第13話
家の外側についている金属製の階段は学校の鉄棒よりみすぼらしく錆びついていて、外壁は惨めなくらい表層が剥がれ落ちていた。
まさかこんなところに来ることになるとは思わず、わたしは恐怖を感じていたが、少年の自然により、それを悟られないよう表情を引き締めた。
ユノを先頭に、わたしたちは一階の真ん中にある扉へ向かった。
部屋番号は一〇三で、表札にはなにも書かれていない。
わたしは自分の胸が緊張でその鼓動を速めていることに気づいた。
ユノがドアノブに手をかけ、おもむろに引く。
金属が軋む音がして開いた扉の先には、あまりに小さな玄関があった。
半開きの襖の隙間から畳敷きの部屋が確認できる。
三人は躊躇いなく部屋に入っていった。
律儀にも玄関で靴を脱いでいる。
わたしはやや戸惑ったものの、ここで恐れているそぶりを見せたくないという意地もあり、彼らに倣って畳の部屋へあがりこんだ。
部屋に入るとすぐ、ユノが「疲れた」と言って部屋の奥で横になる。
寝転がりながら伸びをしたり、肩を回したりしていた。
祐一とカズもそれに続いて横になる。
わたしはまだ緊張していてそこまで楽な姿勢になれず、とりあえず入口付近に腰を下ろして胡坐をかいた。
部屋の真ん中には四角いちゃぶ台があり、それを四人が囲うようにして寛いでいる。
わたしから見て左側、カズの後ろに小さな台所があり、そこにだけ窓がある。
閉じられた窓から射しこむ西陽が部屋全体を蒸している。
部屋にちゃぶ台以外の家具はなく、他にあるものといえば、隅に結構な数の漫画が積まれているだけだった。
級友の間で流行っていた少年誌に掲載されているものが多かったが、エロ本も相当数あった。
部屋には時計さえなかったので、スマートフォンで時間を確認しようとわたしがポケットの中に手を突っ込んだとき、ユノが「うーっ」と呻り声をあげ、機敏な動きで起き上がった。
寝転がってから三分も経っていないのではないだろうかとわたしは思った。
「よし、じゃあ、ちょっと行ってくるから」
鋭気溢れる声でユノはそう言うと、カズを跨ぎ、わたしの横を通って玄関の方へ歩いて行く。
玄関扉が開く音と同時に、カズと祐一が力の抜けた声で「いってらっしゃい」と言った。
あらためて時間を確認すると、まだ午後五時にもなっていなかった。
カズが寝転んだ態勢のまま自分の鞄を手繰り寄せ、スマートフォンゲーム機を取り出して電源を入れた。
遠目から画面を確認すると、わたしも持っている定番の格闘ゲームだった。
次第に緊張が解けてきていたわたしは、尿意を催していた。
トイレの位置を訊くため、寝ている祐一を揺すり起こす。




