表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

婚約破棄騒動 

婚約破棄されたので今のうちに逃げようと思います

作者: Y.ひまわり

軽く短いお話です。

息抜き程度に、楽しんでいただけましたら嬉しいです♪

 ――ある日突然、婚約破棄を言い渡された。


「…はい、わかりました。ご自由にどうぞ。」


「え…?婚約破棄ですよ?」


「はぁ、だから、ご自由にどうぞ…と。」


 面倒くさいので、同じ事を言わせないで欲しい。

 やってもいない事をでっち上げられて、こんな公衆の面前に呼び出されて、いい迷惑だ。


「では、私は婚約破棄されて国外追放という事で、よろしいでしょうか?」


「…本当に良いのですか?」

 イケメンのキラキラ王太子が、癖のある金髪を揺らして聞いてくる。余りにもアッサリ受け入れられ、怪訝そうにした。


「は? 王太子殿下が、さっき仰ったのですよ?…なぜ私に確認するのですか?」


 隣で王太子の腕をとり、不安そうに大きな瞳を潤ませる男爵令嬢が…こちらを見ながら怯えている。

 初対面で、怯えられる意味が解らない。


「では、私は失礼いたします。」


 それだけ告げると、公爵邸へ帰った。


 出迎えた執事に軽く説明し、公爵である父と会う時間を作ってもらう。


「お父様、王太子殿下に婚約破棄されました。ついでに、国外追放されますので、ご迷惑をおかけしますが…早急にこちらを出発しようと思います。」


「…出発って。コンスタンスよ、何処へ行くのだ?」


「え?そんなの、傷心旅行に決まっていますが?」


「…傷心?…どこがだ?」


「無実の罪で断罪されて、婚約破棄ですよ?…そりゃ、全く好みじゃない馬鹿王太子との結婚も、死ぬ程辛い王妃教育からも、苦手な社交界からも解放されますが。取り敢えず、私は傷付きましたので……それが何か?」


「…傷が付いたのは、この公爵家だと思うのだが?」


「あ、まぁ…そうですね。その辺は、しっかりと国王に訴えてみて下さい。私の罪はでっち上げですので、お父様なら直ぐにシッポを掴めます。」


「それならば、直ぐに無罪になるではないか?」


「ですから、早急に出発したいのです。」


「…コンスタンス、王妃になる事から逃げるのか?」


「まぁ!逃げるだなんて…悲しいですわ。私は、傷心のため旅に出て、どこぞの国で細々と生きるのです。」


「……はあぁぁぁぁ。…好きにすると良い。」


「今まで育てて頂き、ありがとうございました。…お父様、お元気で。」

 よよよ…と、泣いているフリをして、急いで自分の部屋へ戻り支度を開始する。


 旅行鞄に必要な物を詰め込んで、よっ!と担ぐと玄関へ向かう。



 ――門から、豪奢な馬車が入ってきてコンスタンスの目の前で止まった。



「……くうぅ…間に合わなかった…。」

 持っていた鞄を落とし、項垂れた。

 

 馬車の扉が開かれると、イケメンのサラサラ金髪王子が降りて来た。


「コンスタンス嬢、何処かへお出掛けですか?よろしかったら、お送り致しますよ。」


「…レイモンド殿下。私は国外追放を言い渡された身ですので、どうぞお構いなく。このまま、傷心旅行に出ますので、そっとしておいて下さいませ。」


「ああ、愚兄の言った事は気にしなくて大丈夫です。全く、問題ありません。」


「…問題大有りですけど。」


「いえいえ、そんな事ありません。折角、コンスタンス嬢が婚約破棄されたのです。こんなチャンスを僕が逃す訳ありませんよ。貴女は、僕と婚約すれば良いのです。」


「…………。」


 そうなのだ、私が逃げたかったのは…王太子でも、王妃の地位でも無い。

 この、第二王子レイモンドから逃げたかった。


 王太子エドワードの一つ下、弟王子のレイモンド。コンスタンスとは、同じ年の同級生だ。

 何故だか分からないが、このレイモンドは何かにつけてコンスタンスに絡んでくる。


 正直、エドワードよりレイモンドの方が、相当賢い。勉強も出来れば、人望も厚い。彫刻の様に整った顔立ち。クールな表情に紺碧の瞳…モテない訳が無い。

 ただし、次男の為…王位継承権は二番目だ。


 片や私は、至って普通の公爵令嬢。

 まあ、多少…珍しい魔法は使える。

 庇護欲そそる外見でも無ければ、愛想という物は母親のお腹に置き忘れて来た。性格も難ありと自覚がある。

 ただ、親に勝手に決められて、王太子と婚約し王妃教育で扱かれる日々を過ごしてきた。


 レイモンドとの接点は、クラスメイト。それだけ。


 なのに、ある時を境にやたらと近付いてくるようになった。興味が無いし、キラキラ王族は見てると目が疲れるから、エドワードもレイモンドも避けて来たのに…何故に近付いてくる?…意味不明だ。


「何故…レイモンド殿下と私が婚約するのでしょうか?」


「可笑しな事を言いますね?好き同士が一緒になりたいと思うのは当然では無いですか?」


「…は?誰と誰がですか?」


 今、好き同士と聞こえたが…?聞き間違いか?


「コンスタンス嬢、照れなくて良いですよ。僕は、ずっと貴女を見てきました。いつも、僕だけに見せる、優しく美しい微笑み。分かっていましたよ。」


「………はい?」


 私、レイモンドに微笑んだ事なんてあったか?…ダメだ、全く記憶に無い。


「…あの、それはいつですか?」


 返事をしないレイモンドは微笑みを返した。


 グイッと腰を抱えられ、豪奢な馬車にヒョイっと乗せられた。

 レイモンドは、一見細身なのに…かなり鍛えているのか力がある。多分…キラキラ衣装の下は腹筋バキバキなのかもしれない。


「では、出発しますね。」


「…は?…どちらへ?」 


「勿論、コンスタンス嬢が行きたい傷心旅行です。」


「……理解に苦しみます。」


 傷心旅行に新しい男と行くのは…違うだろうがっ。

 コンスタンスの言う事に、お構い無しで馬車はスピードを上げていく。

 本当に、何処へ連れて行かれるのだろうか?

 不安そうに、窓の外を見るコンスタンスをレイモンドは黙って見詰めている。


 まるで、目的地が有るかの様に馬車は進んだ。


 乗り心地の良い馬車は、眠気を誘う。

 いかん!こんな場で眠ってしまうなんて、絶対に…!


「…到着しましたよ。」


 ククッ…と、笑いを堪えるレイモンドの声で、ハッ!と目が覚めた。

 しまったあああぁーーー!不覚にも爆睡していた…。


 先に馬車から降りたレイモンドに手を差し出され、仕方なく馬車から降りた。


 ――目の前には、広大な田畑が一面を埋め尽くしていた。


 ゴクリっと、コンスタンスの喉が鳴った。


「…どうして?」


「だから、僕は貴女をずっと見て来たのです。」


 コンスタンスの唯一の能力…それは、植物を育み成分や効能を瞬時に理解する力。つまり、植物の薬師。

 学園で、怪我した猫を見つけて治した事がきっかけだった。

 コンスタンスには、治癒魔法は使えない。生えてる薬草を見つけて煎じ、猫に与えて治したのだ。

 

 貴族は、魔法が使えるしお金もある。

 だからこそ、この能力は平民や力を持たない者の為に使いたいと…ずっと考えていた。

 そんな時、ちょうど婚約破棄を言い渡されたのだ。


「コンスタンス嬢、貴女がいつも猫に見せる優しい微笑みは…美しかった。」


「…あ!」

 

 やっと、レイモンドの言った言葉の意味が理解出来た。


「僕は貴女の力になります。一緒に、此処で暮らしませんか。」


「…はい。」

 

 コンスタンスは、今まで見ようとしてこなかった、優しさに溢れた第二王子レイモンドの顔を見た。

 

 二人は手を取り、人々の為に尽力をする道を選んだ。



お読みいただき、ありがとうございました。


妹視点の続編

『身勝手な兄を持つと妹が苦労するのだと思います』を書きました。

そちらも、よろしくお願いいたしますm(__)m

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] なんというか、サクッと話は進んでいますが、コンスタンスの心情が物語の進めたい方向に向かって強引に180度変わってしまったような印象が。 どういう理由があるにせよ今まで嫌っていた相手を受け入…
[良い点] ああ、なーるほど っと、ほっこりかるーく読めました。 [気になる点] ノリなので冗談でしょうが 父様との会話が今生別れのようで 少し寂しく感じました 冗談だと決定づける一文があると 個人…
[一言] 第一も第二も王族としての義務より女を選ぶとかこの王家どーなってるの?w 一回滅んだ方が良いんじゃ?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ