表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/9

第5話 2回目の結婚パーティ



私たち女神と天使の夫婦は、天界には帰らずにのんびりと過ごすことにした。


人間の一生なんてあっという間だしね。ミラちゃんなら許してくれるはず。

主神さまからは仕事しろって怒られそうだけど、どうか見逃してほしい。



子爵家の敷地内にある別邸で、私とクリスは紅茶を飲んでいた。

そのうち、この離れの屋敷に2人で住むつもりよ。


「昨日の2回目の結婚式、楽しかったわね~!」

「はい。身内だけのつもりが、にぎやかになってしまいましたけど」


学園の友人や貴族の知人、それに国王夫妻まで様子を見に来られたの。

7名のホームパーティだったのに、庭に人が入りきらないほど盛況になった。


みんなから祝福の言葉とご祝儀を頂いて、とても嬉しかったわ。


来てくれたお礼に、クリスお手製の18段ケーキを分けて配ることにした。

18歳で学園を卒業したからその記念の18段だって。よく崩れないわね。

味はもちろん私の保証付きよ。たくさん味見させてもらったしね!


ささやかなパーティだったけど、みんなに笑顔になってもらえてよかったわ。


訪問客は口々に、私たちのド派手な最初の結婚式を見たせいで、他のどの結婚式を見ても物足りなくなるとこぼしていた。正直あれはやりすぎたわね。反省。


そして、呼んでもないのにフリスト殿下とニーセアがやって来た。


「ほう。ここが2回目の結婚式の会場か。地味じゃないか」

「フリスト様ぁ。わたしたちの結婚式はもーっと豪華にしましょうね!」


ニヤニヤと笑いを浮かべている2人の背後から、低い声がかかる。


「――待ちなさい。2人とも、謹慎を申し付けていたはずですが?」

「ひっ! なんでここに母上が。帰るぞニーセア!」

「王妃様っ。どうか腕立て伏せの追加だけは、平にご容赦をっ!」


2人は怯えながら慌ててきびすを返したわ。腕立て伏せって…?


急に、チャリーンという音が2回した。何か丸い物が落ちたみたい。


「あら? ニーセア様、何か落とされましてよ?」

「し、知らないわ! そんなコインなんてっ」


「これは……最初の結婚式でマール様が降らせたコインですね」

そう言って、クリスが地面に落ちた銅貨を拾い上げる。


まあ。大事に持ってくれていたのね、嬉しいわ。身長が伸びたり富くじが当たったり恋人ができたりするような、眉唾もののご利益はないけど。


「殿下の足元にも、同じものが落ちているようですが」

「違うぞクリス。俺様はけっして背が伸びてほしいなんて思ってないからな!」


銅貨を受け取らずに帰ろうとする2人に、私は声をかける。


「待って。お忘れ物ですわよ。ニーセア様たちにも幸運がありますように」

「そんなもの別にいらないぶひっ。何が幸運よ!」


偽聖女の鼻がブヒッて鳴ったけど、可哀想だから今は黙っておいてあげるわ。


「では、コインは俺様がもらってやるとしよう。これで2倍伸びるに違いない」

「ああん。フリスト様、ずる~い」


ぐだぐだと話している2人に、王妃様の雷が再びピシャリと落ちる。


「――あなた達!? 早く帰らないと1000回追加しますわよ?」

「「ごめんなさーいっ!!」」


コインをつかむと2人は全速力で去っていった。何しに来たのかしら。



 ◆◇◆◇◆



クリスの実家は食堂経営の功績により、男爵になることが決まった。

平民の商家でありながら、人々のために尽くす姿勢が高く評価されたみたい。


貧民街でも食堂を開いて環境と労働の改善を図ったり、王都の中心街の店では他の食堂と連携したメニューを考案して地域の活性化に努めたりしたそうよ。

私財を投じての奉仕活動をしていたせいで、経営は大変だったと聞いたわ。


――2回目の結婚式に来てくれた、クリスのお父様は泣いて喜んでいた。


「お前がこんなに立派になるなんてなぁ。わしが細々とやってた事業が成功したのも、お前のおかげだよ。かみさんを亡くしてティムと途方に暮れてた時、わしらが出会ったのは神様のお導きだったんだ。……幸せになるんだぞ、クリス」


「父さん、後を継げなくて本当にごめん。今まで僕を育ててくれてありがとう。ティムも大変だろうけど、父さんを助けてあげてね」


「おれ、クリス兄ちゃんみたいな料理人にぜったいなるからな!」


そう言って親子3人は抱きしめ合う。つられて私も泣いてしまった。


ようやく周りから認められて幸せになったのに、別れるだなんて。

私がお嫁に行けばいいのに、クリスが子爵家の婿に来ることになったせいだわ。


涙をぬぐって悲しい気持ちになっていると、私の家族が3人に声をかけた。


「クリス君には、今までどおりそちらで事業を続けてもらって構いません」

「わたくしたちは皆、これからは家族ですわ。一緒に歩んでいきましょう」

「僕たちにも、ぜひ食堂をお手伝いさせて下さい」


お父様、お母様、お兄様…………。

私も、みんなと家族になれて本当に良かったわ。


「そんな。子爵家の御方にご迷惑をおかけするわけには……」

しきりに恐縮しているクリスの父親に、私の父がにこやかに告げる。


「我が家にはあなた方の食堂の大ファンがおりましてね。そうだろう、マール?」


「はいっ、とっても大好きな場所です! クリスのお父様、ティム君。ふつつかな嫁ですが、どうぞよろしくお願いいたします!」


クリスと2人で頑張って、必ずみんなを幸せにしてみせるからね!



ブックマークありがとうございます! 頑張りますのでよろしくお願いします。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↓完結しました!
侯爵令嬢は空気を読みたい
不思議な能力で自らの破滅を知った令嬢がハッピーエンド目指して頑張るお話です。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ