ちょっと待ってて」


館内に入ると、祐一はそう言い残して返却用のカウンターに向かった。


運動の後だからか、あるいは、図書館が好きなのか、祐一の声はいつもより軽やかに思える。


リュックから四、五冊のハードカバーを取り出して職員に手渡す祐一を、わたしは後ろから見ていた。


館内はクーラーが効いていて、快適な涼しさが汗ばんだ服や肌を急速に冷やしていった。


「じゃあ、行こうか。一階は資料か展示ばっかりで、メインは二階より上なんだ」


わたしのところへ戻ってきた祐一は、そう言ってわたしを二階に案内した。


皮肉めいた表情ばかりを浮かべる万引き少年は図書館の雰囲気に全く似つかわしくなく、足音を響かせて軽快に階段を上る祐一の後姿は、なにかを企む悪童のそれだった。


「誘った手前悪いけど、普通の図書館だし、特に面白いこともないから暇つぶししといて」

「祐一はいつもなにしてるの?」

「新聞を読んでから本を選んで、それを借りて帰る」


そう言いながら、祐一はラックから新聞を一紙とって近くのソファに座った。

意外な行動に少し驚いたが、わたしもこのままでは手持無沙汰になってしまう。


わたしも適当に一紙選び、祐一の隣に座る。

横目で見ると、祐一は真剣な表情で記事を読んでいた。

仕方なく、わたしも一面から一つ一つ記事を読んでいくことにした。


活字を読むのは好きだったが、ニュースにはこれまであまり関心がなかったために、新聞を熟読するのは初めてだった。


こみいった内容はよくわからなかったが、税率を上げる話と、隣県で起きている子供を狙った連続誘拐事件、加えて、中東情勢が世間を騒がしているということをわたしは理解した。

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